ラニ上陸、再見@日本がかなうまで
ラニが来た。 鬼ではなくてラニである。だが鬼もびっくりのタフなラニである。 上陸したのは6月末、場所は北海道。これはだんな様マーティンの仕事のためである。 来るまでずっと、「こっちは暑いぞ暑いぞ」と脅していたら、来たその日が気温急降下の日だった。しかも着いた場所が北海道であった。 北海道から送られてきたデジカメ写真(今はほんとに便利だな。使いこなせない私には無意味だが)を見ると、しっかり着込んでいる。とはいえ着込むのが当たり前、撮影場所は山の上だっ 来たきっかけは仕事だが、来たからには見て歩くのがこの二人である。まず大雪に登り、そして“Mt.Kuro”に登った。黒山って何かと思ったら「黒岳」のことで、ここはめっぽう気に入ったらしい。「週末また行くかも」と言っていた。うそ…(結局、さすがに「脚が死んだ」ため、これは断念したらしい)。 そして温泉にも入り、ジンギスカンも食べ(北海道のBBQは今まで食べた中で最高だそうである。牛も羊もみんなおいしかった!と大喜びだった)、ラーメンも食べ刺身も食べ鮨も食べ。 そして北海道をあとに、夜行で奈良へ。飛行機より安いという。知らなかった。私よりよほど情報に詳しい。「あと3時間でトワイライト・エクスプレスに乗る」とのメール。「奈良で会おう!」 ということで私も奈良に向かう。私もトワイライト・エクスプレスに乗ってみたいが関東地方なので無理だった。 当初の予定では最低でも2泊のつもりが、どうも日本国内のほうが動きが鈍い私である。結局1泊のみの腰砕け。 安く上げようと小田原からの特急券を予め買っておいたのだが、小田原に止まる新幹線はいまや本当に少ない。どうせ行くなら早く行きたいし、と、支度もできたので予定より早目に出て新横浜まで行った。しかし驚いた。見込みが甘かった(また?といわれそうですが)…新幹線利用者って、こんなにいるんですか?? 空席がないのである。次の次でやっと△印(=空席少しあり)。それでも少しは予定より早く着く。まあ良しとしよう。 切符買いなおし。「えーと…」と、窓口の人が困った顔をする。つまり特急券、乗車券とも追加となり、さらに往復で買ってあるために… 何だっけ。正確な理由を忘れたが、とにかく往復がどうとか言ったのだ。しかし私が確認したかったのは復路は小田原で降りてもよい、ということで、それが判ればよいのだ。 悲しかったのは追徴金1100円ということである。 だいたい新幹線って、こんなに高かったんだっけ。片道1万もするんですよ。去年母と姉と行った奈良ツアー(新聞社主催ツアー。こういうものに初めて参加した。結構面白かった…いろんな意味で)は、往復新幹線と往復バスと博物館入場券、2食つきで1万を切った(…はずである。例によって私の数字の記憶は危ないが)。こういう不思議が世の中あるわけだ。 そんなこんなで新幹線車中。久しぶりなのでずっと窓から外を眺めていた。稲が実ってるなーとか、しまった富士山側に座るんだった、とか、あ海だ~、とか、結構嬉しい気分で眺めていた。 が、そんなのは私だけのようである。みんな寝てるか本読んでるか、あるいはPC開いてるか。新幹線の窓は昔すごく大きかったが今は飛行機の窓みたいに小さい。それもそういうのと関係あるのかも。外がよく見えたところで、今は誰も喜ばないのだ。 楽しいんだけどなあ、ぼーっと風景見てるのって。 しかし京都は近い。ぼーっと眺めているうちに着いてしまった。 乗車券特急券変更したため切符が何枚も重なり、自動改札で出られず。しかしついでに奈良線の駅も教えてもらえたので、やはり人間相手のほうがよいのである。 奈良線の快速が出るまで30分近くある。既にお昼どき。ラニにメールして、先にお昼を済ませてもらうことにする。 奈良からはラニのご両親も一緒だ。夕べ台湾から到着したのである。娘がタフなら親もタフ(逆か、タフな親からタフな子供が生まれたのだ)、これから約3週間、娘夫婦と一緒に日本を回るのだ。 ようやく発車。日差しが強い。昨日まであんまり天気が良くなかったのに、今日は朝から上天気。また無駄に晴れ女を発揮したような気がする。。 奈良駅からラニに電話、国立博物館前で会おうということになる。とりあえずホテルに荷物を置いといで、と。 暑い。だがホテルは駅から4分。…のはずが。4分どころか10分歩いても着かない。おかしいな… 途中までは確かに道は合っていた。暑い暑い暑い。 このホテルはどうだろう、と、ネットで調べて教えたのは私だ。今回ラニ一行は、とにかく宿泊代を抑えることを優先。温泉は好きだが温泉旅館は選外となった。とにかく「リョカン」というものは高い、ということは、はっきりインプットされたみたいである。当初は熱海のリョカンに泊まる、という案まで出ていたのだが(どこで熱海を知ったのかは不明)。 価格と相談の結果落ち着いた宿とはいえ、提案した身としてはなんとなく不安がよぎる。駅から便利な場所のはずなのに… 駄目だ。暑くて参った。おなかもすいた。ホテルに荷物を置いてからパンでも買おうと思っていたが断念。ちょうどモスバーガーがあったので入ってしまう。モス久しく食べてなかったし。 並ぼうとしたら「先に注文だけお聞きします」と男の店員さんが近づいてきた。だがそこで注文がすんだのではなくて、その人の書いた紙を持って再び並ぶのである。あんまり意味がない気がするけど。 2番レジに並べという。並んでるつもりだったのだがまた並べという。「並んでないと横から入られてしまいますので…」 あ、やっぱり入られてましたか。なんだか変だなあと思ったのだが、出来上がったのを取りに来たのかと思った。ついでながら、関西人は横入りするという話も聞くけど、その時はいってきたのは白人の外国人だった。外国人が関西化したのか、それとも関西人が国際的なのか。 そんなことはともかく。店員さんの書いた注文の紙(普通のメモ用紙だ)を出した。カウンターの人はその字を解読できなかった。やっぱり意味がない。 ついでにホテルの場所を訊く。カウンターの人は地理に詳しくないらしく、またさっきの男性店員が相手になった。「ここですか? あーこれは結構歩きますよ」 こうなりそうな気がしたのだ。「今どちらからいらっしゃいました? 駅ですか。あー」ちょっと困った顔で笑うのだった。「あー、となると、戻る形になるんですよね…」 こうなりそうな気がしたのだ。やっぱりどこかで間違えた。よくあることだ。今さら自分じゃ驚かない。 だけど、また遅れてしまうではないか。焦って食べようとしたら、ラニから電話が入っていたことに気づいた。かけ直すと、「お昼食べた? いま食べてる? 良かった」。 あちらも博物館前到着にはまだ時間がかかる模様。良かった。 さて今度こそホテルへ行こう。モスを出て歩き出したら、あの店員さんがいきなり飛び出してきた。「大丈夫ですか? わかります?」 びっくりした~。一瞬誰かと思った。なんて親切なんだ。「はい、たぶんわかります、この道を行けばいいんですよね?」「そう、この細い道を抜けると大きな通りに出るのでそこを左に折れると道沿いにあるので」 ありがとうございます。ファーストフード店でこんな扱いを受けたのは初めてだ。そうそう言い忘れたがここのモスはおいしかった。いや同じものを売っていても店によって違うのである。あとから言うと如何にもとってつけたみたいに聞こえるが、これは本当です。パンがものすごくふかふかだったし野菜も新鮮だったし(ぱさぱさパンで色の変わってるレタス、という店もあるのだ)、アイスラテもおいしかった。モスバーガーの何店というのか知らないけど、映画館と同じビルの中にある。郷土料理に飽きた旅行者はひいきにしてあげてください。 言われたとおりバス通りを歩いていく。親切にしていただいて幸せな気分になったのもつかの間、それに水を差すように、なんとなく辺りの景色が奈良の風情とはだんだん離れてきたような気がする。 そして、ついにたどりついた。はっきり言って、第一印象は、「げ。」であった。 広角レンズか何かを使うと正面玄関とか大きくりっぱに見えるとは聞く。そしてネットで見たときビル全体の写真はなく、そのりっぱな玄関のみ載っていた。 …やられた。 ラニとマーティンとご両親をここに泊めたのは私である。そりゃマーティンは旅慣れたドイツのツワモノであり、ユースだろうと平気で泊まるという話ではあった。だが… それにご両親は台湾から着いたばかりである。 内心頭を抱えた。だが今さら宿をかわることもできないし。何で私って、こうかなあ・・・ ツインが空いたので、シングル料金でツインに泊まらせてくれるという。それはありがたいです。でも、私はシングルの狭い部屋でいいんですけど・・・ もう部屋に入れるというので荷物を置きに行く。なるほどツインなのでそこそこ広い。それにさすが日本で、掃除も行き届きバスタブもついている。シーツは汚れ綿ごみは浮き、ドライヤーもついてないような、イギリス辺りのホテルとは違うのだ。 …と、みんなも思ってくれるだろうか… やったことは仕方ない。あきらめて出発。博物館前までどのくらいかかるかフロントで訊くと、「結構ありますねーぶらぶら歩いて20分くらいでしょうか。バス乗れば10分もかからん、すぐですけど」 うーむ結構遠いんだな。 バス停はまあ近かった。そこに立っていたおじさんに訊いて確かめる。またここで逆方向に行っては困るのだ。といっても乗るバスは「市内循環」だったので、逆に行ってもいつかは着くんだが。 おじさんもモスの店員さんみたいに親切だった。時間まで見てくれる。奈良の人は親切だなあ。 やがてバスが来る。はあ、これでやっとラニと再会できる。 それにしても暑い。 博物館前で降りる。それらしき人は見当たらない。電話。「どこにいるの?」というので、「博物館の前。もう来てる?」「NO」。 ん。「Temple」にいるそうだ。「Spring Day Temple」。は? 「Spring Day Temple!」。へ? 周りにたくさんtempleがあるのだという。スプリング、スプリング… 「ああ!」 わかった。春日大社だ!「来る?」とラニ。「Basically(ラニとマーティンはこの言葉をよく使う。同じ言葉をよく使ってくれるとこちらも非常に助かる。継続は力なり)、まっすぐ来れば着くから。お金の神様と夫婦の神様がいる」 判ったような判らないような。とにかくスプリングデイ寺(「大社」は寺じゃないよね、たぶん。神仏混交だからどうでもいいのかもしれない)へ歩き出す。 再会は簡単ではないのである。