幻の木の葉天目椀
今日は久しぶりに陶芸の話であります。木の葉天目ってお椀があるのをご存知でしょうか?今からおよそ千年ほど前、中国江西省の吉州窯という小さな民間の窯場での出来事。季節は晩秋。黒天目椀を釜詰めしている時、1枚の木の葉がパラリパラリと椀の中に落ち込み、そのまま気づかれずに窯焚きされた。数日後窯だしされた椀の中のひとつに枯葉が美しい柄となって浮き上がっていたので、窯場の中では大騒ぎ。それからというものこの窯場じゃ枯葉を椀の中に入れて焼きまくり、木の葉天目という技術が門外不出の秘伝の器として伝わってきたとのお話。↓の写真が、吉州窯の木の葉天目です。もちろん、重要文化財指定の幻の名品です。政治の世界でもそうですが、秘め事ってやつは、情報社会の中ではすぐにばれるものですが、どうにもこうにもこの吉州窯の木の葉天目の技法についての技術はなかなか漏れていないようなのです。まるで松茸のシロと同じで、口が堅いんですねぇ。木の葉天目については、多くの人がトライしていて、葉っぱをパチンコ玉で抑えるといいとか、ステンレスのアミで抑えるとかいろいろな本が出ていますが、木の葉を焼くと、当たり前ですが灰は、イカ焼きのように丸まりながら小さくなっていきます。灰ですので、ステンレスのアミだの、ましてはパチンコ玉など、灰がボロボロになってしまうので、絶対に不可能。頭の中だけのやり方と判明。ウソばっかしです!100焼けば、1つくらいまぐれで成功するかもしれませんが、そんなに歩留まりが悪いと、焼成代だけでも馬鹿になりません。アチキの師匠である渡辺襄さんは、この研究に20数年の悪戦苦闘の中、打率1割の確率(陶磁郎という雑誌には成功率80%と書いてあるけどあれは冗談)で焼き付けができる技術を見つけたのです。すごい!パチパチ。師匠の許しが出て増すので、少しだけ秘伝公開!葉っぱは椋の葉がベスト。樹齢30年位の木で、根をいじめたり芯を止められたりといった厳しい環境の中で生き残った強靭な葉。特に、刈り取った根株から出てきたヒコバエの葉は、生命維持のために必死に光合成をしようと厚い葉になっているので極上品の葉っぱのようです。その葉を、タウンページで押し葉を作ります。秘伝の天目釉をかけた椀を1290℃で本焼き。その後、椋の生葉に秘伝の定着液をつけて、椀にカーブをあわせて作成しておいた素焼きの押し型を被せ、700℃で素焼き。さらに灰化させた灰といっしょに1260℃で本焼きとなります。まぁ~陶芸に興味のない方にとってはチンプンカンプンだし、どうでもいい話ですね。要は、成功率が低くてめちゃくちゃ面倒くさい焼き物ってことです。根っからの凝り性のアチキは、キノコ採りが終わった頃から木の葉天目三昧。葉っぱがひっくり返ったり、葉がボロボロになったり、葉脈が出なかったりと失敗の連続の中から、まぁ~まぁ~上手く葉脈が出た2作品をコンクールに出展。コンクールと言ってもお遊びみたいなコンクールですけどね。。。で、アチキの作品がなんと銅賞を頂きました。賞金も1,000円ゲット!(吉野家の牛丼大盛2杯食べてもお釣りが出る!)賞状も、審査員の先生の手書で嬉しかったっす。さてさて、この椀で一杯飲むこととします。「木の葉天目ワン!ワン!」(天目太郎作)