「きつね」
先日「点と線」について書いたとき、映画版の脚色が井手雅人さんであることを知りました。「あれ、聞いたことある…。」と思ったら、「きつね」の脚本家でもいらっしゃる方でした。実は、この映画観たことないんです。公開当時、映画情報誌で目にした「恋愛を知らないまま亡くなった娘が不憫でならない。本当の恋をさせてあげたかった。」という言葉が忘れられず、是非観てみたい、とずっと思っていました。この言葉は脚本家の井手雅人さんのものである、ということをなななかばさん に教えていただきました。(『なななかばといっしょ』 「きつね」 4 )時に上映会が催されることもあるようなのですが、残念ながら見る機会がないまま来てしまいました。未見なので、「George Amano's TOKYO-MEGAFORCE」さん の「作品鑑賞感想」 から引用させていただきます。『雄大な北海道の自然を舞台にした、毛色の変わった難病もの。 北海道の僻地に赴任した35歳の科学者緒方(岡林信康)は、そこに保養に来ていた14歳の少女・万耶(高橋香織)と知り合う。年齢の差を越えて心を通わせる二人だが、万耶は草原で遭遇したキツネにエキノコックス菌をうつされ、死期が間近に迫っていた。そんな折り、緒方と不倫の関係にある人妻(三田佳子)の訪問や、自分の病名が描かれたカルテを見た万耶は精神的に追い詰められ、吹雪の中緒方のもとを訪れ、彼と結ばれる。「私が好きなら、きつねを撃って」。彼女の切実な言葉に動かされ、緒方は流氷が漂う海に乗り込み、流氷に乗ってロシアから渡ってきたキツネを猟銃で射殺する。数ヶ月後、万耶が病死した事を知った緒方は、一人涙を流すのだった。 脚本の井手雅人は、本作の十数年前に同年代の娘を亡くしており、その娘に大人の愛を体験させたかったという。そんな思いが込められているせいだろうか、難病の少女ものとしては型破りな事に、本作では少女と大人の肉体関係が肯定的に描かれている。さらに死病を運んで来た(罪の無い)キツネを殺して欲しいという少女の言葉を鵜呑みにし、緒方が漁船で北の海に乗り出し、足場の危険な流氷の中に単身飛び込み、キツネを射殺する話の展開もまた型破りである。ともすれば発想が先走った失敗作となる要素を孕んだ本作であるが、新人高橋香織(高橋かおりとは別人です、念の為)の無垢な少女のいじらしさを引き出した演技、1年近い北海道ロケなどが功を奏し、丁寧に作られた佳作となっている。この手の難病少女ものはたいていがアイドル主演の凡作だが、本作はそれとは一線を画した、一度は見ておきたい作品に仕上がっている。(後略)』なななかばさんは、「亡くなったわが子というよりは、生き抜いた少女として描いたつもり」とおっしゃっています。「死んでいく少女ではなく成長する少女を」と。「フォークの神様」岡林信康も出演しています。「観てみたい!」と思われた方は、ぜひこちらへ! たのみこむ『きつね』1983年(日本・松竹)監督:仲倉重郎脚本:井手雅人出演:岡林信康、高橋香織、原田大二郎、三田佳子、他