紹介文
殺害された製薬会社の営業マンが、密かに淡路島の寺に預けていた骨壺。事件後、それを持ち去った謎の女性。さらに寺に現れた偽の製薬会社社員―。取材中に被害者と出会っていた浅見光彦は、錯綜する謎の接点を求めて、童謡詩人金子みすゞゆかりの地・山口県仙崎へ向かう。そこには、生命の尊厳と倫理を脅かす驚愕の真実が…。脳死、臓器移植など、最先端医療の原罪を追及する浅見、その死生観が深い感動を呼ぶ。
この間読んだ“皇女の霊柩”よりは面白かったです。
でも帯に書かれているような製薬会社と医学会の癒着とか
脳死と臓器移植とかあまりに深い問題を題材にしたわりには
ちょっと物足りない感じが。
どれもお互いに関係してくることではあるけれど
どれかひとつにテーマを絞ったほうが良かったのでは?
メインのストーリーは戦争中捕虜や中国人を使って人体実験を
行ったいわば戦犯が臓器移植を推進したいがために
脳死を認めさせようとするのを
昔の犯罪をタネに阻止しようとして殺されてしまう
良心的な製薬会社社員とそれをネタに
戦犯を強請ろうとして殺されるやぶ蛇社員などなのですが、
一つ一つはドラマになりそうな設定(っていうか事実)
なのになんだかうまく生かしきれていない気がします。
モッタイナイ!
せっかくミドリ十字を髣髴とさせる設定になっているのに、
科学という名のものと行われた罪、人体実験の罪、製薬会社の罪
人間の良心がどれも中途半端。
とても大きなテーマがあるのに、小説の中では
チンケな強請りや殺人がメインになってしまっていてとても
残念。
でも恥ずかしながら
ミドリ十字設立に関して
コレを読んではじめて知りました。
こんなことだから薬害は後を絶たないんですよね。
最近でもフィブリノゲンとか問題になってましたし。
小説自体は大した印象に残りませんでしたが
いろいろ考えるきっかけになりました。
問題定義ってことではいい本だったのかも?