紹介文
神戸に住むドイツ領事の息子のアドルフは、パン屋の息子でユダヤ人のアドルフを通じて、アドルフ・ヒットラーの秘密を知る。その秘密とは……!?第2次世界大戦を背景に、3人のアドルフの運命を描く著者の代表作
【中古】【古本】アドルフに告ぐ・完結セット(全5巻) [文庫コミック]/手塚治虫
これはもう何度も読み返していますが『火の鳥』『ブラック・ジャック』に並ぶ
名作だと思います。
子供のころ読んだときには
『ナチが悪い。ナチに洗脳されるアドルフは人間性が足りない』といった単純な感想だったような気がしますが
多少オトナになった今、違う見方も。
日本沈没でもふとおもいましたが日本人て多分国がなくなって
世界各国へちらばったら各自その国に溶け込んでしまうと
思うんですね。
ユダヤ人のように親子何代にもわたって頑なに”自分は○○人である”と主張する
排他的な集団にはならないのではないかと。
よく言えば順応力があり悪く言えば日和見な日本人。
俺が!オイラが!!という自己主張ばかりの欧米に比べ
ワタシはむしろ好ましいと思っていますが。
で、その頑なさがナチのユダヤ排除思想へのきっかけに
なってしまったのかも。
出る杭は打たれるというか。
そしてユダヤ人は今攻撃されるほうから攻撃するほうへと
立場を変えている。
”自分たちの国を奪回するため”という大義名分において。
大国の思惑通りに。
この漫画のすごいところはちゃんとそこも書いているところ。
迫害される側だったアドルフが今度は迫害するほうに
まわってしまった。
迫害される痛みを知っているはずなのに。
ナチのアドルフのパレスチナ人の奥さんが言います。
『ナチは子供のころからユダヤ人を殺すように教えたんですってね?素晴らしいわ。』
自分にとっての正義は本当に正義なのか。
自分にとっての常識は本当に常識なのか。
あと、読後ふと思ったんですが。
峠さん、文書を最初に手に入れたときCIAでもKGBでも
いいから渡しちゃったほうが良かったんじゃない?
結局せっかくヒットラーを失脚させられる文書を手に入れながら
全然役に立ててないんだもん。
まぁそうしてしまってはドラマにならなかったのかもしれないけれど。
なんて重箱の隅をつついてみましたが名作は名作です。
未読の方は是非。