紹介文(「BOOK」データベースより)
記憶は「わたし」の存在そのものだ、とすれば事実と違う「誤記憶」で重ねられた「わたし」とはなに者か。記憶であなたをゾッとさせる清水版長篇ホラー小説。
【中古】 シナプスの入江 / 清水 義範 [単行本]【あす楽対応】
例の埃をかぶっていた本 の中にあって、ふと見てみると栞がやや半分よりも後ろにさしてあったので多分途中まで読んでそのままにしてしまった本なのだろうと思います。
でも、いつ読んでなんで完読しなかったのかも全く覚えていないんだなぁ。
シナプスっていうくらいだし、脳に関する小説だろうしその小説を全く覚えていないけど、と本の帯を見ると「記憶はあなたの存在そのものだ」なんて書いてある。
というちょっとシニカルな状況が面白いなぁと思って再読することにしました。
もしかしたら先日見た記憶障害のある主人公の映画の記憶ももワタシの脳に何か働きかけていたのかも知れないけれど。
清水義範さんという作家は妙に理系な理路整然とした小説を書くとても私好みな作家さんなわけですが、その作家が記憶というもーのーすーごーく曖昧なものをどういう風に書くのかなーと読み始めました。
主人公、いろんなこと忘れすぎじゃね?とおもわず突っ込みたくなるほど大学時代に小説を書いたことをすっかり忘れ、子供時代の初恋の相手も人違いし、酔っ払って話をした相手のこともきれいさっぱり忘れていたりするんですが。
よく考えたら私もそんなものかも。
誰かと昔の記憶の照会をしあう、ということが最近ないだけで。
特に酔っ払った次の日ちゃんとシャワー入ってパジャマ着て自分のベッドで起きたのに、まったく記憶がないなんて最近やらかしてるし…。昔はこんな事なかったのになぁ。
ストーリー自体はこんな精神崩壊寸前の奥さんと毎日神経すり減らして生活するなんてお気の毒だなという以外は特に印象に残るものではないのですが、(ってかホラーですか?この小説?)記憶に関するなかなか上手い表現があったので抜粋。
『この道をもし死ぬまで散歩しなかったとしても、情景はちゃんと存在し続けているのだ。当然のごとくに。』
『人間は、記憶の確認をすることで過去から継続する存在であることを証明し合おうとするのですよ。時間の中に生きているというってことを、確認せずにはいられないのです。それは結局、自分の存在をかげろうのようにはかないものだと感じているからじゃないんでしょうか。』
『忘れるってことは、あきれるほど高度な判断なんだよ。』
この道を…に至ってはシュレディンガーの猫を彷彿とさせる深い事実です。
一歩進めば、今日自分が生きていても死んでしまっても情景はちゃんと存在するんですよねー。猫と一緒で。
自分が無になる、不確かなものであるということを認めるのは恐ろしいことかもしれないけれど、まぁそれはそれ、と曖昧にしておけるのも人間の脳の素晴らしさかも?
ワタシ年とともにいろんなことがどうでも良くなってきたし、白黒はっきりつけなくてもイライラしなくなってきました。
このままこの路線で高田純次さん目指したいと思います。
人生短いからねー。
そういえば登録しっぱなしだったのを思い出しました(照)
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