紹介文
「屠子」とは軍の検問所のこと。1948年、旧満州(中国東北部)では国府軍の支配下にあった長春を、中共軍が包囲して兵糧攻めにしたため、市民は忽ち飢餓に瀕した。人々は脱出を計ったが、行く手を中共軍に阻まれ、狭い緩衝地帯に閉じ込められて地獄が現出した。これは、当時七歳だった日本人の一少女の貴重な体験の記録である。
チャーズ【電子書籍】[ 遠藤誉 ]
2年ほど前に読んだこの本の遠藤さんの作品『不条理の果てに』を掘り下げて書かれたというこの作品、気になって買ったはいいけど結局今まで放置してあった本をやっと読みました。
2年前にもなんか読んだことあるような、と書いてますが読んだことあったみたいですねー。
でも再読。
戦後の混乱期の中国でのかなり悲惨な状況をわかりやすい文章で割と淡々と書かれています。
誉さんのお父さんはさすが物理学者の誉さんのお父さん、といった感じのバイタリティーもあり頭のいい人だったようですが。
そのうえ尋常ではないほど人助けに力を尽くしたらしく敗戦後帰国し損ねた日本人難民を経営していた工場にかくまい、衣食住提供するなど言うのは簡単だけどなかなかできるもんじゃありませんよってことをされたそうです。
そんな中、読んでいて腑に落ちないというかイラっとしたのはお父さんの甥で文中では『白ネズミ』とよばれている男のエピソード。
この白ネズミ、なかなかの小悪党なのですがお父さんの工場から盗んだ砂糖を売って自分の家族だけに食べさせ長春が封鎖され食糧難も日増しにひどくなりついには餓死者が出るほどにまでなった時でもこの家族だけ肉付きがよかったとありますが、お父さん、この甥に弱みでも握られてたんですかね?
ほかの人たちもみな知っていたけれどお父さんの甥だからと遠慮して表立って注意したりしなかったとありますしお父さんも知っていたとありますが。
公平なお父さんなら自分の身内だからとそんな悪事を見逃すことこそしなかったんじゃなかろうかと思うんですよねぇ。
しかもついには自分の子供が餓死してるんですよ?
もしくはこの甥の父親(お父さんの兄か弟)にものすごい義理でもあったとか?
チャーズの描写は本当に地獄そのもの。
これでPTSDにならないほうがおかしい。
チャーズから出られた後も試練に次ぐ試練があり、やっとまともな生活ができると思ったら日本人であるということで学校でいじめを受けるとか、それで引きこもりにも適応障害にもならなかったのがすごい。
人によってつらいことの程度は違うと思うけど些細なことで人生くじけてる人には是非読んでもいてもらいたいわ。
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