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シィルによって逃がされたジーナは民家に隠れた後、ヒメルを何とかして回復させようと必死だった。 その為に必要になるのは医療道具。 ヒメルと自分の分を確保せねばならない。 「ぐっ……」 しかし、ディアナに受けたダメージは余りにも深い。 民家の引き出しを調べるだけでも体中に痛みが走った。 (この程度で……っ、へこたれている場合ではござらぬ!) シィルは自分達の為に犠牲になった。 本当なら彼女を逃がすはずだったのに、逆に自分たちが彼女に助けられてしまった。 騎士としてこれ以上情けないことはない。 本当に守らなければならないものを守れず、逆に助けられてしまうというのは詰まり、己の無力を痛感することに繋がる。 だがジーナは強かった。 肉体だけではなく、精神的にも多大なダメージを受けた。 しかしそれでも彼女は声を出して泣かない。 奥からこみ上げる激情を堪えて、必死に『耐えていた』。 しかし、 (ヒメル殿になんと伝えたらいいのでござるか……) 最大の不安は此処だった。 恐らくヒメルはあの『一撃』で終わったと感じただろう。 自分もそう思っていた。 しかし実際に与えることが出来たダメージは頭から少し血を流した程度で。 そしてその後、シィルが―――― ばちっ 「!!!!!!!!!!!!!」 外からはっきり聞こえるくらい『その音』は響く。 その音が何なのかまではすぐに理解できなかったが、 (これ、は……?) ベランダから僅かに見えた『音』の正体。 それは迸る電流に他ならなかった。 外はそろそろ明かりが出てくるので見間違えたのではないかと一瞬思ったが、目の前にハッキリ映っているのでは見間違えようがない。 (外に誰か居るでござるか……!?) よりにもよってこんな時に。 ヒメルも自分もダメージを受けすぎてて戦える状態ではない。 もしも外に居る何者かがゲームに乗っているのだとしたら、 (絶望的でござる……!) 電流が見えたということは、相手の支給武器とその能力は『そういうモノ』なのだという事を理解できる。 しかし外から見えるまでの電流を流している理由は何だろう。 ジーナは不安と焦りを感じつつも、そう考えていた。 ○ 電流は無意識の内に流しているのではない。 ちゃんと意図はある。 役割をいうのならこれは威嚇だ。 自分はこういうことが出来て、お前を黒焦げにしてやれるんだぜ、というアピール。 そしてそれ故に本命のディブレードを察知されない。 電流が流れていれば自然とディブレードの能力だと『誤解』してしまう。 それこそがゲイザーの狙いだった。 地図でいうと北の学校からここに至るまで『匂い』がした。 この辺をもっと調べればどの民家に逃げ込んだのかは時間の問題だ。 だが血の匂いがしてるということは、今度の獲物は手負いということだ。 「…………」 目玉をぎょろり、と回しつつもゲイザーは民家を見る。 身を隠すとしたらこの民家のどこかだろう。 血の匂いもこの周辺で途切れている。 だがもっと匂いを探っていけばそんな事は問題ではなくなる。 (コロシテヤル……) 見つけ次第殺す。 逃げよう物なら逃げてみるがいい。 気配と匂いですぐに見つけて、追いかけてやる。 何処までも。 獲物は絶対に逃がさずに殺してやる。 ○ ベランダ越しでも敵意の塊のような邪念を察知することが出来る。 外に居る奴が『ゲームに乗っている』と判断するにはそれだけで十分だった。 (そもそも、平和的な者ならばあんなにバチバチと鳴らす必要はないでござる!) 傷ついた体で神経をすり減らしつつも、ジーナは医療道具を持ってヒメルの元に駆け寄った。 この状況で彼女を介抱できるのは自分しかいない。 だが外に居る殺人鬼の事を考えると、何時までも此処に留まるのは危険だった。 (しかし、このままではヒメル殿が危険なのも明白!) それ故に何とかして彼女だけでも守らなければならない。 しかしどうする? 既に満身創痍。 これ以上激しい運動は出来そうにない。 見つかったらすぐにでも襲い掛かってくる野獣相手にどう立ち向かえばいい……? 「…………刀がなければ拙者は何もできんのでござろうか」 問いかけの先に答えてくれる者は誰も居ない。 だが呟かずにはいられなかった。 蒼龍騎士団の名をかたりつつも、何も出来なかった。 圧倒的に実力差のある相手。 だがそんな相手でも守るべき物があるからこその騎士なのだ。 それなのに守れなかった。 守られてしまった。 戦う力を持ってるはずの自分たちが、守られてしまった。 それは何故だろう。 愛用の刀を持ってないからか? 自分が無力だからか? それとも相手が強すぎたからか? 「…………否」 動かすのも精一杯の体。 しかしそれでもやれることはある筈だ。 外の殺人鬼はまだこちらに近づいてこない。 それならば、 「ヒメル殿」 気絶しながらも『可能性』を見出せた彼女を守ってみせる。 自分の全てを賭けて。 「拙者、必ずやヒメル殿を守り通してみせるでござる。だから、ヒメル殿も目が覚めたら守り通して欲しいでござる」 何を、とは言わない。 それは彼女自身が一番判っている筈だから。 「白騎、夜皇。拙者は刀使いであるが故、クロードより下手糞でござる。しかしこのような拙者でも、やらねばならぬ時があるでござる」 妹の武器を確認しつつ、再びジーナは呟く。 その光景はどこかお祈りでもしているかのようにさえ見えた。 (拙者、意地を通して見せるでござる!) だが決意は固い。 その想いの大きさが今の彼女の最大の武器にして、心の支えになっていた。 しかし時刻にして大凡5時50分。 後10分で第一回の中間放送が始まる。 その時に発表されるだろう死亡者の名前を聞いた時、彼女の心は果たして持つのだろうか。 既に姉のエヴァは死に、シィルもこの5分後にディアナに殺される。 その事実を突きつけられた時こそが、ジーナにとって最大の試練なのかもしれない。 【東 学校の南 民家3階/1日目/深夜】 【ヒメル=シュナイド@Vulneris draco equitis・basii virginis】 [状態]:顔面出血(鼻血)・疲労(極大)・全身打撲・精神疲労(大)・気絶 [装備]:勇神(T.C UnionRiver@レイチェル) & 騎士甲冑 [道具]:支給品一式 [思考・状況] 基本:弱者を護る、ゲームには乗らない 1:ディアナさんに・・・勝った・・・! 2:兄さん・・・ 3:殺し合いに乗った人間の無力化 4:弱者の保護をする 5:仲間と合流したい 6:首輪の解除・ゲームからの脱出案を練る 【ジーナ@T.C UnionRiver】 [状態]:刀不所持による不安・顎損傷・吐血(大)・疲労(極大)・全身打撲・腹部内蔵損傷 [装備]:白騎(びゃっき)・夜皇(やこう)(T.C UnionRiver@クロード) [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1:ヒメル殿を守るでござる 2:外の敵を何としてでもやり過ごして見せるでござる 3:シィル殿…… 4:ボロボロでも出来る限りの事をするでござる。 5:出来れば刀が欲しいでござるぅ…… 【ゲイザー@紫色の月光】 [状態]:後頭部にダメージ [装備]:手甲(翔也@キボゼツ)、ディブレード(斎@ガタ荘) [道具]:支給品一式 [思考・状況] 基本:ゲームに乗り、支給品の力をテストしつつカイト抹殺 1、ディブレード解禁。装備が二つ 2、カイト最優先 3、参加者を見つけたら支給品のテスト名目で殺す 4、一人も逃がさねぇぞ……! 【北 トンネル付近の森/1日目/深夜】 【翔也@キボゼツ】 [状態]:健康 [装備]:ブレスレット(アージェント@IOS) [道具]:支給品一式 [思考・状況] 基本:和輝抹殺 1、ゲイザーに危機感を覚える 2、能力の更なる把握と応用を考え始める 3、和輝どこいったん? 4、もう手段を選んではいられない……! 5、ガレッドと遭遇。叩き起こして協力を(不器用ながら)求める 【ガレッド・バスタード@紫色の月光】 [状態]:気絶 [装備]:美咲のリボン(美咲@キボゼツ) [道具]:支給品一式 [思考・状況] 基本・カイトを探し、合流すること。 1、しまっちゃおうおじさんという名の皇帝によって大木の穴にしまわれる。 2、気絶状態だが、翔也に発見される。 今日が一日フリーだったので何とか今日中に書き上げれました。 しかし最近忙しくなってたとはいえ、1週間以上かけるとは思わなかったわ……! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.03.20 20:51:56
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