|
カテゴリ:ビジネス書
こんにちは。
本日は、再出版となる『クレーム対応 必勝テキスト -クレーム対応でファンを作るお詫びの心理術-』のご紹介です。 本書は、以前「日本一まずいラーメンから、苦情処理について考える」というタイトルで好評を博した電子書籍の改訂版になります。
本書の特徴は、表面化する苦情の解決策とともに、表に出にくい顧客の不満の対策にも多くのページを割いている点です。
接客を仕事にする人にとって、苦情はあってはならないもの。しかし、どんなにサービスが優れていても、どんなに接客が行き届いていても、苦情がまったくないという会社や店舗は存在しないのではないでしょうか。
一昔前は、苦情はすべて悪いことで、いかに発生させないか、もし発生したらいかに蓋をするかを考える風潮がありました。しかし、現在は「苦情は宝物」というポジティブな発想で、苦情を経営のヒントとして活用しようとする企業も増えています。
苦情は、顧客の本音をストレートに表現した形だと言えます。だから、それに一生懸命対応しているうちに、プライベートでも顧客と本音で付き合えるようになるのです。苦情をうまく処理できれば、営業における最高の取引深耕策と言えるのではないでしょうか。
苦情というビジネス最大のピンチを、大きなチャンスに変えたい接客担当者と企業家の必読本です。
ご興味のある方は是非。
以下は、サンプル原稿として、「序章」と「第1章苦情処理に対する心構え」のうち「1.一件の苦情には、顧客の多くの不満が隠されている」を掲載させていただきました。
是非、お読みいただければ幸いです。
『クレーム対応 必勝テキスト -クレーム対応でファンを作るお詫びの心理術-』
序章 日本一まずいラーメンに出会ったときの顧客の反応は?
私は、若い頃から新規開拓営業を続けてきましたが、外食も、週一回は新しい店を訪れています。ただ、ラーメンに関しては、初めて入る店の場合、結構緊張します。と言うのも、今まで何度かひどい目にあったことがあるからです。 その意味で、どうしても忘れられないラーメン屋さんがあります。恐らく、私の長い人生経験において、一番まずいラーメンでした。肌が合う、合わないとか、そういう問題を超越していて、おそらく誰が食べてもまずいと断言できるラーメンだったと確信しています。 詳しい場所ははばかられますが、東京都心の一画、ITやヲタクの聖地を貫く大通り沿いにその店はありました。今から十年以上前の話です。先日その場所へ行ってみたら、やはりというか当然というか、その店は無くなっていました。前の道路に「日本一まずいラーメン屋があった場所」の記念碑を建てたいと思ったのを覚えています。 さて、私がなぜその店に入ってしまったか。 それは立地と店構えの古さです。東京でも有数の大通りに面し、おそらく三十~四十年は営業を続けてきたであろう威厳がその店構えに感じられました。競争の激しい場所で長い期間、生存し続けてこられたのだから、きっとうまいに違いないと考えたのです。
時間は正午近く。店の前の人通りの多さから、当然、店内は混んでいると予想して、私はその店に入りました。 ところが、店内は閑散としています。お客は一人しかいません。三十人近く入れる店内のカウンターに、中年の男性がひとりだけ。 それだけでもやめておくべきだったのに、私は訝りつつもカウンターに腰掛け、味噌ラーメンの大盛りを注文してしまいました。せめて普通盛りにしとけばよかったと後で後悔するのですが…。 店主は、六十歳ぐらいの親父です。 私の注文を聞くと、フッと自嘲気味に笑みを浮かべました。そのあと、カップルが店内に入ってきます。 合計四名。とうとう私がその店をでるまでほかには誰も入ってきませんでした。
都心の一等地にある間口の比較的大きなラーメン屋。
しかも昼食時のかきいれどきに、お客がたったの四人ですよ。しかし店内は、そのカップルがしゃべりまくって結構うるさかったです。 待つこと二十分。やっと味噌ラーメンが私の前に姿を現しました。 それを見て、絶句。思わず店主を見て、心の中でさけびました。 麺が伸びきっている。しかも何これ、どうして味噌ラーメンのスープが透き通っているんだよ!! この状態をどう表現したらいいのでしょうか。 さすがに大盛りだけあって、量は申し分ない。 だけどその量は、麺が伸びた分で大方カバーされている。しかもどうやって作ったら、味噌ラーメンのスープが透き通るの? 店主は私と目を合わさず、カップルの分のラーメンを作る作業に没頭しています。とにかく私はそれを食べてみることにしました。 箸で麺をすくい上げただけで、ふにゃふにゃになっているのがわかります。 しかもそのスープ。味は、インスタントの味噌汁についている味噌を、基準量の四分の一だけ使って作った味噌汁といったらいいでしょうか。 今までしゃべりまくっていたカップルのところにもラーメンが行きました。 突然、二人は沈黙。 店内に、針一本落としてもわかるような静けさが漂います。外へ一歩出たら、車や人々の喧騒に包まれる都心の一等地で、なんだこの森閑とした雰囲気は。 かつてテレビで見たカリスマラーメン屋の店主は、お客の私語や携帯電話を許さず、ピリピリとした緊張感が店内に満たされていました。 おいしい、まずいといった差はありますが、特殊な状況下におかれると、人は押し黙ってしまうのですね。
なぜ、まずいラーメンを食べさせられたお客が文句を言わないのか。なぜ、これだけまずいラーメンが、ラーメンの激戦区で生き残っていけるのか。
これから述べるように、その後、顧客が苦情を言わない理由はわかりました。ただ、二つ目の理由は、未だにわかりません。店が無くなってしまった今となっては、永遠の謎として残るかもしれません。
日本一まずいラーメンを食べさせられたお客が、なぜ文句を言わないのか。この点について、かつてアメリカの全米レストラン協会が行った興味深い調査結果があります。
お客さんに不満があっても、直接苦情を言うのは四%にすぎない。残りの九十六%は、ただ怒って二度と来ないだけである。
私の場合、あとの九十六%に入るのだと思います。一杯七百円のラーメンでいちいち苦情を言っていたのではたまりません。悪質なクレーマーは別にして、わざわざ声に出して苦情を会社や店に言うのは、顧客にとっても大きな負担です。よほど腹に据えかねる場合を除いて、何も言わずに、一度限りの付き合いですまそうとするケースが多いのです。
しかし、次の数字は、商売をしている人には致命的な事柄ではないでしょうか。
一件の苦情があれば、同様の不満を持っている人は、二十六人はいると推定される。
不満のある人は、それを平均十人に話す。十三%の人は二十人以上に話している。
経験上思うのは、そこそこおいしいラーメンは、あまり記憶に残っていないということ。 ところが、まずいラーメンに限って、結構、記憶に残っているのです。
その不満がいつまでも頭に残っていて、かなり時間が経過しても、何かの拍子に人に話すのだと思います。今の私みたいに…。 ちなみに上記の数字は、インターネットがなかった時代のものです。今は下手したら、一人の不満が数千人に知れ渡ることにもなるかもしれません。 それを考えると、わざわざ口に出して苦情を言ってくれる顧客は、むしろ有り難い存在と言えるのではないでしょうか。不満を抱いた九十六%の人たちのサイレントクレームは、会社や店が気づかないまま、がん細胞のように増殖しているかもしれません。もし苦情がなければ、早期発見できず、手遅れになる可能性が高まるのです。
上記のように、顧客のいわばサイレントフラストレーションを気づかせてくれる苦情は、逆に言えば会社や店に対する期待の現われだとも考えられます。もし顧客が納得できる解決策を示すことができれば、彼らは会社や店のファンにもなってくれるかもしれないのです。 苦情処理において、うまく顧客から納得が得られた場合は、取引がなくなるどころか、良い噂話となって広まるという調査結果もあります。さきほどの全米レストラン協会の統計では…
(『 クレーム対応 必勝テキスト 』に続く) ちなみに、本書の目次は以下の通りです。
目次より はじめに 序章 日本一まずいラーメンに出会ったときの顧客の反応は? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年12月28日 13時46分39秒
コメント(0) | コメントを書く
[ビジネス書] カテゴリの最新記事
|