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世界で一番愛する人と国際結婚

人生最後のボーイフレンド

★ 人生最後のボーイフレンド


私は、自分の住む区の国際ボランティアスタッフに
僅かなお金を払って登録していた。


区内在住の外国人にボランティアで日本語を教えたり、日本語と
英語を使ったフリートークの場が毎週1回ある。


ほとんどが、日本語のできない外国人駐在員の奥様達の手助けで、
子供の学校で出される案内などの翻訳だと言われた。


英語とフランス語の簡単な通訳、翻訳のボランティアスタッフ
として講習を受けることにした。


前から気になっていた、日本人と外国人のとあるサークルの
メンバーにもなった。


海外ボランティア、海外インターンシップ等にも目を向け、本や
雑誌を読み漁った。


忙しくなった。


ブランとの別離から3ヶ月。私は立ち直りつつある自分を感じた。


そんな折、ひょんなことがきっかけでメール交換をしたアメリカの
南部在住の男性が日本に出張に来ることになり、東京を案内する
約束をした。私はそれこそボランティア精神で、何の期待もなく、
たいしたおしゃれもせず、雨の中お台場を案内することになった。


初めて彼を見た時、『しまった』と思った。


素敵な人だったのだ。



長身、がっしりアメフト選手体系、ハンサムなのにイルカのように
愛嬌のある、ひとなつっこく、ひとあたりのいい顔をしている。
外見がタイプだったのはもちろん、私が何より惹かれたのは
その彼の人柄だった。


一言で言うと、明るく楽天家でピュア。いつも笑っていて、一緒に
いるだけで、こちらの心まで洗われる気がした。


全くお洒落をしていなかった私は、せめて精一杯愛想を振りまき、
東京を案内をした。


その後、彼からは毎朝、毎晩電話が来た。短いメールは1日に何通も来た。
エンジニアで、常にオンラインにしている彼とはすぐにチャット状態に
なってしまう。こんな感覚は何年ぶりだろう。


彼の名前はマロン。私より2つ年上なだけだった。
年齢が近くて、結婚歴がなくて、純粋に私に愛情表現をしてくれる人。
私と同世代の女友達が10人いたら、9人が、彼にしなさいと言うだろう。


彼のお陰でブランを忘れられそうな気がした。


一方で、回数はめっきり少なくなったものの、ブランからもまだ
メールは届いていた。私は一切返事をしなかった。


代わりに、いつ出すことになるか分からない架空のメールを
ブランに書いた。


『ご無沙汰しています。
実は私、来月結婚することになりました。

ですので、もう連絡されては困ります。
私からのメールもこれが最後です。
今までどうもありがとう。
どうぞお幸せに。さよなら。』


マロンと出会ったばかりで、結婚の話が出ていたわけではないが、
そのうちブランにそういうメールを打ってやろうと、書いては直し、
書いては直し、保存フォルダーにいつも保存していた。


こんなことをすること自体ブランを引きずっている証拠だ。
彼を私の中から一つ残らず消し去るには、あと何年かかるのだろう。


できるだけブランのことは考えないように、いつも努力していた。



つづく


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