テーマ:ブルース・ロック(61)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
ブルース・ロック誕生から数十年後の“現代的ブルースロック”の形
ブルース・トラベラー(Blues Traveler)は、1987年にニュー・ジャージーで結成されたロック・バンドで、もともとは同地でジョン・ポッパー(ヴォーカル、ギター、ハーモニカ)を中心としたハイスクール・ガレージ・バンドが母体となっている。主にブルース・ロックの影響が濃いが、サイケ・ロック、フォーク・ロック、カントリー・ロックなど多彩な要素が混じり合い、ジャム・バンドとして発展してきた。メジャー・デビューは1990年だが、その名が広く知られるようになったのは、1994年の第4作目のアルバム(『Four』)とそこからのシングル曲(「ラン・アラウンド」)によってである。そんな彼らが続く5作目としてリリースしたのが、本盤『ストレート・オン・ティル・モーニング(Straight On Till Morning)』(1997年発表)であった。 アルバムのタイトルとジャケット・デザインは、ディズニー(ピーターパン)に因んだものとのことだが、内容的には別にファンタジックでも何でもない。バンド名が示すように、“ブルースの旅人”を地で行くような音そのものである。“ブルース・ロック”という観点から見て、筆者が今までに聴いたブルース・トラベラーのアルバムの中で最も興味深く、かつ心地いのが本盤である。 “ブルース・ロック”とは言うものの、ここにはかつてのブルース・ロック創成期・全盛期のような気負いがまったく感じられない。わかりやすい例で言えば、初期のジョン・メイオール(過去記事参照)やポール・バターフィールド(過去記事1、過去記事2)と比べるとその違いがはっきりするのではないだろうか。ブルース・ロックの創設者たちが良くも悪くも“構えていた”のに対し、このブルース・トラベラーが示す“自信”は全く別物である。厳密に言えば、個人の音楽への姿勢の問題というわけではなく、むしろ30年ほどの時の流れの結果がこの根本的変化をもたらしたと考えるべきなのだろう。 30年が経過して創造性がなくなったのかと言えばそうではない。なくなったのはある種の“不安”であって、この“不安”はかつてブルース・ロックの発展に大きな推進力を与えた要素だった。白人による黒人音楽の模倣という後ろめたさが同時にパワーの源泉だったわけである。これに対して、90年代になって台頭してきたブルース・トラベラーの音楽は、そうやって成立したブルース・ロックが既に確固たるものとして存在していて、それゆえ後ろめたさなどない状況からスタートしていて、今度はそれをどう再創造し90年代以降の音楽として発展させていくかに主眼が置かれているのだと思う。 とまあ、ブルース・ロックの音楽史的な側面から見ればこんな評価ができるのだろうと思うのだけれど、とにかく耳を傾ける際にはそうした“自信”に注目してもらいたい。他の要素と混ざり合ったブルース・ロックとでもいうべき全体的な音の塊が気持ちいいのは、演奏者たちの上記のような“自信”と“過去に大きく拠りながらもその過去にまったく執着していない姿勢”の二つが揃ったことではじめて成立している。それだからこそ、これほどにまで気持ちいい一枚に仕上がっているのである。 [収録曲] 1. Carolina Blues 2. Felicia 3. Justify The Thrill 4. Canadian Rose 5. Business As Usual 6. Yours 7. Psycho Joe 8. Great Big World 9. Battle Of Someone 10. Most Precarious 11. The Gunfighter 12. Last Night I Dreamed 13. Make My Way 1997年リリース。 ストレイト・オン・ティル・モーニング/ブルース・トラベラー?【中古】[☆2] 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019年05月04日 08時45分24秒
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