小説原案(1)小説原案(1) 3月14日、高校のあるクラスの男子が自殺した。 道行く車に飛び込んで……。 その高校の男子「沢田」は、スポーツ万能。男子にも女子にもよくモテた。性格も良く、明るい。 自殺する理由はどこにも見当たらなかった。 自宅から遺書は出ず、警察の方でも、これは「不可解な事件」として片付けられた。 警察が調べたところによると、沢田は自殺するまで日記等はつけていなかったらしい。 ホームページも持っていなかった。 沢田はクラスの女子に人気があったが、その内面は誰にも明かしていなかった。 沢田と同じクラスには、沢田の事をとても好きだった女の子「桜木」がいた。 沢田の生前に、彼女は一方的に好意を寄せていたが、沢田が死んで今は少し落ち込んでいた。 クラスの友人がそれを見かねて、桜木にいろいろ話しかけてきてくれた。その中の話題のひとつに、"ある日記ブログの存在"があった。 それはもちろん誰が書いたものか分からない日記だったが、プロフィールには「この高校に在学中の男子」である事が記されていた。 そして日記内容は「片想い」について。同じクラスの"ある女の子"への想いが綴られていた。 だが不思議な事に、その日記は毎回"1ヶ月遅れ"の日付けが付けられてアップされていた。 たとえば現実の日付が「2月14日」なら、日記には「1月14日」の物が公開されると言ったような……。 やがてその日記の存在は、クラスの他の女子にも知られるようになった。 クラス内では日記の事が頻繁に話題に上るようになるが、誰がそれを書いたのかは依然分からない。 公開ページでもあるし、はっきり本人が特定できるようなものは何も書かれていない。 女子達は、これを書いた男子のイメージを勝手気ままに想像して会話を楽しんでいた。 桜木はやがてとりつかれたように毎日日記を読み続ける。 その日記に書かれた男子の心情に大いに共感させられていた。 しかし日が経つにつれ、それは共感の域を大きく飛び越えて行く。しだいにネット上の男子に魅せられていく桜木。 でも、やがて「この日記は沢田が書いたものではないか?」と思うようになる。 沢田の生前に、桜木はなかば無理に付きまとっていた。 表面上は沢田が迷惑しているような感じだったが、桜木はお構いなし! だが今の日記には、桜木とは違うような明るく優しい"ある女の子"への想いが綴られていた。 ある日、その日記には「"ある女の子"から届いたメール」がそのまま掲載されたが、それはかつて自分が沢田に打ったメールと同じ内容だった。 でも、誰でも打つような他愛も無いよくある短いメール。桜木は偶然の一致と思い、さして気に留めなかった。 その後も、正体不明の男子の日記は続く。 "ある女の子"にだんだん惹かれていく気持ちが、日記には日に日に大きくクローズアップされて書かれていく。 この頃になると、桜木は、日記は沢田によって書かれたと確証する。 日記にはそれと分かる描写がいくつも出るようになってきた。 桜木にはそれがよく分かった。それはやはり、クラスの中で桜木が一番沢田の事を好きだったから……。 いつも沢田の細かい部分をよく見ていたから……。 ……でも本人は1ヶ月も前に死んでいる。 ならこの日記はいったい誰が更新しているのか……? 日記にはまるでその本人がまだ生きているかのように、生き生きと日常の姿が描かれている。 日記に出てくる日常の何気ない記述と、今の現実の日常の出来事は合致する点が多いので、 「沢田がまだどこかで生きている可能性が高いんじゃないかしら?」と桜木は考え始める。 桜木は日記に「場所」の記述が出てくるたびに、その場所に実際に足を運び沢田の姿を探す。 しかし……、残念ながら見つからない。会えない。 桜木は、沢田の家のご両親を訪ねて、「沢田の部屋」に通してもらう。 けれどそこには生前沢田の愛用していたパソコンが電源も入れられずに置かれてあるのみ。 もちろん沢田の姿は遺影の中にしか存在してない。 3月10日。日記上の日付、2月10日。 やがて、日記内容には、以前桜木が生前の沢田と"無理矢理デートをした"時の事と思われる描写が現れる。 「2月10日午後1時、"あの女の子"と会う約束がある」と書かれる。 確か、実際の2月10日、桜木は無理に沢田に○○駅ステーションビルで落ち合う約束を取り付けていた。 けれどあの日、桜木と沢田はお互いのちょっとした勘違いから場所を間違えてしまい、結局会えずに終わっていた。 「日記の中の"あの女の子"とは自分の事だろうか?」確かめるために桜木は駅に向かう。 駅に着いた桜木は、あの日と同じように必死で沢田を探すが見つからない。 約束の時間を2時間過ぎた頃、桜木は近くのインターネットカフェからあの日記ページにアクセスする。 そこには「会いたかったのに、"あの女の子"は来なかった。どうやらフラれてしまったようだ。」という内容の日記が追加されていた。 桜木はこの時初めて沢田の携帯に電話する事を思いつき、電話してみたがすでに解約された後だった。 その後も日記はアップされ続けていく。日記に書かれた"ある女の子"というのが、段々自分の特徴と一致していく。 どうやら……、お互い好き合っていながらすれ違っていたようだ。 日記上の日付けが、沢田が自殺した日に近づいていく……。あせる桜木。 3月14日。 最後の日の日記。つまり沢田が自殺した日の日付がある日記がアップされた。 確かこの日の午後、沢田は道路上を走る車に自ら飛び込み命を落とした。 沢田の生前、面白い事に桜木と沢田はデートの約束を取り付けてもなぜか会えないでいた。 約束してもお互い都合が付かなくなったり、病気になったり、どうしてもお互い上手く約束の場所に行けないでいた。 それでも、お互いの都合が付き、たった1度だけデートした事があった。 日記にはそのデートした思い出の公園の記述が出てきた。 「"あの女の子"と公園で会う」 いつも、すれ違いばかりの2人だったが、あの日は1日中デートを楽しんだ。 桜木はその思い出の公園に急ぐ。 そこに行けば沢田と会えるかも知れない……。 3月14日、あの日桜木と沢田はあの公園で会っていた……。 しかし……、 その場所に行くと、あるはずの公園が無くなっていて、ビルが建設中だった。 「やはり1ヶ月という月日が経っている……」 そして桜木は落ち込んだ。 でも、どこかで沢田が生きている事を信じ、探し続ける決意をするのだった。 ジャンル別一覧
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