診療日 --不安を訴える--
7時くらいに目が覚めた。しかし朝がきたことをすんなりと肯定する事が出来ず、暫くタオルケットに包まっていた。昨日は何時に寝たのだろうと、ボケた頭で思い出そうとするがなかなか思い出せず苛々がつのった。リビングを見ると子供達がせかせかと保育園に行く準備をしている様子が伺えた。ああ、月曜日か。また来た新しい週が恨めしかった。子供達が保育園に行く時間になったが、まだ布団から出ることが出来ずにいた。上の子が駆けより「パパ、いってきます」と告げた。僕は微笑を返すことしか出来なかった。家族がいなくなり静かになった。リビングに行く。アモキサン25m×3、レキソタン5m、スルピリド100m、テノーミン25mを服用して煙草を一本完全に灰にした。たゆたうけむりを眺めながらニュースに耳を傾ける。台風はまだこちらにはきていない様子だ。九州地方は大変な状況らしいことが音声から聞き取れた。コーヒーを入れ、さらに煙草を灰にする。半ば流れ作業のように煙草を灰にしていった。出勤する時間が近付いたので身支度をすることにした。どこか葬儀にでも出るような気持ちだった。気合を入れて外に出る。外は予想外に暑かった。雲が垂れ込めていたので、もう少し低い気温を予想していたのだが・・・気温が予想より高いことが鬱陶しく思えた。早く秋にならないかな。そう思いながら駅までの道を歩き出した。週末、ほとんど動かなかったので駅までの道がやけに遠く感じた。足が重かった。時折歩みを止めて、呼吸を整えながら駅へと向かう。疲れている。胸の袂で独白した。駅に着いた頃には冷や汗で背中がびっしょり濡れていた。電車に乗り込み、冷風を感じて漸く会社に行く事が現実味を帯びてきた。電車内の雰囲気に嫌気がさし、引き返したくなったが、そのまま揺られて行く。オフィスに入る前に煙草を吸った。突然、上司が後ろから声をかけてきた。僕はびっくりして大きな声で挨拶をしていた。その声を聞いた上司は意外と元気があるな、と言った。内心びっくりしただけですよ、と思ったが、声には出さず微笑した。自席につきメールをチェックする。今日は午前中にミーティングがあるのでそれに備えて体調を整えた。ミーティングが始まる時間になったので会議室へと足を運んだ。今日のミーティングは大体内容が把握できた。僕への課題が一つ与えられたが、こんなものものの5分もあれば出来るものだよと独白した。早く、まともなルーチンワークを提供して欲しい。家でも出来るワークが欲しい。心の叫びは止まなかった。ミーティングも終わり席に戻った。妻の姿は見えなかったので食事に出たものと思い、一人で外に出た。一人での食事。なんだか落ち着かなかった。最近はいつも妻が隣りに居た。それが今日はいない。違和感を感じながら食事をし会社へと戻った。会社に戻ると妻の姿が目に付いた。妻を煙草場に誘った。妻が先週末に出したメールの返信が来ていないか気になったからだ。妻にその事を告げると、上司の方からは来ていないけど、その下の方からはきたとのことだった。頼みます。上司様。僕、本当に今辛いんです。気持ちを打ち明け、その上で仕事が欲しいのです。心の叫びは続いた。ああ、尾崎よ、僕はどうすればいいのだろうか?午後は、午前中のミーティングで出された課題をやった。予想通り、ものの5分で終わった。その事をメールでチームメンバーに伝え、その後、チームメンバーの来月の予定表の作成に入った。予定表の外枠が出来た頃、歯医者に行く時間が迫ったので歯を磨くことにした。歯を磨き終えた後、会社を出て、歯医者へと向かった。歯医者にて、奥歯の根の状態は良好との事だったので本格的に埋めた。そして、次にブリッジ用のもう一本の歯を治療し、ブリッジの為の溝をほった。この際麻酔をかけられていたので、口がばかになっていた。口をゆすぐたびに水が口元からこぼれる。ああ、みっともない。治療も終わり、型を全て取り終えた時には1時間強の時間を費やしていた。疲れた。そして財布が痛い。今日は4,000円ほど取られた。歯が入る来週には6,000円以上取られるとの事だった。当分夜遊びは禁止だな。歯医者から会社に戻り、午前中のミーティングの課題を更に深く追求した。17時、心療内科に行く時間になったので会社を出た。今日は妻も同伴だ。先週倒れた事が心配なようで付いて行くと言い張ったので一緒に病院に行く事になった。心療内科にて、今の現状、自分の気持ちなどを切々と訴えた。とにかく目に見えないものに怯え不安なのだと。そうしたらメイラックス1mが処方された。この薬は24時間じんわりと不安を取り除く作用があるらしい。なお、血液検査の結果は良好で、とてもアルコールをばんばん飲んでいる人の数値とは思えないと主治医が言っていた。診察も終え、子供達を迎えに行く事にした。下の子を迎えに行くと相変わらずきょとんとした目で見つめられた。なんでここにパパがいるのだろうと言った様子だった。次に上の子を迎えに行った。上の子は「今日もパパがきたー」と大喜びだった。家族4人で家路につく。日が暮れるのが早くなったなと時間しながら家への道をとぼとぼと歩いた。といっても妻は自転車なのでとぼとぼというよりはすたすたと付いて歩いていったのだが。家に着きすぐにお風呂に湯を張った。お風呂が沸くまでハイネケンを空け待つ。湯が沸いたので子供達をお風呂に入れた。今日は下の子は機嫌よく洗わせてくれたので楽だった。しかし、二人も洗い上げ、自分も洗うとなると結構疲れる。鬱まっさかりの時は自分の髪さえまともに洗えなかったのに。お風呂からあがり夕食を取った。食後、いつもの疲労感が襲ってきたが、少しでも長く起きていようと頑張ってみた。しかし、21時にはすっかりだれていた。上の子が本を読んでいる隣りに寝そべりそして眠りについた。午前0時。ふと目が覚める。中途覚醒というやつだ。妻はまだ仕事をしていた。僕は妻が仕事をしている横でハイネケンを空け、レンドルミンを口にほうりこんだ。調度妻も寝ようとしていたようだったのでそのまま妻の仕事の終了を待ち一緒に子供達が眠っている寝室へと向かった。僕は上の子を抱きしめるように眠りに付いた。