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2005/09/27
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アマゾンにこの本に書いてあることは自閉症を知る人間には物足りず、自閉症を知らない人間には理解できないだろうというカスタマレビューがあった。読んでみてその意味がよく分かる。では、この本は無意味だろうか。

2001年、レッサーパンダの帽子をかぶった奇妙な男が通りすがりの若い女性を刺し殺したとして、世間を震撼させたこの事件の犯人は自閉系の障害を持っていた。3年の裁判を経て、凶悪残忍かつ、反省不十分として無期懲役の判決を受けている。

著者は20年以上の養護学校教諭生活を経て、ジャーナリストとなった人で、自分が書く内容が被告サイドのものとなり、被害者遺族を傷つけるのではないかと悩みながら、それでも知的障害者が犯罪を犯したときになんら配慮のない司法のあり方に対する疑問を真摯に書き、障害者故の情状酌量を求めるのではなく、障害に配慮しない捜査、裁判では真実は解明されないと主張している。

取調べに当たった捜査官は男に知的障害があることをその背景(高等養護学校卒、障害者手帳有)から認識しているものの、障害は軽度であり、男とのやりとりに問題はなかったと裁判で証言する。

男が学校に通っていた70年代、アスペルガー、高機能自閉の認知度は低く、男の経歴に自閉症の文字はない。しかし、自閉症の記録があったとしても今の捜査体制の中にそれを配慮する意思もしくは機能はないように思える。覚束無い証言は意味の通るよう言葉を補われてまがりなりにも文章になり、自白文となり、証拠として裁判に提出される。

私は自閉系の障害児の親として、この犯人が女性を数箇所も刺して死に至らしめたのが、障害と関係のない凶悪性なのか、あるいは何らかの害意はあったにしても殺意はなかったのが、自閉症のコミュニケーション能力の欠如、パニック等によってあのような惨劇になったのか知りたいと思うがその答えは見つけられなかった。

逆に自閉の背景知識を全く持たない司法関係者、あるいは立法に携わる人々がこれを読んでも、この男の困難さは理解するのが難しいだろう。その意味で冒頭のレビューは正しい。

「どうして後を付けた?」
「女性の顔を見たとき、何を考えていた?」
「刺した直接のきっかけはなんだったんだ?」

動機、心情、そうしたものに答えるのがどれほどの困難を伴うか、一人の“話せる“自閉症者とも話したことのない人たちが想像できるのだろうか。

私の中1の息子は足し算も掛け算も、漢字も読めるけれど、今日、学校で誰とどんな話をしたか、楽しかったか、何か問題はあったか、ということを知ることにとんでもなく根気がいって、そのことを親戚縁者でさえ理解していない。

検察官は裁判においていつも下を向いている男を激しく問い詰める。何故、顔を上げ、真摯に裁きの場に向き合わないのかと。反省の気持ちはないのかと。

では、これは無意味な本なのだろうか。
興味本位のマスコミに追い回された遺族の一人が著者の姿勢に真剣なものを感じながらも言う。

「取材してそれを書いてなにか世の中がよくなるのか。我々がなにか話してよくなるなら、いくらでも話す」

この言葉を背負って本を書いた著者は目的を果たせるか。

著者がこの本の中で引用しているが、『獄窓記』山本譲司著の中で約8%の新受刑者がIQ49以下の知的障害者であり、出所後の支援もない彼らは多くが塀の中に戻っているという。ほとんどは喰うに困っての無銭飲食、窃盗などだが中には凶悪犯罪に走る者もいる。

彼らを支援することは社会を守るためにどうしても必要なことだとこれを読んだどれくらいの人が理解してくれるだろう。知的障害者が犯罪を犯したとき、取調べにおいて福祉関係者等障害を理解する人の立会い、出所後の福祉支援の制度化。でも、河がどんなに広かろうとこの本はやがて向こう側への橋となる小石の一つには違いない。

いや、そうするために障害者当事者、またその関係者(つまり私)がこういうことを求めることが必要なんだ。

知的障害者、特に軽度の人たちが求めることは教育と雇用がほとんどで、この本の中でも触れられているけれど犯罪と性の問題は触れようとしない。

しかし、知的障害者、特に自閉症系の障害者は生来の反社会的素質の率は健常者と同じであっても、社会との適合性の低さから育っていく過程で犯罪に手を染めてしまうリスクは健常者より高い。

この事実に向かい合いたいと思う








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Last updated  2005/09/28 01:16:46 PM
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