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2009年12月01日
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カテゴリ:歴史認識
 拉致被害者家族会の事務局長を務めたこともある蓮池透氏は、民族問題研究家の太田昌国氏との対談で、次のように述べている;


太田 拉致問題は、北朝鮮にとって、いわばアキレス腱です。私の考えでは、拉致事案の最終的責任は、金正日総書記に行き着かざるを得ない。1977年11月の横田めぐみさん失踪事件と、1978年6月の李恩恵こと田口八重子さん失踪事件の間に挟まれた1978年2月、旅先の香港で何者かに誘拐された韓国女優、崔銀姫さんが快速艇で行き着いたのは北朝鮮の南浦港桟橋です。そこに出迎えた男は、「ようこそ、よくいらっしゃいました。崔先生、私が金正日です」と挨拶しているのですから、推して知るべし、です(崔銀姫・申相玉『闇からの谺』上下、文春文庫、1989年)。

 別な観点からこれを捉えるなら、先に触れた父親・金日成に倣って、金正日は、拉致を正当な戦術だと考えていた時期があるということです。韓国とは一時的に休戦しているだけで、敵対している。その国から自分たちに役立ちそうな人物を時に応じて連行するのは非難されるべきことではない。また日本は、かつて朝鮮を植民地支配し、その間に、土地取り上げ、強制連行、従軍慰安婦連行、徴用なとあらゆる悪行を行なった。戦後になっても歴代政権はその償いをするどころか、そのような日本近代史を肯定する政治指導者が絶えることはない。過去、日本に受けた仕打ちを考えれば、わずかな数の日本人を拉致・連行しようと構わないじゃないか、という考えがあるでしょう。私は、この考え方を肯定しませんが、二国間問題の解決法を模索する上では、参照すべき事柄だと思います。ことばを換えるなら、拉致問題に関して相手を問い詰めるためには、自らの過去にも向き合い、その責任をとるという意思を具体的に示すべきだということです。「拉致問題の解決なくして国交正常化なし」という日本側が主張する原則は、その意味で、二国間交渉の道を閉ざすものです。

 この点は、私が『「拉致」異論』で行なった蓮池さん批判に連なってきます。「北朝鮮が拉致問題に対して何の誠意も示さないのに、なぜ日本が先に低姿勢で食糧援助の要請に応じなければならないのか」(『奪還』)という論理では、北朝鮮側の「日本が植民地支配問題に対して、58年間もの長いあいだ何の誠意も示さないのに、なぜ共和国が先に低姿勢で拉致問題解明の要請に応じなければならないのか」という論理に対抗できないのです。両国政府が持ち出すこの国家論理はいずれも醜悪だと思いますが、この隘路を突破しなければならない。いま蓮池さんはどうお考えですか。

蓮池 私も無知なのですが、太田さんが話されたような日本の植民地支配などの問題は、今の日本ではほとんど教育されていないと思います。高校の教科書を見ても、3学期になってようやく明治維新に入ったくらいで終わってしまう。どうやって若い人たちに歴史観を身につけさせるかといえば、教育しかありません。ですが、うちの娘たちに訊いてもそんなことは全然知りません。妻も、会社の同僚も、日本が何をしてきたかを誰も知りません。

 私はいつも思うんですが、昔日本が何をやったのか、強制連行や従軍慰安婦、そういう話題になるとすぐイデオロギーの問題が入ってきてしまうんです。私はそれが非常に苦手です。右寄りの人は「そんな事実はなかった」と言う。左寄りの人は「絶対あったんだ」と言う。そういう不毛な議論を繰り返していてもダメです。これは政府が曖昧にしているのではないかと思っています。責任逃れなのか何なのか分かりませんが、日本政府はそれを長い間、現在に至るまで曖昧にしてきました。

 日本政府はピョンヤン宣言の中で「過去の清算をします」と言いました。でも、「あなたがたに対してこういう被害を与えたからこういう清算をします」という文章はありません。具体化がまるでなされていない。ですから、政府が責任を持って何があったかを示し、日本国民がそれに沿った歴史観を共有するということが一番大切だと思います。強制連行や従軍慰安婦がなかったとか、植民地支配の責任がないという方針はもうありえないと思います。日本はピョンヤン宣言でも村山談話でも責任を認めているんですから。だったらそれを具体化して世に知らしめる責任があります。

 これは、自虐史観を植え付けるとか、そういう問題ではないと思います。それぞれの国益に沿った歴史になるのは仕方がないとしても、やはりあったものはあったと、客観的な歴史を教えるべきです。

 日本がかつてやったことを日本人が知っていれば、一方的に北朝鮮を責めることはできないと思います。戦争という有事の枠の中で行われたことと平静時に行なわれた拉致は違うとはいえ、やはり北朝鮮、韓国の人たちがどういう感情を日本に対して持っているか、それをきちんと把握しなければなりません。今も「ミサイルが飛んできた。北朝鮮はけしからん。制裁だ!」と、感情的になる人が多くて、読売新聞の世論調査では8割近くが制裁肯定だとありましたが、それは過去の問題がすっぽり抜けてしまっている人がほとんどだと私は今思っています。


蓮池透+大田昌国著「拉致対論」(太田出版刊)94ページから引用

 前の自民党政権は「拉致問題の解決なくして国交回復なし」などと妙な理屈をこねて世論に迎合していたが、それでは解決しないことが現実によって証明されている。問題は複雑にからみあってしまっているが、基本的には過去の歴史を正しく認識した上で、双方誠意をもって解決の道を探る必要がある。









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最終更新日  2009年12月01日 19時34分39秒
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