入社してからしばらくの間は、先輩の編集者から与えられる仕事を一つ一つこなしていく日々が続きます。 そんなこともあって、時には 「何でこんなことまでさせるんだろう」 とか、 「これくらい自分でやってほしいなぁ ~ 」 なんてことを思ったりすることもあるかもしれません。 正直言って、私自身も入社した頃はそんなことを何度も思ったりしました。
私の入社当時を少し振り返ってみると、その頃私がしていた仕事といえば、
・ 編集部にかかってきた電話に誰よりも先に出る
・ 原稿や校正刷 (ゲラ) のコピーをとる (朝から夕方までずっとコピーということもありました)
・ 編集部に届けられる郵便物を仕分けて、先輩の編集者に渡す
・ 本の整理や献本作業
・ 上司から次々に与えられる様々な本の校正と素読みを必死になってこなす
といった感じで、これらを繰り返す日々でした。
いまだから言えますが、上司に 「このゲラのこのページだけコピーしてきて」 などと言われたときには、 「それくらい自分でやってよ」 なんてことを思うこともありました。 また、本Aの初校をやっている途中で、本Bの索引の再校を命じられ、それを進めている最中に 「さっき渡した本Aの初校はもう終わったのか?」 などと催促されて、もう頭の中がパニックになることもたくさんありました。
新人の頃というのは、全体の作業や流れが把握できないために、いま自分がやっている仕事がその本の工程のどの段階にあるのかが掴めません。 さらには、同時にいくつもの仕事を言い渡されるために、自分はいったい何をやっているのだろうと混乱したりすることもあります。
言い換えると、与えられた仕事の一つ一つが “点” としてしか見えないのです。 それが連続した1本の線として見えるようになったとき (いま自分がやっているのは、この本の工程のこの段階の仕事だな、と自然にわかるようになったとき) 、 編集者としての第一歩を踏み出したといえると思います。
私自身が入社した頃に経験したことと同じことが、これから編集者として歩み出す皆さん全員に当てはまるとは思いませんが、ただ一つアドバイスをするとすれば、 “点の連なりが線として見えるようになるまでは、無我夢中で頑張ってほしい” ということです。 これを乗り越えたとき、編集者の仕事の面白さもきっとわかるようになると思います。