聖夜の前に聖夜の前に 最初の天使は 錆びかけた非常階段 安アパートの 4階の窓の外に降りていた 夜勤に向かう夫に キスをする妻は ゆりかごの中の 赤子の泣き声に 微笑みは向けたが その泣き声が 訪問者を知らせている とは知るよしもない ただ、今夜も なにごともなく 過ぎますように 聖夜の前だから 2番目の天使は 石畳に足を とられた老女の 背中をやさしく抱いていた ぼろぼろのマフラーは 息子から貰ったもの あれから何年も経ったのに 今年の贈り物と信じている ただ なにごともなく 暮らしていますように それだけが彼女の祈り 翼をもつ者よ それを届けてください 聖夜の前だから 3番目の天使は 「Closed」の看板が風に 打ちつけられる 灯りの消えたバーの カウンターに酔いどれる 男の前に降りていた すべてを失ったと 自嘲する彼に 白い翼は見えないか ほのかに 光る 小さな希望は見えないか 少し顔を上げて 一瞬でも前を向けば 見えるはず 微笑む まだ実はそばにいた 彼のマリアがいることを 今日は 聖夜の 聖夜の 前だから 戻る ジャンル別一覧
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