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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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April 26, 2013
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 歌手の潮流、というのは、刻々と変わっている、といつも思います。
 この時代だから出てきた、この時代だから聴ける歌手。それは確実に存在します。そしてその背景には、ひとつの流れがある。
 昨今の目立つ例は、ヴィジュアル系でしょう。外見はもちろん、演技も含めてヴィジュアル重視の時代だからこそ出てきたスターたち。ネトレプコやゲオルギューは好例です。
  
 けれど私が面白い、と思うのは、別の流れです。ヴィジュアル時代、それはよくわかる。でも、ヴィジュアルが(あるいはヴィジュアルも)よくて人気が出たスターというのは、過去にもいなかったわけじゃない。アンナ・モッフォとか。あのカラスだつて、痩せなければ、プラス恋愛沙汰がなければ、今のようにまつりあげられなかったのではないでしょうか。
 
 私が興味を惹かれるのは、古楽の復興と、それとも関係する、ロッシーニルネッサンスを含めたベルカントの復活です。ここ数十年で復活してきたバロックオペラ、ロッシーニとベルカントのオペラは、その分野でのレベルの高い歌手とレパートリーの拡大をもたらしました。「オリー伯爵」が世界中でこんなに上演されるなんて、しばらく前は考えられなかったのでは。フローレスというベルカントのスターがいるからこそ、というのも含めて。

 そしてさらに面白いのは、その流れがヴェルディ歌手に及んでいることです。

 ここでも何度も触れてきたクンデは好例です。ロッシーニのセリア、フランスのグランドオペラ、そしてヴェルディ。彼が歌ったフェニーチェの引っ越し公演の「オテロ」、クンデが物足りない、という声もありましたが、私はやっぱりよかったと思います。ロッシーニで鍛えたテクニックと明度の高い声は、今オテロをよく歌っているヴェリズモ系、あるいはヘルデンテノール系の歌手にはないものです。彼のオテロは、何度も繰り返しますが、ベルカントと古楽復活の今だからこそ聴けるオテロなのです。ヴェリズモ系のずっしりした声が好み、という方にはたしかに物足りないかもしれませんが、もうそのへんは好みの問題だ、と正直思います。重い、聴き応えのある声、でも精度が低い、というのは私は好みではないのです。

  そして今、クンデと同じ、ロッシーニ〜ヴェルディという流れが、着実にできてきています。

 今回も、その流れのなかから出てきて、素晴らしい歌唱を披露してくれた歌手を何人も聴きました。「オベルト」の主役を歌ったバスのペルトゥージ、クニーザを歌ったガナッシはその例です。彼らはペーザロのロッシーニフェスティバルで活躍してきた歌手。2人ともとてもよかった。やっぱりロッシーニを完璧にこなせるひとはうまいです。 

  で、トリノでも、この流れのなかにいる名歌手が、期待にたがわない歌を聴かせてくれました。

 ダニエラ・バルチェッローナ。イタリア生まれの名メッゾ。やはりペーザロでブレイクした歌手ですが、得意はロッシーニのセリアのズボン役です。日本にも、トリエステ歌劇場の引っ越し公演で来て、『タンクレーディ」のタイトルロールでほれぼれする歌唱を聴かせてくれました。大柄で、舞台映えもします。顔立ちもきれいだと思う。

 その彼女、最近はヴェルディにシフトしています。昨年6月のスカラ座「ルイザ・ミラー」のフェデリーカで初めて彼女のヴェルディロールを聴きましたが、素晴らしいできばえ。だから今回の「ドンカルロ」も期待しましたが、果たして 堂々と完璧な歌唱で、またもやほれぼれしてしまいました。

 公演前、バルチェッローナにインタビューすることができたのは幸運でした。

 彼女、とても感じのいいひとです。明るい笑顔が絶えないひと。そして話もほんとうに面白い。ちょっと尋ねるとたくさんのことが返ってきて、あっという間に時間が過ぎて行く。クレバーです。

 あなたのロッシーニに魅了されてきました、と切り出し、でも最近ヴェルディにシフトしていますね、というのが質問の眼目でしたが。

 バルチェッローナによると、ロッシーニからヴェルディへの道のりは「自然」だという。  

 「ロッシーニは技術はたしかに難しいです。ヴェルディは悲劇的でドラマティックで、声は重いけれど技術面ではロッシーニより歌いやすいと感じられるところがある。ヴェルディやプッチーニは、リアルな表現力が要求される点でも、歌いやすいと思うのでしょう。だからプッチーニからキャリアを始める若い人が多いのです。

 でもそれは間違っています。感情を入れて歌いすぎてしまい、声を痛めてしまうのです。ロッシーニから始めれば、声に無理させることなく、痛めることがないのです。だから若いうちに、ロッシーニで声を鍛えた方がいい。」

 うーむ、なるほど。とても納得してしまいました。

 ヴェルディの「声」は、ほんとうのところはどんなものなのでしょう?

 「ヴェルディの声は、強いと思われがちですが、声自体は強くなくていいのです。それより、感情と声(身体)を切り離さなければならない。感情移入しすぎると危険です。感情表現をしながら、心は冷静に保っているべきなのです」

 これも、なるほどです。感情を入れすぎて崩れてしまう歌い方は、よくあるような気がします。

 「レクイエム」はずいぶん前から歌っているという彼女ですが、ヴェルディのオペラの本格的レパートリーは最近です。2年前から「アイーダ」のアムネリス。今年の1月は「ファルスタッフ」のクイックリー夫人。今年は9月に日本で、スカラ座の来日公演ではクイックリー夫人やアムネリス(コンサート形式)が、そして11月のトリノ王立劇場の来日公演では「レクイエム」が聴けます。

 「ヴェルディのメッゾの役は性格が強い女性が多いですね。音楽的にも強い。声域も広くて、ほとんどドラマティック・ソプラノと一緒です。高い音も多くて、それで怒りを表現しています。そしてアムネリスもエボリも「恋する女」ですね(笑)。 」

  うーん、彼女のヴェルディ・ロールを、もっと聴きたくなりました。この秋に日本で沢山聴けるのは嬉しいことです。

 トリノの劇場は「とても働きやすい」とバルチェッローナは言います。「イタリアの劇場はどこも難しいですが、ここはうまくいっている。経済的に苦しくてもあきらめないで立ち向かっていくチームワークがあるし、やる気がとてもある劇場です」

 日本に来るのも、やっぱりとても楽しみ、とバルチェッローナ。

 「日本のスタッフはとても落ち着いていて、安心できます。やはりとても仕事がしやすいのです。トリノと日本の協力関係は素晴らしいですね」

 イタリアが生んだ待望の大型ヴェルディ・メッゾになりそうなバルチェッローナ。トリノとのレクイエムのサイトは以下です。写真、ほんもののほうが綺麗なんだけどなー。

 http://www.japanarts.co.jp/torino_2013/concert.html

  スカラ座の来日公演も楽しみです。

  

  

 

 

 






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最終更新日  April 28, 2013 12:31:07 AM


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