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イタリア音楽といえば、オペラ。 ほとんどのひとは、そう思うでしょう。もちろん、私も例外ではありません。 けれど、考えてみると、バロック時代までは、器楽の分野でもイタリアは優勢でした。 現在上演されているイタリア・オペラの大半が生まれた19世紀は、たしかに大衆向けの人気オペラが生み出された時期ではありましたが、器楽は「アルプスの北」に席巻されてしまいました。その点では、イタリア音楽にとっては黄金時代とはいえないのかもしれません。 けれど、19世紀のイタリアで、器楽の伝統が途絶えてしまったわけでもありません。19世紀は作曲家が専門分野化してしまったので(18世紀なら、たとえばヴィヴァルディはオペラでも器楽でも創っていたわけなので)、得意分野がどうしても主になってしまったのですが、他のジャンルに手を出すことももちろんありました。 たとえばヴェルディにも、1曲ですが「弦楽四重奏曲」があります。「アイーダ」の2年後に作曲された作品ですが、得意の対位法(最終楽章のフーガは「ファルスタッフ」を連想させます)、憂いを帯びた旋律(第1、第2楽章)、ダイナミックな動きとカンタービレな旋律の対比(第3楽章)など、ヴェルディの音楽のエッセンスが凝縮された、充実した音楽です。第1楽章では、「アムネリスの動機」なんて聴こえたりしますから、「アイーダ」をご存知の方はちょっと注意して聴かれると面白いのではないでしょうか。 欧米ではしばしば演奏されていますが、日本では生で聴く機会が少ないので残念に思っていたところ、今週の日曜日、ヴィオラの桐山健志さんら日本のトップクラスの奏者で構成される「エルディーディ弦楽四重奏団」のコンサートで取り上げられることを知りました(第一生命ホール)。 このコンサート、コンセプトが意欲的です。ヴェルディに加え、ふだん演奏されないイタリアの弦楽四重奏曲の名作が並ぶのです。それも、時代が新しい。ヴェルディの前に演奏されるのは、ニーノ・ロータとピツェッティの弦楽四重奏曲です。 ロータといえば映画音楽が有名ですが、ほんらいはクラシックの大家。音楽院の院長もつとめ、ムーティの先生でもありました。「フィレンツェの麦わら帽子」という、オペラの佳作も残しています。この弦楽四重奏曲も、とても美しい曲です。 ピツェッティは、特に日本では、名前自体がマイナーだと思いますが、イタリアでは大家であり、「再発見」されつつある作曲家です。イタリアは、ファシズム政権と関係が深かったという理由で、戦後評価が低くなった作曲家が少なくないのですが(たとえばマスカーニ)、現在、彼らの再評価が進んでいます。ピツェッティもそのひとり。器楽に熱心に取り組んだことで知られ、交響曲、そして声楽ですが「レクイエム」などが有名ですが、オペラも何曲かあり、「大聖堂の殺人者」などという作品は映像も出ています。なかなか面白いです。マルチタレントですね。 今回演奏される「弦楽四重奏曲第2番」は、カルテットの王道、といいたくなるような聴き応えのある作品。雄大なメロディも楽しめる一方で、個人的にはちょっとバルトーク風味?と感じられる箇所もあります。イタリアにも、こんな弦楽四重奏曲があったのだ、と思われるかもしれません。 イタリアの知られざる弦楽四重奏たち、お値段も手頃だし(シニア割引も)、貴重な機会なので、ぜひ聴いていただきたいな、と思います。 コンサートの詳細はこちらです。 http://erdoedy.is-mine.net/index.html
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最終更新日
February 11, 2014 10:55:06 PM
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