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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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April 17, 2016
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 息抜きを兼ねていたローザンヌから、チューリヒに戻ってきました。もういちど「マクベス」を聴く(見る)のと、アーノンクール追悼と銘打ったフィルハーモニー(オペラ座にも入っているオケ)コンサートを聴くためです。ルイージの指揮で、「第9」が演奏される予定です。

 それはまた別にまとめますが(紙の媒体にもまとめます)、チューリヒのホテルでたまたま見た番組で、考えさせられたことをちょっと。

 ヨーロッパのテレビチャンネルで「アルテ」という、芸術専門のようなチャンネルがあり、こちらにくるとよく見ます。オペラやコンサートの中継もよくやっています。ホテルに到着してたまたま「アルテ」を見たら、ザルツブルク音楽祭でのフローレスのリサイタルをやっており、まず釘付け。そしてそれに続いて、「マリア・カラス」の伝記番組が始まったのです。

 彼女の人生については、なんども読んだり見たりしているのですが、みはじめたら最後まで見てしまいました。キャリアと人生の紹介。よくできた番組だったと思います。愛されなかった子供時代、歌手としての才能を発見され、芽が出るまでの苦労、メネギーニとの出会いと結婚、激やせして美女に変身、ファッションアイコンになり、社交界?に入り、オナシスとの出会いと失恋。晩年の孤独と死。

 オナシスとの間に子供ができて、すぐ亡くしてしまったことも、(これまで伝記では読んでいましたが) 子供のお墓を出したりして、リアルに紹介されていました。個人的に、「マリア・カラス」の声が好きか、といわれると、そうでもないので、恐縮なのですが、それにしても「マリア・カラス」という存在は無二だなあ、と改めて思わされる番組でした。劇的そのものの人生。明暗の激しいコントラスト。彼女が伝説なのは、この人生によるところが大きいと思う。報われない恋の相手がオナシスという超有名人だったことも。オナシスとカラスは同じギリシャ人、ともに貧しいところから種c歯つして頂点に立ったことで共鳴した部分もあったのでしょうけれど。

 「カラス」の名前、その呪縛は、今でもオペラ界に根強く残っています。スター歌手が出て来れば「カラスの再来」云々と騒がれる(今はさほどでもなくなりましたが)。最近だと、スターということで、ネトレプコがカラスと比べられたりします。まあ、人気スターで、美人で、ファッション誌や女性誌の常連だったりするところでしょうか。

 でも、カラスとネトレプコはぜんぜん違う、と思います。声のタイプもまったく違うし。生き方?もまったく違う。例えばの話ですが、ネトレプコが、社交界に入ってキャリアを捨てたりなんかしないでしょう。オナシスはカラスと同じギリシャ人ですが、ネトレプコがロシアの大富豪(たくさんいそう!)と一緒になって舞台を捨てるなんて、ありえないような気がします。

 ネトレプコに限らないですが、いまのスター歌手の多くはふつうに?結婚します。音楽家、つまり同僚、仲間であることが多い。そして、結婚したってキャリアを諦めないし、子供もつくる。いまなら、ごくふつうの人生ですよね。

 それに対して、カラスの時代は、やはりまだまだ「キャリアか人生か」の時代だったと思います。カラスとよく共演したメッゾソプラノのシミオナートは、やはり結婚しておちついた人生を送るために、キャリアを捨てました。シミオナートは若い頃いちど結婚に失敗していますが、その後スターになり、年長の医師と出会う。当初は医師に妻がいたので秘密の関係で、奥様が亡くなられたので、時を見計らって舞台を降り、一緒になりました。とても幸せな結婚生活だったようです。その後、夫に先立たれましたがまた結婚して、それもそれなりに幸せだったよう。シミオナートはわりと最近なくなりましたが、90歳近い彼女を見かけたことがありますが、それは綺麗でした。

 いまどきのメッゾのスターというとガランチャでしょうけれど、彼女だって指揮者と結婚して子供を産んでいますよね。ちゃんと両立してます。 

 まあ、シミオナートみたいに舞台を降りて幸せになったひともいますが、カラスはそうではなかった。またカラスの場合は、勝手な想像ですが、何か自分にとっての幸せか、突き詰める間もなくスターになってしまい、美女にもなるという、才能と努力で栄光を勝ちとったものの、無我夢中で「何か」が見えなくなってしまったところがあったのかもしれません。なかなか才能が開花せずに下積み(スカラ座の合唱団員を長年務めた)で苦しみ、最初の結婚で失敗して苦しみ、たぶんそれもあって、自分にとっての「幸せ」をきちんと掴めたシミオナートに比べて、そういう「自分探し」をする間がなかったのかもしれない。それで、生き急いでしまった。(シミオナートは90過ぎまで元気でした)

 あと、やはり、オペラのスターというものが、いまよりはるかに遠い、ゴージャスな存在だったというのも、「カラス伝説」に寄与していると思います。カラスの数少ない舞台録画、コンサートも含めてですが、や、劇場での写真を見ていると、観客もものすごく着飾っている。舞台上の歌手より豪華くらい。カラスだって、オペラのスターということで、モナコのグレース王妃とも仲良くなる。オペラって、まだまだそんな、庶民から遠い社交界、の時代だったのです。

 オペラ公演にテレビ中継が入り、幕間のインタビューまで求められるいまの時代に、そんな別世界のスターなど存在できるはずもない。

 「カラス」はやはり「存在」として無二です。それは時代のせいでもあります。「第二のカラス」「カラスの再来」から、もう卒業してもいい時代なのではないでしょうか。 

  

 

  

 

 






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最終更新日  April 17, 2016 08:51:27 PM


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