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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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December 13, 2018
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最近の演奏会からもうひとつ。グリゴーロを聴いた同じ日のマチネ、東響「フィガロの結婚」、今年の国内オペラベストスリーに入る素晴らしい演奏でした。

 師走のオペラ第一弾は、ずーっと楽しみにしていたノット指揮東響「フィガロの結婚」(演奏会形式)。2016年に「コジ」に始まった彼らのダ=ポンテ三部作の最終回です。
 もうね、最高。この組み合わせ、第1回目の「コジ」ですっかり虜になり、昨年の「ドンジョヴァンニ」はイマイチだったのですが、今回は「コジ」に劣らぬ満足感。「コジ」に魅せられたのは、まずスタイルの斬新さ〜歌手たちが歌はもちろん、ステージを走りまわって演技し、ノットもオケと一つになるように指揮していて(ハンマーフリューゲルも抜群で)、まずびっくり。そして今回の「フィガロ」と比べて「コジ」では、ドン・アルフォンソを歌った大御所のトーマス・アレンが「演出」をいくらか担当していて、睨みをきかせていたというか、ある部分彼の手のなかでみんなが演じていたところがあって、そういう統一感がありました。「フィガロ」を終えて「コジ」を振りかえったとき、アレンの存在感がすごかったなと。
 「フィガロ」は、アンサンブルの醍醐味。みんなが主役、ですね。オペラ自体がそうなのかもしれないけれど。やはり
(役柄の上でも)「大御所」がいなくて(大御所がいたよさは「コジ」のところで書いた通りです)、いいキャストが揃って、指揮者を信頼してみんながのびのびやると、かくもみなが平等な、的な意味の素晴らしい演奏ができるのだ、という実例でした。そしてみんな動く動く。サントリーホールの舞台を、オケの後ろのスペースまで活用していました。一昔前の「演奏会形式」とは隔世の感。そう、みんなスマートで綺麗だしね、演技もうまいし。「見られる」側としての格段の進歩。そして、こう言ってはなんだけど、歌手たち、このスタイルでは演出に左右されないから自由なんです。だからイキイキしている、このシリーズのいいところです(納得できない演出と格闘する必要がない時の歌手たちってほんとうにうれしそう、楽しそう)。「オペラ」は確実に変化しています。
 歌手はほんとに揃っていましたが、傑出していたのは2人のソプラノ、スザンナ役のリディア・トイシャーと伯爵夫人役のミア・パーション。パーションはまあ貫禄、第2幕冒頭の登場のアリアから圧倒的な声の存在感。澄んだ、品と情感のあるよくとおる声。ヴィヴラートが控えめなのがまた声の艶やかな光を盛り立てます。第3幕のアリアは女性のはかなさと強さを匂わせて圧巻でした。光が滑る真珠のような声です。トイシャーは初めて聴きましたが、こちらもたいへんうまい歌手で、徐々に調子をあげ、第4幕の「ばらのアリア」はもっていきました。パーションよりさらに奥行きのある美声、女性らしい表情に富み、声量も豊かです(きゃしゃなのに!)。きびきびした動作もチャーミング。スザンナ大好き!って思わせてもらえました。
 フィガロ役マルクス・ウェルバはチャーミングなスターオーラを放ち、ケルビーノ役ジュルジータ・アダモナイトは天衣無縫、そしてマルチェリーナ役は、20世紀末にベルカント・ソプラノとして一世を風靡したジェニファー・ラーモアという贅沢さ。声の色の豊かさは女性陣でも傑出、ふだんはカットされることが多い第4幕のアリアでは、ボーマルシェの原作にあるフェミニズムを風刺で包んだこの曲を、わざと滑稽さを強調したコロラトゥーラで十二分に表現していました。まさに「芸」という感じ」。
 バルバリーナ役ローラ・インコはダンサーのように華奢で可憐なバルバリーナでした。バジリオ/ドン・クルツィオ役アンジェロ・ポラックの立派な美声にもびっくり。そうそう、第1幕のラストの合唱で、指揮をとるフィガロを押しのけて代わろうとする演技、「音楽教師」だからですね、すごく納得。
 そうそう、演出の面では、第2幕のケルビーノの女装が、日本らしく?着物風のドレスになっていたのが気が利いていました。
 ノットの指揮は、三部作のなかでも一番板についていた感じ。オケのなかにぐんぐん入って行って、一体化していく鮮やかさ。快速だけれどていねいで、内声が美しく(ここでも内声!)繊細に演出され、歌手たちの極上の歌を美しい絨毯のように包み込んでいました。そして昨日に続いて「指揮者は古典が振れてナンボ」と思ってしまったのでした。
 「慶應オペラ友の会」=慶應義塾大学通信教育課程スクーリング「音楽史」受講者有志、のメンバー20余名と鑑賞。オペラが初めてのひともいて、みなさんすごく感激していたのですが、そしてそれはとても嬉しかったのですが、いつもこの値段でこのレベルだと思われると困るな、と。笑。ちょっぴり複雑?だってこのレベルで最高席が15000円なんて信じられない。ウィーン国立歌劇場の来日公演でくるようなメンバーばかりなんですから。





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最終更新日  December 13, 2018 09:13:51 AM


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