【中国食べある記】(中華料理の真実)【下巻】
◆ 【超絶おいしい果物(ハミ瓜の世界)】西に行きましょう。夏の新疆ウイグル自治区は別天地です。ただ、天池(TianChi)に行ったら上高地と変わらないじゃないか?みたいな観光的意味でなく、人情と果物のすばらしさについてです。ここは中国というよりトルコとかシルクロードのイスラムの色彩が強い。何度もウルムチには行きましたが、夏が一番よろしい。中国人も重要会議は夏は、ここでわざわざやっていました。名目が必要ですからねえ。一応。北京とは何時間も時差があり、夏の夜の星空はここだけ宇宙が落ちてきたと思えるほど美しい。乾燥しているから涼しい。寒暖の差が大きいから果物がおいしい。有名なハミ瓜(HamiGua)。細長いこの瓜は、日本のスイカが逆立ちしてもかなわないみずみずしいおいしさ。他にも名前の知らない果物がふんだんにあります。皮ごと食べられる葡萄とか、もちろんスイカもウルムチのはおいしいですよ。でも、ハミ瓜が代表格でしょう。現地のスタッフも中国人とウイグル人がいて、ウイグル人はとても親切で正直です。私たちがホテルの部屋に入ると、もう部屋じゅう足の踏み場がないくらいハミ瓜やスイカや形も色もさまざまな果物をころがしてくれる。いやあ、こんなにおいしい果物、生まれてこのかた、食べたことないと日本人スタッフは口を揃えていいます。私の妻の実家は札幌で、弟が八百屋をやっているので、夕張メロンの最高級品とかも送ってくれて食べたりしましたが、ハミ瓜の足元にも及ばない。ごめんなさい!高級品送ってもらっていながら。ウルムチ空港でも中国民航のパイロットやスチュワーデスが北京への帰りの便に、トラックから山積みにしたハミ瓜をおみやげに持って帰るくらい。ミニスカートのスチュワーデスがハミ瓜をよっこらしょと機内に積み込んでましたよ。たぶん、乾燥したあの気候風土の中で食べるからこそ絶品なのでしょう。ある時、私と出張した若いエンジニアと二人が北京経由で日本に帰ると言ったら、現地の人がハミ瓜をおみあげにくれました。日本に持ち帰っても腐らないようにやや若いのを選りすぐってくれたという。日本の法律で果物は成田で没収されると言っても、現地の人は「東京のデパートでも売ってるから大丈夫」と聞く耳を貸してくれません。私たちも単純なので、あっさり日本に持ち帰ってしまいました。トランク一杯。私は世話になっている妻のお母さんと弟宛に宅急便で送りました。八百屋のプロの舌と、老いた母親の舌が何と言うか?数日後、電話で尋ねたら、「かたくって、甘くなくって、まるでダイコンみたいな瓜だった」ですって。◆ 【西安の餃子百珍】西安にもよく行きました。私たちは観光コースはあきてしまい、現地の中国人もどう接待するか苦慮してたみたいで、何回目かの訪問時に、「西安でも有名な餃子のフルコースを食べさせる店があります。ぜひ、ご賞味を!」と誘われました。その時は、北京の中国人経理と2人旅(もとい仕事)でした。すごい!何十種類もの餃子が次から次へと出てくる。現地の人は、「決してあわてて食べないように!一つの種類につき、一口だけで次に移ってください」という。私たちはもったいなくて、つい大小の形や色や具が様々なのを残すまいとしますが、強く制止される。確かに、ほんとう百珍味といえるくらいもう出てくる出てくる。その店のメニューにないものまで特別メニューで振舞ってくれているらしい。餃子地獄(もとい天国!)。蒸かす、煮る、ゆでる、焼く、揚げる。もう、これでもかと出てきて二人は悲鳴を上げたいくらい!最後に出てきたのが、例の西太后(せいたいごう)が北京を逃れ西安で避難暮らしをしていたときに食べたという「真珠餃」(ZhenZhuJiao)(しんじゅギョウザ)。中の具は真珠じゃなくて、若い鳥の首筋の肉をすりつぶしたものという。小指の先ほどの小さなギョウザがスープに浮いている。彼女は7つだか8つだか(数字は忘れましたが)食べたおかげで北京に帰れたという。ところが、私と中国人経理は仲良く小椀に取り分けて食べたら1個足りないんです。大きなスープ鉢の中をいくら探しても足りない。「縁起悪いなあ」とか言いながら、北京へ帰る旅客機に翌日乗りました。ところが中古の旧ソ連製旅客機が西安空港を離陸してしばらくしたら故障した。空港上空を旋回し、もしかしたら大事故になるかも知れないというスチュワーデスのアナウンス。私と隣の中国人経理は生きた心地がしない。どちらかが生き残ったら家族に遺言をこう伝えてほしいなどと真面目に話し合った。なんとか、西安だったか付近の田舎だったかの空港に緊急着陸できました。パニックの旅客がドアから下りようとすると、スチュワーデスが叫ぶ。片側のドアに集中すると機体がひっくり帰るから、もう一方のドアにも分かれて下りて!とか。ソ連の設計ってスマートな機体とは裏腹に貧弱?そして、隣の控えの旅客機に乗り換えるはずでした。ところが、何を間違ったのか、さきほどの旅客機にまた乗れという。もう乗客は(全員中国人わたし以外は)、ぷんぷんに怒って従順に乗りました。中国的ですね。その後、北京空港に無事着陸し、私たちは一命をとりとめました。「あの時、餃子が1つ見つからなかったせいだ!」とかお互い言いながら分かれました。その中国人経理は2日ほど会社を休みましたね。私は仕事してたけど。◆ 【四川本場のマーボ豆腐】四川省に行った時は、日本の故郷の風景そのままなのに驚きました。特に農村は。ただ、家の壁に「賭け事厳禁!」とかスローガンが大きくペンキで書かれてるのがミスマッチでしたが。成都では本場の元祖マーボー豆腐を食べたいということで由緒のある店に連れてってもらいました。確かにおいしいですねえ。ピリカラ味。特に山椒が辛いんです。おいしいんです(うなぎの山椒じゃありませんよ)。面白いのはコースで四川料理が出てきますが、辛い→甘い→辛い→甘いという順番で料理が出てくることです。これって舌のリハビリ効果を考えていますねえ。そこで知ったのですが、私は極度に辛い食べ物はダメ。おいしいけど、しゃっくりが止まらなくなります。さて、字数制限に達しそうなので、詳しく書けませんが、四川の友人は言っていました。日本人は1つ味覚を知らないと。甘い辛いショッパイとかでなく、何でしょう。それが「麻(ma)(マー)」です。直訳すると「しびれる」です。麻酔の麻!(^^♪