新山一雄 『ゼミナール行政法』
教科書レベルの基本論点を具体的な設問を通して学び直そうと思って買ってみました。設問と解説だけでなく、択一問題がのってたりするので、知識の再確認にはよさそう。 と思い、最近の関心事に従い、地方自治法のところから読んでみたところ、いきなり改正反映漏れがあったのでげんなり。 217頁の択一問題の4番で、住民訴訟における差止請求をするには「回復の困難な損害を生ずるおそれがある場合」に限られる、となっているのですが、この要件は平成14年の地方自治法改正で削除されていますので、この記述は明らかに間違いです。 担当官庁しか知らないようなマニアックな改正だったら、知らなくても仕方がないなとは思いますが、これに関しては知らなかったってことはないでしょう。 住民訴訟については、たまたまそれなりに勉強していたのでこの間違いに気づくことができましたが、他の領域でこういう間違いがあってもおそらく気づかないでしょね。ちゃんと自分で六法にあたろうね、という反面教師として使えるのかもしれませんが、行政法の場合、手近な六法にのってない場合もあるしねえ。最近の改正が知りたいからこそ新しい本を買うのであって、反映されていないものを読むんだったら、名著塩野宏・原田尚彦『演習行政法新版』で十分、と嫌味を言ってみる。