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カテゴリ:日活撮影所あれこれ
今村昌平さんが5月30日にあの世に旅立った。世界のイ*マ*ム*ラを追悼する思いを込めて書いて見たい。
数ある今村作品の中でも私の思い出に残っている作品と言えば、「豚と軍艦」である。この映画は横須賀を舞台に、長門裕之演じるチンピラやくざの生き様を通して社会批判にまで昇華した初期の名作である。 豚と軍艦 私は何故か東大前駅の近くでカメラテスト中のイマヘイさんに会った事を覚えている。その用事が何であったか忘れてしまい、さっぱり記憶にないのにそこで吉村実子を見たのは覚えているのだから不思議なものだ。 吉村実子は芳村真理の妹で、確か本作でデヴューしたと記憶している。 私の大学時代の親友、谷口君が製作部の助手で参加し、豚係りで活躍したのも懐かしい思い出だ。彼の話によると豚集めは大変だったようだ。近郊の豚屋を廻ってここで10頭、あっちで20頭という具合に豚を集めて来る。そして豚の戸籍簿?を作る。豚を顔で区別出来ないから豚の体に印をつけたそうだ。借りてきた豚を撮影が終わると元の持ち主に返さなければならないからだ。 100頭の豚集めは簡単ではない。借りてきた豚は臨時の豚小屋を作り、誰かが面倒を見なければならない。谷口君がその責任者に選ばれた。豚を抱いて豚小屋で寝たこともあったらしい。日が経つに連れ、谷口君の身体からは豚の香りが漂って来た。彼が傍に来ると思わず鼻をつまみかけた気がする。 「豚と軍艦」のクライマックスシーンは日活撮影所内のメインストリートで撮影された。本館と対面する食堂を挟んで横須賀のドブ板横丁のオープンセットが見事に再現され、横須賀の町を歩いているような錯覚に陥ったものだ。 撮影が始まった。豚を満載したダンプカーが行列を作って走って来て止まる。機関銃を手にした長門がやくざたち目掛けて発砲する。そしてダンプの荷台を片っ端から上げて行く。驚いたのは豚たちだ。いきなり荷台から転がり落ち、おまけに後から落ちてきたヤツがその上に乗っかる。下敷きになった豚は骨折して立てなくなったり、小さい豚は重みで圧死、いやトン死したりした。 圧巻は豚のトン走シーン。シナリオでは簡単だが、撮影は簡単には済まなかったようだ。肝心の豚が一向に走ってくれない。イマヘイさんとカメラの姫田さんはクレーンの上から盛んに怒鳴る。「そこの豚が少ない!」とか「絵にならない」・・・。その度に豚の黒子役の浦さんはじめ助監督は四つん這いになって豚の間を走りまわる羽目になる。 主役のチンピラは警官隊に撃たれ、豚に追われ、遂には便器に顔を埋めろように死んでいく。実に無残な最期である。 この作品、制作費が相当にオーバーしたそうだ。豚の借り賃、死んだり怪我をした豚の買取代金や慰謝料など脚が出た。買い取らざるを得なかった豚は解体されてスタッフの胃袋に収まったと聞いた。 そう云えば他の作品の時より、浦山助監督の製作部長の隣に坐る時間が長かったように思う。 ブログランキング参加中 どうぞよろしく ↓ 楽天ブログランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.07.16 15:55:15
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