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2010.03.22
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カテゴリ:青年マンガ他

『テルマエ・ロマエ(1)』ヤマザキマリ

なんか意識の底のほうからふつふつと面白さがこみあげてくる。
12月頃、書店の店頭で大量に平積みされていた頃から、気にはなっていたのよ。
いくら古代ローマの彫刻素描とはいえ、表紙にあれはいいの? とか風呂場でタイムスリップってどんなマ王?とか(爆)。

で、2月に買って、少しずつ読んでいたんだけど、面白すぎてなかなかに時間がかかる。
約2000年の時を越えて、ローマの設計技師(浴場専門)が、なぜか現代日本のさまざまな風呂にタイムスリップするお話。
ここでどら○もんが出てくれば児童向けファンタジーだし、美形の騎士が待っていれば○マだけど、迎えるものも送るものも、きわめて正常な反応を示す。移動した先で言葉が通じることもない。TOTOあたりのショールームにスリップしたときは爆笑したけど、ファンタジーやSF設定を敢えてとらない方法が新鮮。

作者さんはポルトガル在住らしいけど、ちゃんと美術の基礎を学んだ、逆に言うとまったく遊び心のない絵柄で、あんまりデフォルメとか考えないで、ひたすらまじめ。個性がないとも言える。でも描くのは時間がかかりそうだ。おそらく、このテーマを選ばなければこんなにメジャーに取り上げられることもなかったかもしれない(作者はその後、イタリアの陶芸家と結婚していることがわかった)。

なにが面白いって、当時文明の最先端を突っ走っていた向かうところ敵なしのローマ帝国の一技師という、まるで陽の当たらない人物を主人公に据え、風呂つながりで日本とリンクさせた時点で、この作品の成功は保障されたようなものだ。そして案の定、初版からわずか2ヵ月で5刷までいっていた。すごいなー。

みたこともないプラスチックやビールや垢すりタオルに驚き、なんとかしてこれをローマの風呂で再現できないかと考えるドまじめさに萌えた。石油どころか石炭すら活用していない時代に、数学と建築術だけでどこまで日本の風呂文化に肉薄できるのか、ルシウスのこれからが楽しみだ(笑)。

そして作者の探究心やるや、マンガだけでは収まらず薀蓄ページを作ってしまうほどで、歴史屋だったのではないかと思えるほど、ものの発祥にこだわるところは、なんか非常に自分と同じにおいを感じる。ほうっておいたらいつまででも話続けそうな人かもね。古代ローマにまさか垢すりの道具があったとは知らなかったし、なんであれほど風呂好きの文化が、その後継承されなかったのかが謎だ。着衣や化粧の歴史は面白かったので、がっこの授業とは関係なく類書を読んだりしていたけど(いわゆる「風俗史」。当然最古の女性の職業とかも出てくる)、ヨーロッパの風呂の文化史なんて完全に盲点だったよ。

現在のヨーロッパは乾燥しているから、そもそも風呂に入る習慣すらなくて(大抵の中級ホテルにはバスタブがない)、療養のための温泉保養地はドイツ~オーストリアあたりにあるけど、古代ローマの浴場遺跡は一部の特権階級のものだと思っていたんだよね。でも違っていた。で、なんでローマにだけこれだけ風呂が発達したかとういうと、火山があったからだ。例のヴェスヴィオス火山。なるほど。だからどこかで歴史が間違っちゃったら、日本みたいな温泉文化が継承されていたはずだ(本当か?)。そのうち彼には、江戸時代の蒸し風呂やらソープランドにも降臨してほしいものだ。

あと個人的な疑問としては、奴隷と女性がほとんど描かれないのが不満。私自身は奴隷制を敷いていた時点で実は古代ローマは許容できなくて、古代エジプトのほうが好みなんだけどね(あんなすごいピラミッドを奴隷による強制労働じゃなくて建設したと知った時には驚いた)。

付記:作者の発想のユニークさは、10代からヨーロッパの空気の中で暮らしていることが大きいような気がする。なにしろ14歳でドイツ、フランスを一人旅して、17歳でイタリア人の陶芸家に出会って、そのままイタリアで美術学校出て、現地で所帯を持っている。若くはないし(そうだろうと思った)、北大でイタリア語の講師なんかもやっている。この作品を雑誌掲載してくれた編集者に感謝! 

クラシック界では今、ヨーロッパに音楽留学して、そのまま現地で音楽家と結婚した人たちの子ども世代が新風を巻き起こしまくっていて、評価の高い若手だけでもピアノ、指揮、ヴァイオリンと、10人以上いるんだが(オケ団員とかカウントしたらもっとすごいことになりそうだ)、純日本人であっても、子どもの頃からヨーロッパで育った人の演奏は、日本育ちのそれとは全然違うのは演奏を聴くとよくわかる。やっぱりもともとそれら(西洋音楽)が生まれた環境というのも大きいけど、アメリカみたいに便利すぎない国でひとつのことに取り組むことが、精神性の高い演奏をする音楽家を生み出しているような気がする。

クラシック音楽の場合、両親の一方が日本人というのは、よき時代の日本人のDNA(勤勉)がゲルマン系の重厚さと結びついてうまいこと開花しているんだけど、美術の場合はラテンと結びついたほうがいいんだよね、やっぱり。でもイタリア人(特に南側)のちゃらんぽらんさを受容できる日本人は希少だと思うぞ。





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Last updated  2010.03.22 15:25:05
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