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カテゴリ:青年マンガ他
『西原理恵子の人生画力対決(2)』西原理恵子 偶然、発売日に書店で、今まさに平積みされんとする現場に居合わせたので、これはやはり「買え」との神からの天啓と思し召し、家に連れ帰る。 ほとんどその作品を読んだことのない、青年誌系の漫画家さんたちとの対決だった前巻ですら激笑できたのに、今回はなんと、吉田戦車・伊藤理佐夫妻、猫マンガの二大巨頭(爆)の須藤真澄・くるねこ大和、そしてそして毛筋ほどの共通点もなさそうな竹宮惠子御大までいるっ! そしてもう最初から笑いっぱなしで、改めてサイバラさんの口の悪さというか、思ったことを堂々と口にして憚らない度胸に、ますます「師匠!」と呼びたくなったよ。八巻さん(小学館のサイバラ担当)は、あちこちに頭下げて回ってんだろうなー長生きできないなー。 サイバラさんの歯に衣着せぬ物言いは、「恨ミシュラン」あたりから注目していたけど、同業者で、自分よりはるかに絵がうまい作家さんたちに対しても、もう名言・名句の宝庫。 なにしろ1ページ目の最初の台詞からして、「吉田戦車の描く男子ニキビ中学生が好きだ。ホモでもないのによくこの肉ラインを描けるもんだ」ときた。肉ライン……そうだよ、BLに足りないのはこうした努力だよっ! 伊藤さんとは仲がいいはずで、舎弟の関係だと思ったけど、当時妊娠中だった伊藤さんに「あんた、子育てもんで人の漁場を荒らすんじゃない」とか怒ってるし、二人して微妙なキャンディキャンディを描いた後、サイバラさんが「正直に言おう。萩尾望都と竹宮惠子の見分けがあいまい」とか。 松本零士の回の惹句「日本の鉄男子は若干の永井豪と、後のすべては松本零士でできている」と正しいことを言っていた。うまいなあ。「松本さんをじっと見つめると、ささきいさおが勝手に聞こえる」とか、松本零士のキャラは、まつげ姉さん(メーテル系)とハーロック系とじゃがいも系(てつろうとかおいどんとか)の3パターンで、大御所の中でも群を抜いてキャラのバリエーションが乏しい。この3パターンだけでよくぞ半世紀やりとおしたもんだ」とか、言いたい放題。で、松本さんがどのお題でもみんなゆがんでいて、ちょっと目がおかしいのかなと思うよ。 さて、須藤さん、くるねこ大和さんの回では、猫まんがに進出したいサイバラさんが、「三人で徒党を組んで猫村さんを潰そう」とか、女子だからして女子らしい画題で、綿の国星とかナウシカとかも描くんだけど、二人ともうまくて「この人たちはさー上手だからあえて汚いお題にしないとさー」とか言われてるし。須藤さんのソツないうまさに「一番うまくて一番おそろしいこ、ますび」とか言い放たれていた。須藤さんファンとしてはかなりうれしい。 浦沢直樹の回では、最初から勝負にすらならない浦沢さんのうまさに「確かに正論で正解だが、あんたの人生は楽しそうじゃない」とか言い放つし。こういうのが好きだ(笑)。 さて、なぜこの人選なのか不明だけど、やっぱり竹宮さんの回は、けっこう気を使ってるのがわかる。でもって「風木」のあらすじを「まあ、きれいめの『俺の空』ってことで」でまとめてしまってるのに笑った。で、二人して萩尾望都に挑戦し、エドガーを描く。 サイバラ「エドガーってあの、タバコ押し付けられただけで人生かえるへタレ」「それはトーマの心臓のユーリ!」 そういえばちょっと前に、「トーマの心臓」の舞台を見たけど、うーん微妙だった。中高生が見れば感動するかもしれないけど、所詮10代の多感な少年たちを日本人の成人男子が演じるのは無理があったな。でもこれ評判よくて、何度も再演しているんだよね。 あっと寄り道。竹宮VSサイバラ対決では、山岸さんの聖徳太子とかケンシロウとかのお題にまじって、SMAPも描いたけど、二人ともなぜか4人なんだよね。一体誰が抜けているのか、絵を見ただけではわからないというのが謎だ。 そういえばマンガは読んだけどないけど、デトロイトメタルシティの若杉さんが、壊滅的にヘタくそで笑った。この世のものとは思えない線の汚さに、それでも大ヒットするマンガを描いているというところで、編集者の眼力にうなった。 これ、まだ続くのかな。基本的に顔出ししない少女漫画家さんは難しいと思うけど、サイバラさんの破壊力に太刀打ちできそうなのは吉田秋生さんとか青池さんあたりかなあ。いやちょっと古すぎるか。セーラームーンの人とかどうだろう。どっちにしても、その後の人生を左右する対決になるから(笑)、もう恐れるものはなにもない人じゃないとな。聖・俗の戦いとか、美・汚の対決とかが見たいぞ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.09.20 19:17:21
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