穴馬発見☆資料置き場(倉庫)

ジャパンカップ

2003年/ジャパンカップ



・CONTENTS・
  ジャパンカップ       ※タイトルをクリックしてください




レース展望
ちょっと雑談
血統で読む(1)
血統で読む(2)
レース回顧




今年は外国馬も強いが日本馬も強い!
シンボリクリスエスの、意外な死角
ジョハーとクリスエス、今まで勝ったことがないタイプ
古馬の芝中距離G1を勝てないサンデー産駒、今回は?
逃げて後続をちぎるのは、サイレンススズカ型






wrote:2003/11/25

今年は外国馬も強いが日本馬も強い!

<**レース展望/2003年 ジャパンカップ**>

 もしかすると今年のジャパンカップは、創設以来最高にハイレベルなメンバー かもしれない。
 外国馬に関してはこれぐらいのハイレベルな年は過去にもあったけど、なにし ろ日本の馬が粒よりなのだ。今週もどこからでも狙える馬券で、本当に目移りが してしまいそうだな~。

 いちおう、過去のラップを見てみたんだけど、やはり実に引き締まったラップ で、毎年かなりレベルの高いレースが展開されている。別表の太字の部分がだい たい向正面のラップなんだけど、ねっ、ほとんどダルダルのラップがなくてピシ ッとしてるでしょ?
 ⇒  ジャパンカップのラップ


 外国のレースなんか実際に見る機会ほとんどないし、なによりも道中のペース も仕掛けのタイミングもまったく違うから、外国での実績ってそれほどアテには ならない(←ということぐらい、もう馬券買う人なら誰でも知ってる)。ここが なにしろジャパンカップの難しさで、かつては「本気度を読む」なんて思惑馬券 が売れたりしたもんだけど、なかなか当たらないんだよね~(笑)
 ただ、ワタクシ、わりとジャパンカップってこれまで的中したこと多くてです ね(笑)、そのポイントは意外にも、
 「府中の2400mを好走する能力は、諸外国の馬場だと2000mを激走する能力」
ってあたりにある。オーストラリアのレースで言うと、コックスプレート。北米 のレースで言うと、アーリントンミリオン。このあたりを快走した実績は、わり とそのまま信用できる。あとは、これはもう誰もが言っていることだが、「硬く て軽い芝での好走実績」。イタリアとか北米のレースで好走してる馬が、目安と しては日本向きだ。


 しかし思うに、ブリーダーズCのターフを勝つ馬って、やっぱり軽い芝では世 界最強ではないかなあ。今回のジョハー、どんなレース見せてくれるか、とても 楽しみだ。

 別表(ラップ)の「位置取り」の欄を見ると明らかだけど、極端な脚質の馬は ほぼ上位にこられないのが、これまでのパターン。ほとんどの場合、勝ち馬は4 角で前のほうのポジションにいて、さらに直線でもうひと伸びしてるのがよくわ かる。しかし改装されて直線が長くなって、そのあたりがどう出る?
 コースも先週まではAコース使用、インの芝がもうだいぶん傷んでレースは ほとんど外差しだったが、今週は仮柵を内側から6mに設置するCコース使用だ。 先行しても最後充分伸びられるコースだから、そのあたりも注意が必要だ。
 なお、今回の開催でCコースを使用していたのは、初日と2日目のみ。初日は コスモバルクが逃げに逃げて百日草特別を圧勝した日だし、2日目はアルゼンチ ン共和国杯で、アクティブバイオが4角先頭で押し切った。
 早めに仕掛けて行ってスタミナ勝負に持ち込みたいのがアクティブバイオと ザッツザプレンティ。これを目標に直線で各馬が殺到するというレースになるの は目に見えてるんだけど、大本命シンボリクリスエスは競って強いタイプではな いから、この前みたいにズバッと抜け出せるかどうかが鍵となる。

【ワンポイント】
なるべく「そんな馬出てたの?」って馬が激走するぐらいに荒れてほしい(笑)
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wrote:2003/11/26

シンボリクリスエスの、意外な死角

<**ちょっと雑談/2003年 ジャパンカップ**>

 この前、天皇賞のレース回顧でシンボリクリスエスを評して「歴史に残る超A クラス」とか言っておきながら、その舌の根の乾かないうちにもうアラ探し(笑)
 我ながら多少照れるけど、でもなんだかんだ言っても、「馬券」と「競馬」っ てやっぱり別なのだ^^
 僕が今まで自分でレース見たサラブレッドの中では、シンボリルドルフが一番 強いと思うし、一番大好きな馬だけど、なにしろルドルフが現役時代に、ルドル フがらみの馬券買ったためしナシ!(笑)
 今思えば、もうその頃からひどい穴党なんだけど、何とかして、強い馬を負か したくてしょうがない。(今ならルドルフに迷わず本命打つけどね・笑)

 さてそれでシンボリクリスエス、天皇賞・秋の強さは本当に史上最強クラスだ ったと思うのだけど、もしかしてこの馬、2000m限定馬かもしれない、という可 能性がある。
 「上手に走れて、強さを発揮できる距離」は馬それぞれによってまったく違う が、その「距離適性」、強い馬ほどかなり限定的な場合があって、シンボリクリ スエスはどうもそれに当てはまるのではないだろうか、と思えるフシがあるのだ。 (←こういうコトを勘ぐり出すとキリがない・笑)

 「距離適性がかなり限定的」という一流馬の例をあげると、例えばビリーヴ。 本格化する前には府中の京王杯SCで3着するなど、1400でもわりとソコソコにやれ ていたのだが、強くなってからは本当に「1200限定」のスプリンターになった。
 あるいは、タイキシャトル。スプリントもマイルも、短いところではあれほど 超絶に強かったあの馬が、引退戦に選んだスプリンターズSではよもやの3着敗退。 本当に原因不明だったが、もしかすると、距離適性がマイル限定になりつつ あったのかもしれない。
 他にも例はたくさんあるけど、これは「加齢と共に適距離が限定化する」とい う面と、「加齢と共にクラス上がって相手もグッと強くなる」ので、本当にジャ ストの距離じゃなければ結果を出しにくくなってくる、という面がある。

 シンボリクリスエスの2000mのレースキャリアは、まさにパーフェクトだ。
 ↓↓↓
 ●2001年/神戸新聞杯(1分59秒1)・・・皐月賞馬ノーリーズン(武豊鞍上)相手 に圧勝
 ●2001年/天皇賞・秋(1分58秒5)・・・トリッキーな中山コースをものともせ ず3歳で圧勝
 ●2002年/天皇賞・秋(1分58秒0)・・・18番枠を問題にせず、歴史に残る爆発 力で圧勝

 芝の2000ではまさに史上最強クラスと言って良く、レースぶりも強く印象に 残るものばかり。コースが変わろうが、お構いなしに圧勝の連続で、他馬が付 け入るスキなどどこにもない。まさにスーパーホースのレースぶりだ。
 ところが、2000mを超えた競馬では、これが同じ馬かと思うほどふがいない のだ。2000だとあれほどに躍動感あふれるあの漆黒の馬体が、信じられないこ とに、ゴール前で苦しそうにもがいたりする。

●2002年JC(中山芝2200m)
     【2分12秒3】
 3着
        わざわざマグナーテンをペースメーカーにして、平均ペースの競馬に
        したわりには、最後いまいち伸びきれなかった。時計も平凡。
●2003年宝塚記念(阪神芝2200m)
     【2分12秒3】
 5着
        記憶に新しい、別馬のような敗戦。最後は苦しがって完全に止まった。
        2000mを越えたちょうど坂のあたりから、目に見えて動き悪い。
●2002年有馬記念(中山芝2500m)
     【2分32秒6】
 1着
        タップダンスシチーの一人旅、しかし後続のラップは超スローで、
        道中の流れに助けられて最後に余力を残せたが、時計平凡。


 芝2200のG1を2回走っているが、偶然にも、走破タイムが2回とも2分12秒3。 これはオープン馬としては実に平凡な持ち時計で、本当にシンボリクリスエス の記録なんだろうかと思ってしまう。
 もしかすると、「平均ペース~やや速め」で流れる2200m以上の競馬には、ま ったく適性がないのかもしれない。体力的に2000ジャストで、それを超えると 急激に余力が失われていくのではないだろうか。

 今回はタップダンスシチーが行くのかアクティブバイオが行くか微妙だけど、 スタミナ勝負に持ち込みたいアクティブバイオが「速め平均で息の入らない流 れ」を作るかもしれない。しかもそこを「もっとスタミナ勝負に!」と思うザ ッツザプレンティが早めに仕掛けていく競馬だから、後続は本当に息の入らな い、苦しい戦いになると思う。
 そういう流れで勝ったことのないシンボリクリスエス、大丈夫? 直線の競 り合いでもまったく勝ったことないんだけどさ、本当に大丈夫??

【ワンポイント】
それでもあなた、シンボリクリスエス、買いますか?
え? 私はもちろん買いますよ(笑) 

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wrote:2003/11/27

ジョハーとクリスエス、今まで勝ったことがないタイプ

<**ちょっと雑談/2003年 ジャパンカップ(1)**>

 恒例の血統調査、昨年は中山なので除外するとして、一昨年までの21回の連対 馬、全馬血統表見てみた。そしてその結果は、やはり 「底力が問われるハイレベルの争いでは、異系の雑草的な強さがものを言う」 (←仮説ですけどね・笑)
 なにしろ過去のジャパンカップ、連対馬のほとんどが異系の活力を注入された 配合で、あまりにその傾向が顕著なので、調べていて驚いたほどだった。
 結論を言うと、ファラリス系を4回重ねた、いわゆる「単調な配合の馬」が勝 ったのは、過去21回のジャパンカップの歴史の中で、わずかに2回のみ。一頭が 1997年のピルサドスキーで、これはちゃんと「ファインモーションの兄」って肩 書きつけた方がいいかな?(笑)(←微妙だけど、本来はファインモーションが 「あのピルサドスキーの妹」)
 そしてもう一頭が、2000年に勝ったテイエムオペラオー。
 この2頭は共に絶好調で、ジャパンカップはまさに満を持して臨んだ一戦だっ た。ジャパンカップを迎えるまでの勢いが、他馬とはまったく違うのだ。

○ピルサドスキー○

 前年にブリーダーズCターフをシングスピール相手に圧勝して、そのあと半年 休養。
 ジャパンカップのシーズンは、休み明けこそガネー賞(芝2100m・G1)を3着だ ったものの、そのあとが凄い。まずイギリスで2400mのG2を2着したあと、G1を5 連戦して1着・2着・1着・2着・1着。ほとんどパーフェクトな戦歴を引っさげて、 ジャパンカップに参戦だった。
興味のある方へ、補足⇒ ピルサドスキーが5連戦したG1は、エクリプスS・芝2000m・1着/キングジョージ ・芝2400m・2着/愛チャンピオンS・芝2000m・1着/凱旋門賞・芝2400m・2着/ 英ドバイチャンピオン・芝2000m・1着、という戦歴。さらに余談だが、ピルサド スキーは母系が何しろ凄くて、母の父Troyは1979年の英国ダービー馬、戦歴が11 戦8勝というスーパーホース。2代母の父がMill Reef、これも英国ダービー馬(1 971年)で、戦歴が14戦12勝という、歴史にその名を残すスーパーホース。さら に3代母の父がSir Gaylordと言って、これはSir Ivorという英国ダービー馬の父 となった馬。重厚!

○テイエムオペラオー○

 グラスワンダーやスペシャルウィークといった超絶に強い牡馬が相次いで引 退して、「史上最強の暫定王者」などと揶揄されたこともあったオペラオーだ が、ジャパンカップを迎える戦歴は、ここまでなんと6連勝!
 春の京都記念G2を皮切りに、阪神大賞典G2、天皇賞(春)G1、宝塚記念G1、3ヶ 月の休養をはさんで京都大賞典G2、天皇賞(秋)G1、と、完全制覇しての参戦。 今改めて見ると、勢いがまるで違のだ。


 さてそれで、この2頭以外で「ファラリス4段重ね」の配合でありながら連対し たのは、テイエムオペラオーが勝った2000年の2着馬、メイショウドトウだけ、 という記録が残っている。しかしメイショウドトウもなかなか凄い戦歴で、強く なってから、負けたのはほとんどオペラオーだけという馬。
 というわけで、JCの歴史で、ファラリス系だけの配合で連対したのは、この3 頭だけ、というのが調査結果だった。

 で、問題は、今年の出走馬。ファラリス系を4回続けて配合されてきた(つま り過去の傾向から見るとダメかもしれない馬)は3頭で、

 ○シンボリクリスエス
 ○ジョハー
 ○ダービーレグノ

 1番人気&2番人気と思われるクリスエスとジョハーは、過去の傾向からは大ピ ンチかもしれない。
 これで、戦歴が他を圧倒する凄い勢いならハナシは別だが、シンボリクリスエ スはここまで、昨年のJCを3着、有馬を1着、宝塚を5着、天皇賞(秋)を1着。こ れは、冷静に見ると、「物凄い勢い」というほどではない。
 そしてジョハーは今年に入ってまずG2のサンマルコスSを1着、次がグレードの つかない一戦をサラファンの3着。その次がC.L.ハーシュ記念ターフ選手権Sとい うG1を2着、そして前走がブリーダーズCのターフを1着。まあいちおう上り調子 という判断はできそうだが、それにしてもピルサドスキーのような恐るべき戦歴 ではない。
 しかもシンボリクリスエスはターントゥ系、ジョハーはミスタープロスペクタ ー系で、どちらもジャパンカップでの実績はあまりよくない、というデータがあ ったりする。(過去に、それぞれ2頭ずつしか勝ち馬を出していない。)

 両馬とも、「こういうタイプは勝ったことがない」という井崎の法則みたいな 馬なんだが(笑)、少なくともこの両馬で決まる馬連馬券は、過去の傾向からは 「大冒険」だということが言えそうだ。
この人気の両馬、まさにここを勝つようだと、地味ながら(そしてほとんど誰も 知らない事情ながら)、レース創設以来の偉業ということになるが、はたして結 果は??

【ワンポイント】
オペラオーが勝った年は、こう言ってはなんだけど出走馬のレベルもかなり低か った。ここ10年では良馬馬で最も時計がかかった一戦。

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wrote:2003/11/27

古馬の芝中距離G1を勝てないサンデー産駒、今回は?

<**血統で読む/2003年 ジャパンカップ(2)**>

 芝のレースで、「チャンピオン決定戦」と言えば、クラシック・ディスタンス とも称される2400m。レースで言うと、凱旋門賞やキングジョージ、ブリーダー ズCターフ、そしてダービーもそうだ。
 今ではスピード化が進んで、主流が2000mの競馬に移りつつあると言われてい る。日本でも2000mになった秋の天皇賞が毎年ものすごく面白いし、これは世界 的な傾向のようだ。
 長距離戦があまり重要視されなくなってきているのはどこの国でも同じで、 日本では春の天皇賞や菊花賞の人気がいまだに高いけども、実際には、2000mや 2400mのG1に比べると、やはり出走馬の質が全体的にやや落ちるという印象。

 さて、その「根幹距離」と言ってもいい2000mと2400mの古馬G1で、サンデー の仔がすっかり勝てなくなっているの、気づいてました? 特にジャパンカッ プは、あの強かったバブルガムフェローが惨敗してるほどで、唯一勝ったスペ シャルウィーク以外は、ほぼ全馬いいところなく敗れている。


 最近のサンデー産駒、本格的なステイヤーだったマンハッタンカフェが、長 距離戦の天皇賞(春)と有馬記念を勝ってはいるが、そのほかの馬は、芝のマ イル~中距離路線の古馬G1でまったく結果を出せていない。1999年のスペシャ ルウィークから後、「マイル~中距離路線の古馬G1」で勝ち馬がいないのだか ら、ちょっと意外ではないですか?
 レースキャリアのピークが、3歳春頃にあるためなのだろうか。物凄い勢い で重賞を勝ってるような印象があるが、実は全体的な傾向としては「早熟」ぎ みなのかもしれない。

 さてそれで、今年のJCは元気なサンデーの3歳がずいぶん出てきた。ダービ ー馬と菊花賞馬がここに顔をそろえるだけでも快挙だと思うが、サンデー&サン デー系、はたしてここで通用するかどうか、興味シンシンだ。
 おそらく、サンデーよりもスタミナ色の濃いダンスインザダークの方が、ジ ャパンカップというレースが要求するスタミナと底力を、子供たちに伝えてる ような気がする。もしここでダンスインザダーク産駒が父のサンデーを差し置 いて快走するようだと、サンデー系のサイアーラインはつぶれずになんとか続 いていくかもしれないね?


 府中と言えば「ナスルーラ系」の重厚なスピード。今年の出走馬でナスルー ラ系はダービーレグノとアンジュガブリエルの二頭だ。アンジュガブリエルは、 硬い芝での好走歴もあるし、海外遠征も経験しているし、過去の傾向からは好 走のパターンに入っている。
 もうひとつ、ジャパンカップは過去に異系の馬がかなり数多く勝っているの が大きな特徴だ。
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※JCを勝った異系の馬たち※

  ◇1981年 メアジードーツ(ハイペリオン系)
  ◇1982年 ハーフアイスト(ブランドフォード系)
  ◇1985年 シンボリルドルフ(ヘロド系)
  ◇1986年 ジュピターアイランド(ハイペリオン系)
  ◇1988年 ペイザバトラー(ブランドフォード系)
  ◇1992年 トウカイテイオー(ヘロド系)
  ◇1995年 ランド(ハンプトン系)
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 今年、完全な異系の父を持つ馬は、3頭エントリーしてきた。タップダンスシ チー、デノンの1枠両馬がリボー系。そしてオーストラリアから参戦のフィール ズオブオマーが、ヘロド系。ランド以来勝っていない異系の馬だが、この3頭は やや要注意かもしれない。

【ワンポイント】
サンデーの3歳、これまではJCで必ず惨敗だけど今年は?
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wrote:2003/12/2

逃げて後続をちぎるのは、サイレンススズカ型

<**レース回顧/2003年 ジャパンカップ**>Race/2003.11.30

 サラブレッドの「競走馬としての完成形」は、おそらく「ワンペースの先行 型」だろうと思う。なぜなら、速め平均のラップを刻んで行って、最後までそ のラップが乱れないとき、ほぼ必ず「後ろの馬は届かない」ということになる。
 いい例がサイレンススズカだ。あの馬は気性的に「逃げ馬」だったのではな くて、「速め平均」の流れを自らつくって行って、最後までしっかりとそのラ ップで走りきるというレースをして見せたのだった。これは「展開の助けを借 りる」ということではまったくなく、「自力で勝ちに行って、道中ずっと他馬 の目標になりながら後続をちぎる」のだから、型としては相当強い。

 タップダンスシチー、驚いたことに、サイレンススズカのレースをやってみ せてくれたのだった。近年、古馬になってからここまでの完成度を見せた馬は そう多くないような気がする。サイレンススズカの全盛時といまのタップダン スシーを比べてどちらが強いかという議論はなかなか興味深いが、もしかする とほとんど遜色ないレベルまで(特にこの一戦に限っては)、きていたかもし れない。


 佐藤哲三はかねてから僕の贔屓の騎手で、なかなか度胸満点、弱い馬に乗っ ていても必ず一度は勝負してくれるタイプで、馬券を買っていて納得できるタ イプのジョッキー。彼はマイネルマックスでの朝日杯3歳S以来のG1勝ちで、そ のときにはやや強引な騎乗ぶりがいろいろ言われたけど、今回は文句なし、ま ったく素晴らしい競馬!
 タップダンスシチーは遅咲きのAクラスで、デビューから32戦目のG1初勝利 となった。この馬、デビューから手綱をとったのが四位、そのあと熊沢、幸、 松田、中舘、アンカツ、川原、武豊、ペリエ、勝浦、と手替わりして、昨年の 朝日CCから佐藤哲三とコンビを組んでいる。それ以来ずっと他のジョッキーに 手綱を渡すことなく、10戦目のコンビで初G1制覇となった。
 以前は先行してちょい足りないという競馬を繰り返していたものだが、本当 に強くなったものだなあ!なにしろ去年のジャパンCウイークは、京阪杯に出 て5着だった馬だ。


 シンボリクリスエスは道悪が敗因と言われたが、やはり距離の問題もある のかもしれない。4角でもう全く手ごたえがなかった。あと一戦しか走らない らしいけど、僕としてはやはり「2000m限定のチャンピオン」という見方をし ておきたいかな。
 いずれにしても、これで有馬記念が面白くなった。タップダンスシチー、 強くなる前からレースをつぶさに見てるから知ってるけど、本来はパンパン の良馬場でスピードと切れを活かすタイプだ。

 こういう逃げ切り劇を見てると、競馬ファンで本当に良かったなあと思う。 こんなレースは滅多に見られるものではなくて、後々歴史の中で「空前の圧勝 劇」として語り継がれることになるだろう。

 もう、まさに完璧な勝利、ラップのバランスも完璧、フォームのバランスも 最後まで完璧、馬と鞍上との信頼関係も、最後まで最高だった。良かったなあ、 佐藤哲三。本当によかった!
 小さめのガッツポーズ、ウイニングランをせずに他馬と一緒にダートコース を戻ってくるなど実に控えめだったが、レースの主張はものすごく鮮烈で、長 く記憶に残る一戦だったと思う。

【ワンポイント】
有馬記念は各馬の消耗度が鍵。今年の秋のG1戦線は、かなりハードな戦いが続いてる。

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