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幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

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Feb 7, 2012
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カテゴリ:シェフの雑記帳

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 サンク・オ・ピエでは、いくつかの塩を使い分けてます。上の画像は、イタリアのエミリオ・ロマーニャ州チェルビアの塩田の塩。ローマ法王庁に献上されていたというもので、SALE DOLCEサレ・ドルチェの名の通り、甘みを感じる柔らかい塩です。塩田の海水が飽和状態になって塩が析出してきたものを手作業で集めたものです。荒い粒なので、料理の仕上げにパラリと振りかけたりするほか、塩挽きに入れて細かくして味付けに使います。

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 これは、フランスのローヌ川の河口近く地中海に面した古代ローマ時代から続く古い塩田カマルグの塩。SEL GROSセル・グロと言って、精製していない荒塩です。カマルグは、芦が生い茂る湿地帯で、地中海を超えて飛来するフラミンゴが暮らしていたり、野生の馬が生息するという大自然が残る場所で、国によってそれらの野生動物も保護されている。

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 ラベルにもこうして、空を飛ぶフラミンゴが描いてあります。カマルグの塩は、精製しなくてもほぼ真っ白で、とても綺麗なのが特徴。味わいも柔らかく、ナトリウム以外のミネラル分も豊富。自家製のハムを作るときにはこの塩を単体またはチェルビアの塩と合わせて使っています。

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 そしてこれが、カマルグのFleur de selフルール・ド・セル、塩の花ですね。最初のチェルビアの塩と同じように海水が飽和状態になって析出した塩を手作業ですくい集めたものです。これはちょっと値段がお高いので、本当に料理の仕上げ用に使います。最も丸い味わいの塩で、ほぼ味が決まっている料理に少し振りかけてもしょっぱくなりません。旨味を引き出し、最後の味の引き締めをしてくれるすぐれものです。

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 これは、フランスのもう一つの塩の名産地であるブルターニュ(英仏海峡に面する)のゲランドの海藻入りの塩。GROS SEL MARIN aux alguesグロ・セル・マリン・オ・ゾルグalguesオルグというのが海藻のこと。磯の香りがほんのりする美味しい塩です。家では冷やしトマトにはこれかけてますね!美味いです。お店では、魚介のカルパッチョなどに使います。

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 塩挽きに入れた塩2種類。左がゲランドの海藻入りの塩。右が、カマルグとチェルビアの塩のミックス。

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 これは10キロ袋入りのシチリアの塩。これはスモークサーモンの漬け込みなどにもたっぷり使います。

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 シチリアのトラパニの塩田というこれも有名な美味しい塩の採れる塩田の塩で、SALE FINOサレ・フィーノと言って、さらさらと細かい粒の塩です。これをオーブンで軽く焼いて、ふるいにかけて、料理の下味付け用の振り塩に使ってます。以前は伯方の焼き塩を使ってましたが、この塩を2年前くらいから使い始めたら、こちらのほうが美味しいので伯方の塩はやめました。

 塩を振る時は、親指人差し指中指の3本の指で塩をつまんで、高い位置から振りかけて肉や魚に下味をつけます。このとき一番大事なのが、よく見ること!塩がどの程度の密度と量で材料についているかをよく見なくちゃ駄目なんです。だから私は、「塩は眼で振れ」と言ってます。

 料理というのを極論すれば、塩と火を使いこなすことと言ってもいいでしょう。過不足なく上手に火を通した魚や肉に適度な塩が決まっていれば充分美味しい料理と言えます。それを実現するために振り塩でつける下味は非常に重要です。

 それぞれの食材に見合った塩分を使わねばなりません。基本的には、淡白なものには薄めの味付け、旨味が濃いものには強めです。例えば、平目、鶏肉、牛肉とあれば、平目に振る塩が一番少なめです。牛肉に比べたら鶏肉はやや少なめですが、鶏の場合は皮目に気持ち多めに振ります。

 鴨の皮目や豚や仔羊の背脂のところはかなり強めに振ります。焼くと脂が解けて流れて塩も大半落ちてしまうからです。フォアグラのソテーも同じで、脂が解けて塩が落ちるので、見ていてびっくりするほど塩を振ります。反対に肉類ではあってもリ・ド・ヴォーは味わいが繊細なので塩の振りすぎには十分注意します。これはちょっと少ないんじゃないの?くらいでちょうど良い。

 私の料理の基本的スタイルは、ソースがなくても、ほぼ味が決まっているくらいにしっかり下味をつけて調理します。だから塩は私の料理の生命線なんです。

 他人の店に行ってオープンキッチンなどで、料理人の塩の振り方を見るだけで、だいたいの腕がわかります。材料のほうを見て塩を振ってない奴は、ダメですね。そういう店の料理は、味が決まってなくてつまらないことが多いです。

 そいう訳で、塩にはこだわってます。今使っているのは全部塩田の塩です。ドイツの岩塩やモンゴルの岩塩なども試しましたが、どうも岩塩系は味わいがシャープすぎて使いづらい気がします。ちょっと過酷な味なんです。まあ、私の好みを言っているだけですけどね。それから、純度99.99%みたいな旧専売公社系今は塩事業センターですか、、、イオン交換膜で作る塩。あれは、私に言わせれば化学薬品であって、調味料としては全く使えません。塩化ナトリウム以外に海や血液などのイオンバランスに似た配合でミネラル分が含まれていなければ塩としては使えません。

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 これは、帆立貝柱に塩をして冷燻にかけたもの。

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 フェンネルシードを一粒か二粒のせて、フルール・ド・セルを少しかけてある。こんな感じに仕上げの塩を使います。

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 これは、ある日の賄い飯。菜の花とアンチョビのパスタ。パスタをゆでるときにも、塩をたっぷり使います。お湯1リットルに対して、8~10gの塩が適量。これ、量ってみると結構な量なんですよ。普通パスタをゆでるときには、お湯を3リットル沸かせば3人前か4人前くらいは茹でられます。そこに塩は24~30g。これは軽くひとつかみ分あります。つまり。茹で湯でしっかり下味をつけてしまうんです。このパスタのようにアンチョビを使う場合などは、塩はやや控えめですが、ペペロンチーノなど、オイル系パスタの場合はめいっぱい塩を入れます。オイルにからめたら出来上がりという塩加減です。

 塩分の取り過ぎは体によくありません。これは、本当に正しいです。この場合特に純度が高い塩化ナトリウムだけの塩が一番体に悪いです。ナトリウム以外のカリウムやマグネシウムなど含んだ天然塩なら、塩自体にナトリウムを体外に排出する作用が少しあるんだそうです。

 それから、出来合いの総菜など、もちろん安い塩を使っていることが多いでしょうし、甘味料や旨味調味料などで味がごまかされ、強い塩分がわからないことが多くなっています。特に和風の味付けは砂糖やみりんなど甘味を使う事が多いので、知らずに過剰に塩分を取ってしまう事が多いです。それから旨味調味料の代表格グルタミン酸ナトリウムは、しょっぱくなくても塩分(ナトリウム)ですから、たくさん使うとかなりヤバいです。

 クラシックなフランス料理も脂肪分が多く塩分も多いソースがたっぷりですから、あまりヘルシーとは言えません。私のやり方は、下味重視ですから食べるとしっかり塩がきいてますが、ソースなどに強い味をつけないので意外に摂取塩分は少ないんです。






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Last updated  Feb 8, 2012 09:21:20 AM


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 madame-H@ キッシュに入れてます。 相かわらず、手間のかかるスープを楽しん…
 ゆり777@ こんにちは。 美味しそうですね~。 チキンがジュージ…
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