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カテゴリ:落雷疾風記
ベルティナの町並みは徐々に消え失せてゆき、辺りはカルメス山や、草原・・・・・・分かりやすく言うと、ほとんど緑一色だった。
「ここから集落までは、わりかし近い。・・・・・・地図を見ると、だいたい7km程度だ。」 ジンは余裕の表情を見せたが、意外と遠いものである。地平線が見える・・・・・・とまではいかないが、レヴェナーンまでの道のりは険しそうだ。 僕達は生き生きとした草原の草を思い切り踏みながら、集落を目指した。時には周辺に生息する生物達も顔を出し、時より僕達を和ませてくれた。ジンは親指の爪ほどの大きさのチョコレートの袋詰めを片手に、地図を見ながら先頭を歩く。 「・・・・・・にしても、蒸し暑いですねぇ。さっきみたいな暑さは少し和らぎましたが、曇り空なのに蒸し暑いです・・・・・・。」 アルメが気になったこと口にすると、ヴァンスが困りながら相槌を打った。 「この状況の中、多分、雨がしばらくの間降ることでしょう。周りを見ても、カルメス山にも雲が掛かっています。しかも、雨宿りをする場所がないのでねぇ・・・・・・。困りました。」 ヴァンスが少しかすれた声で言うと、軽く咳払いをした。 「どうしよ~・・・・・・ちょっとさっきからポツポツ来てるよ~・・・・・・。」 アイリが少し心配そうに空を見上げると、言った通り、3秒に1つぐらいのペースでポツリと来ている。 「う~む・・・・・・ここで火霊ラールの魔法を使いたい所なのですが、この炎系防御魔法『フィーゼルムサイゼス』は、私達の周りに炎の壁を発生させることが出来ます。なので、雨ぐらいの水分なら蒸発させて防ぐ事が出来るのですが、周りは一面の草原。火事になるだけでしょう。」 そこで、アリアが口を開いた。 「シェーラ・・・・・・の魔法、・・・・・・使うよ。・・・・・・『エルメトール』・・・・・・!」 そういってシェーラを召喚し、『エルメトール』を唱えた。エルメトールとは、聖なる強い熱線を放ち、本来は相手を焼き焦がす裁きの魔法なのだが、その魔法を上に向かって唱えた。もしかしたら、一時的に雨風を避けられるかもしれない。 シェーラが放った熱線は、もの凄い勢いで水分を蓄えた大きな雲をバッサリと裂き、吹き飛ばした。隙間からは少し青空が見えたが、それもまたいずれ、大きな雲達に覆われてしまった。 「何回か・・・・・・やれば・・・・・・・やり切れるはず・・・・・・。」 「さすがですねぇ・・・・・・。私も守護霊が欲しいものですよ・・・・・・。」 そうヴァンスがいうと、アリアは少し笑った。僕はアリアが笑ったことは見た事がなかった。とても趣(おもむき)のある、柔らかな笑い方だった。一時、皆笑っていた時があったけど、アリアだけ笑っていなかった。どうやら、自分が褒められると嬉しいらしい。 僕達はこの様に凌(しの)ぎながら、集落に向かって走り出した。 そして、ついに・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.05.23 21:29:08
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