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カテゴリ:落雷疾風記
僕の部屋では、ヴァンスとガウセルが椅子に腰かけ、何かと悩んでいた。
「おや、ジン君達。どうかしましたか・・・・・・?」 「さっきの戦闘で、ローレライが落としたものや、死体の所持品を漁(あさ)っていたんです。するとこんな物があるローレライが所持していたポシェットのような物から出てきたんです。」 僕は胸ポケットに入れておいたあの紙切れを、ヴァンスやガウセルの前で広げて見せた。そして十数秒後、 「なっ・・・・・・これは・・・・・・ガウセル、あれを。」 ガウセルは右手の中指にはめていた指輪を一旦外し、僕達の前に差し出した。 「磁力の指輪とはこの事だ。そしてその裏側には、カイラマ島とセライ島を意味する文字が記されている。どうやらこの2つの島々、何か関係がないかと思い、ベルティナの宿亭にいるときに、私とヴァンス殿とで考えていたのだ。今、ローレライの騒動は一段落ついた。次の目的地は・・・・・・」 ガウセルとヴァンスは立ち上がり、部屋にあったラグナロク諸島全体地図の中のカイラマ島とセライ島をそれぞれ指差し、その場所を示した。 「彼らの拠点は、この2つの島々のうち、どちらかにあるか、それかどちらにともあるかのどれかだ。しかし、我々が行ったところで、袋叩きに遭う事は目に見えている。向こうも文明を持っている限り、近寄れないのだ。」 僕はカイラマ島とセライ島の地形をじっと見て、ある事を思い出した。 「父が昔、ラグナロク諸島は1つの陸だったと聞いたことがあります。それはとても長い年月をかけて地盤が動き、やがて7つに分かれたそうです。そう考えると、カイラマ島の西側の海岸線と、セライ島の東側の海岸線との形が一致します。そのローレライの先祖はカイラマ島とセライ島が離れる前に、1つの島として住んでいた可能性があります。そして、長い年月をかけ、ローレライはカイラマ島とセライ島へと分かれ、2つがローレライの住居地となったという話を聞かされたことがあったような・・・・・・」 そこへ盗み聞きをしていたのか都合よくセルヴォイが現れ、話に加わった。 「その話は4年前に確立したんだ。おそらくヴァンスさんやガウセルも知っているはずだろう。ならば話が早い。クローヴィス、お前は初めてヴァンスさんに会った時、悪夢を見た人達の名前が挙げられたはずだ。その人達を連れて、ここに行け。」 セルヴォイは親指の爪を噛みながら地図の前へ行くと、セライ島からウォンバーを横切り、その丁度真横にある島を指差した。 「・・・・・・ドモヴォイの生息地といわれる、『ディヴァル島』だ。セライ島からの距離は約2000km、ここヴィルム島からでもウォンバー島を挟んで行っても約3400kmも遠くにある島だ。だが、相手は悪意心のドモヴォイ。もしかしたらグループを組んで、他の悪意者の種族と生活を共にしているかもしれない。このレヴェナスの様にな。」 僕は目を瞠(みは)った。そんな危険な所には行きたくもないし、聞くのも嫌だった。 「しかし、独特の『海下道』という、この世には存在しないといわれていた、「海の下にある道」がある。ここから乗り込む事もできるはずだ。その道のりは、善意者の宝庫でもあり、このラグナロク諸島で一番大きい島『ウォンバー島』の首都『ゼラニーベ』から海下道に入ることができ、そこから何らかの移動手段で、そこから約900km離れたディヴァル島首都に侵入することができる。残念ながらその首都名は不明なのだがね・・・・・・」 するとヴァンスがニヤリと微笑し、セルヴォイの意見に賛同した。 「我々もついて行く事にしよう。元々を辿(たど)ると、私が原点だからな。」 おかしい。ヴァンスの口調が微妙ではあるが変わった。何かつるんでいそうだが、そんなことは水に流してしまった。 「そうしていただくとありがたい。クローヴィス、すまないがまた家を留守にしてもらわなくてはならない。これも世界のためだ。」 僕は返事もなしにジンと部屋を出た。誰も僕を止めなかった。そして階段を2つとばかしで下り、ミルイに呼び止められたが、無視して外出した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.06.04 22:23:10
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