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未熟な作家の気まぐれファンタジー小説blog

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2007.06.30
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カテゴリ:落雷疾風記
「おいクローヴィス、どうしたんだいきなり。何かショックなことでも思い出したのか?」
ジンが心配そうに僕の肩を軽く叩いた。
「あ、ううん、いやなんでもないよ。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「ヴァンスさんの口調がディヴァル島の話になると、突然『~だな』とか、敵の陣地の話にもかかわらずなぜかにやけてたり、とにかく変だったんだ。」
ジンは膝を立てて地べたに座り込み、ベルティナの生き残りゲームの参加商品だったピアスをポケットから取り出し、耳に装着した。
「クローヴィス、このピアスにはめ込まれている物、なんだか分かるか?」
いきなりの質問に、僕は途惑(とまど)った。少し濁った様な石の様だが、ジンが何もしなくても少し揺れているので、軽い物に違いない。
「え・・・・・・精霊石か何か?」
「いや・・・・・・これは・・・・・・」
ジンは下唇を噛締め、頭を少し掻(か)いた。
「・・・・・・『歯』だ。」
僕は息詰まった。ピアスに歯を使うなんて、聞いた事も無かったからだ。
「だが安心しな。これはライトエルフやロリヤック、ラレスやニクス、ニクセの物じゃない。・・・・・・『デーモンの歯』だ。だが問題はここから。この歯を、このデーモンの歯を、あの商人がどうやってこの歯を手に入れたが問題なんだ・・・・・・。」
僕はジンの隣に座り込み話を聞き始めた。
「デーモンはフェイギル島に住んでいたといわれるが、ここ最近、どこかへ移住したか絶滅したかで姿を消したらしい。もしかしたら近くにいるかもしれないし、埋葬されたのかもしれな・・・・・・」
「ジン!エージニア渓谷に行こう!あそこなら何か手がかりがあるかもしれない!」
僕はジンの手を引っ張ると、即座に家へ戻った。
「母さん!これからちょっと用事で、エージニア渓谷まで行ってくるよ。だから父さんの馬車を・・・・・・」
ミルイは完全に拗(す)ねて、怒りを飛ばした。
「クローヴィス!さっきは呼んだのに無視するし、おまけにあの危険な谷に行ってくるですってぇ~?!」
(ジン!やばい!逃げよう!)
「いい加減にしなさい!」
怒りという銃で頭を貫かれた。これはダメージが大きい。僕達はナパイヤー家に逃(のが)れた。

「ねぇジン、夜中に行ってみないかい?」
「おいおいクローヴィス、そいつはやめといたほうがいいぜ。あそこには落とされた奴らが持っていた精霊が、晩になると現れると聞いたことがあるぞ。
今回は珍しく僕とジンとの立場が逆になっていた。
「いや、その精霊達に話してみるってのはどうだい?」
「ハァ・・・・・・言ってる意味分かるか?悪質な奴らの墓場なんだから、たいてい居ると考えれるのは変な精霊ばかりだ。ジャルースさんの精霊は『盗霊』とか言うらしいけど、あぁいう精霊は悪質な奴らばかりだ。あの精霊は偶々(たまたま)善意だったからよかったとしても、もしかしたら大切な物を盗まれるかもしれないぞ?・・・・・・『仲間』とかな。」
僕はその『仲間』という言葉が胸に残りっぱなしだった。僕はジンに断りを入れると、僕は家に戻った。もちろん、ミルイやセルヴォイにはこっ酷(ぴど)く叱られたが、これでよかったのだろう。
30分の説教後、自分の部屋に戻った僕は、机の引き出しに置いてあったデーモンの歯で作られたピアスを取り出し、それを装着した。
(そういえばヴァンスさんはどこで寝泊りをしているんだろう・・・・・・。今度会った時に聞いてみよう。)
そう思いながらピアスを弄(いじ)っていると、ドアのベルが鳴った。
「クローヴィス!いるかい?ちょっと来てくれ。」
ジンだった。僕は階段を飛び降り、外に出てドアを閉めた。
「クローヴィス、エージニア渓谷に行こう。ここからはそう遠くないはずだ。今すぐ馬車を出さないと、帰ってこれるのは明日になるかもしれないぞ。さぁ早く!」
「え・・・・・・でも馬車はどこに・・・・・・?」
「俺の家の馬車を走らせる。だから早く来い!・・・・・・あ、そうだ。そこに少し書き留めておきなよ。何も知らせずに行ったらさすがにヤバイからな。」
僕は「最低でも明日には帰ります。クローヴィス」とだけ書き、郵便受けの中に入れた。そして、ナパイヤー家の裏に走った。
裏には馬につなぐ車があった。人は車の中から精霊石を取り出し、馬型の精霊を召喚した。
「さぁクローヴィス!早く乗れ!気付かれないうちに!」
僕は馬車に駆け込むと、ジンは何も言わずに精霊に指令を出した。
精霊は音も無しに走り出すと、聞こえるのは風を切る音だけ。耳に着けたピアスが激しく揺れ、風で髪が靡(なび)く。
その時、心の底からヴァルスィンの声が。
「行けば悲しきことが起きる。私はそう感じる・・・・・・」





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Last updated  2007.06.30 21:00:42
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