シネマ歌舞伎・特別編『牡丹亭』(5/30-7/10)
シネマ歌舞伎・特別編の『牡丹亭』は、5月30日に初日を迎えました。坂東玉三郎が女形として昆劇でヒロインの杜麗娘(とれいじょう)を演じた日中合同公演の『牡丹亭』は、昨年3月に京都・南座で、5月には中国の北京で上演され、今年3月には中国の蘇州で公演が行われました。プログラムによると、蘇州は昆劇のふるさとなのだそうです。このシネマ歌舞伎『牡丹亭』は、第1部は蘇州での様子をおさめたドキュメンタリー、第2部は坂東玉三郎自らが編集に携わった舞台公演の上映です。昼の回の上映前に、玉三郎による舞台挨拶がありました。まず司会者が、初日は映画の作品のお誕生日であるという言葉でこの作品の上映を祝います。そして玉三郎が、昆劇に出演し、蘇州語での上演となった経緯について語った後、自分の役割は、過去の素晴らしい作品をお客様に届ける配達人であると語りました。お客様に見ていただかないと成り立たないということをベースに真摯に語るその姿は、常に観客を意識して舞台に立つ玉三郎の魂そのものに映ります。レスリー・チャンの言葉として映像の中で語られている内容について、正しくはコメントに詳細をいただきました。ドキュメンタリーの中で語られた言葉で忘れられないのは、「役者には華がたくさんあるけれど、同じだけ苦しみがある」という意味のもの。だからこそ、いくつもの華を持つ玉三郎は希有な存在であり、乗り越えた者だけが与えられる輝きを放っているのだと思いました。同じ時代に坂東玉三郎の作品に触れられるのは、私にとっては観る者の喜び、そして励みに感じられるのです。※映画の詳細はシネマ歌舞伎のサイトで。 シネマ歌舞伎の鑑賞は、2度目となります。 前回観たのは『ふるあめりかに袖はぬらさじ』(東劇にて)※写真にある牡丹の花は、映画の初日に開花を合わせて育てられたのだそうです。 この美しく咲く牡丹の花ひとつにも、私たちの目には見えない生産者の苦労があったのでしょう。☆和樂ムック「坂東玉三郎」~すべては舞台の美のために~小学館 役の姿、化粧法、楽屋、休暇でダイビングを楽しむ写真など掲載。 2008年1月に蘇州を訪れた時の様子も、インタビューとともに掲載されています。