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October 4, 2007
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カテゴリ:ファンタジー日記
無いってどういうこと? マダム?

ジェナはからかう時、決まってこのあだ名でダナを呼ぶ。ダナも、なんのことだよ、ムッシュ、ととぼけつつも切り返す。確かにジェナは男っぽい性格で、クアの街の多くの女性が好む編髪をせずに、面倒だからとばっさりショートカットにしている。ダナの髪型の方が女っぽい。だからまわりもこのあだ名はぴったりだと思っている。だけど2人とも他の人から言われると怒るので、みんなこのあだ名を使うのを遠慮している。

ギニがあんたにそう言われたって言ってたよ。ジェナはニヤニヤうれしそうに言った。ダナがあまりに一生懸命だったので、肝心の本がなくなったことが妙に面白いらしい。それを察して、お前、やな奴だな、と言いつつも、その言葉とは逆にうれしそうな顔で説明を始めた。

昨日、例の女の子が現れた時、異様な雰囲気に違和感を感じたけど、それは一瞬のことだった。みんなはその後ろに立っている人物に驚いた。なんと、この教会のナンバー2・・・と言うことはクアのナンバー2、ヴォスコール副司教だった。よく考えれば逃げる必要は無かったのかもしれないけど、だれもがなんとなく直感していたある予感がそうさせたのかもしれない。とにかく、あわててその場を去ってしまった。ところが、気が動転してたのできちんと本をしまってたか確かめようと、今朝一番で書庫に行ったときには本が無かったということらしい。

しかも、あんな古い本をなくしたら大変だと思って、怒られることを覚悟で書庫のインデックスを調べてもらったが、なんと、インデックスに載ってなかった。どう思う、ムッシュ? っと、意外とダナはうれしそうだ。謎が深まったことを自慢したいように今度はダナがニヤニヤうれしそうにジェナを見た。ジェナは、その顔って本当におばさんみたいだと思いながら、あの女の子が誰だかわかったのと聞くと、さらにうれしそうに、そっちもさっぱりわかんないんだよっ!と、言った。


クアの教会には、正式には正統派のひとつ、ブリツ会のクア教会ということになる。だがかなり独立的な運営をしていて、実質上クア全体の自治権を持っている。教会のトップである司教が知事の役目も兼ねる。はなにせ農業、漁業でかなり豊かなため税金も安いので、教会の運営に反対する人も少なく、それで実はずっとうまくいっている。教会ではクアのいろんな産業の質をさらによくするためにさまざまな研究機関を設けている。クアの優秀な子供たちは通例、高等学校を卒業したら大学へは行かず、この研究機関に入って勉強する。優秀なら14~5歳でも研究機関に入るので、教会内を例の少女くらいの歳の子が歩いていてもそんなに不思議じゃない。だけど、ヴォスコール副司教と一緒にいた、というのが異様だ。なぜなら研究機関にはそれぞれ所長がいて、副司教が直接研究機関にかかわることはまず無い。ということは、彼女は副司教の関係者と言うことになるけど、書庫は研究者しか入れないので、子供を書庫に連れてはいるなんてありえないこと。しかも、その直後に例の本が無くなった。ダナは例の本を見つけたことも不自然に思えてきた。その時は誰かが不精をしておいただけだと思ったけど、本は本棚の隙間に横積みされていた。

そういえば、ナロもさっき話したいことがあるといってたよ。今日もバー「パケ」に行くけど、ムッシュのご予定は?
ダナは思いもかけず謎が深まっていくのがうれしかった。





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Last updated  October 4, 2007 06:38:53 PM
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