法定帳簿(5)
平成21年改正金融商品取引法の「売出しの定義の改正」「私売出しの実務」につきましては、こちらの完全解説をご覧ください。最近、さまざまな業種の方々からご質問をいただいています。ご質問に回答すると、私自身の知識の再確認や新たな知識を吸収できますので、ご質問をいただいた方に、感謝しています。世間では、GWの開始ということで、お休みされる方も多いようです。このブログをご覧いただける方が何人いるか?とも思いますが・・・・・・さて、本題。<発行市場:続き>発行市場とは、有価証券が新たに発行されたり、権利の取得契約が新たに締結されたりする市場であることは、前回もお話した通りです。また、発行の際、有価証券や権利の取得の申込みの勧誘が行われると、募集又は私募になる、ということも詳しく説明しました。なお、「市場」と言っても「イチバ」とは違って、どこかにそのような「場所」や「スペース」があるわけではありません。慣習的に、「市場」という言葉が使われているだけですので、念のため。<募集の取扱いと私募の取扱い>「募集」と「私募」(以下「募集等」といいます。)の概念も相当わかりにくい点がありますが、さらに、「募集の取扱い」と「私募の取扱い」(以下「募集等の取扱い」といいます。)と、「取扱い」が付くと、証券会社に長年勤めている人でも理解できない方が大勢いるのが現状です。でも、「募集等」と「募集等の取扱い」の意味を正確に理解していないと、やはり、正確な法定帳簿を作成することはできません。<募集等の媒介や代理は存在しない>以前にも書いたことがありますが、「当社は、募集等の媒介をしています」という言い方をされる方が大勢いますが、「募集等」に、「媒介」も「代理」も存在しません。ここを間違えて、法定帳簿の作成に失敗していた例を実際に見たことがあります。金融商品取引法や政令、定義府令、開示府令等をすべて読破すると、この意味が自然と見えてきますが、一目でわかる方法として、金融庁が公表している政令・府令のパブリック・コメントの回答のうち、486頁の139番に対する回答をご覧ください。「募集等に係る媒介取引が行われた場合・・・」という質問に対して、金融庁は「ご質問にある募集等に係る媒介取引とはどのような行為であるかわからないが、募集等の取扱いについては・・・」と回答しています。これは、「募集等の媒介なんてありませんよ」という意味の回答です。言葉の定義の問題でしかないという側面もありますが、「売買等」は、「売り手」と「買い手」がいる双方向の取引ですが、「募集等」は、「発行者」から「投資家」に対する一方通行の行為です。双方向の取引であれば媒介はあり得るけれども、一方通行の行為に媒介はない!という考え方が、証券取引法時代からあります。法定帳簿の中には、「(媒介又は代理に係るものを除く。)」と書かれている帳簿がいくつかあります。このとき、「募集等に媒介や代理はあり得ない!」というこをしっかりと意識していないと、「当社の行為は募集等の『媒介』だから、この帳簿は作らないでよし、っと・・・」などと、間違った結論に達してしまいます。媒介や代理のときは作成する必要がない場合でも、「募集等の取扱い」の際には作らなければならない帳簿を「作らないで良い」と勘違いしてしまうおそれがありますし、実際にそのようなケースがありましたので、ご注意ください。・・・今日は、ここまで。何かわからない点がありましたら、「これでわかった!金融商品取引法/不動産の流動化・証券化編」の「お問い合わせ」から、気兼ねなく、お問い合わせください。秘密は厳守しますので、ご安心ください。<著書の紹介>新刊が好評です!金融商品取引法対応マニュアル―すぐに使えるサンプル付き!住宅新報社の編集長から「売れ行きがいい!」という連絡を受けています。ご覧いただいた方々にお礼を申し上げます。今回は、第二種金融商品取引業や投資運用業の登録に必要な書類のサンプル、各種社内規程のサンプル、特定投資家制度や広告等の規制対応のための書面のサンプルなどを、説明つきで、紹介しています。「不動産の証券化と金融商品取引法」の関係について書かれた本は既に何冊か発行されていますが、今回の本は、これまでに出版されてきた本と違い、「じゃあ、何をすればよいのか?」ということを、サンプル付きで、具体的に説明しています「研究者」のための本ではなく、「実務家」のための本にしました。不動産信託受益権や不動産の証券化を中心にしていますので、住宅新報社から出版しましたが、第二種金融商品取引業や投資運用業を行う会社であれば、投資対象が不動産でなくても、使用できるように工夫しています。ぜひ一度、ご覧ください。金融商品取引法の基本がよくわかる本金融商品取引法の基本のすべてを一冊にまとめた本です。金融商品取引法が、図解付きで簡単にわかる!がコンセプトです。持ち運びに便利なコンパクトサイズ!金融商品取引法の基本を完全に網羅した図解付きの本は、この本の他にはありません。募集や私募など開示規制、広告規制など業者規制、インサイダー取引など不公正取引規制のすべてをやさしくまとめています。既に第2刷になり、在庫も少なくなっていると聞いていますが、ぜひ一度、ご覧になってみてください。----------不動産信託受益権の売買や不動産の流動化・証券化に関係のある会社の方は、不動産の流動化・証券化と金融商品取引法の関係をイラスト入りで詳細に紹介しているホームページ「これでわかった!金融商品取引法/不動産の流動化・証券化編」を、ぜひ、ご覧ください。既に出版されている他の本の内容とは違う、実務にそった説明を試みていますので、実務担当者の方は必見です。金融商品取引法の全体を知りたい方や、お仕事の都合で知らなければならない方は、ホームページ「これでわかった!金融商品取引法/総合情報編」をご覧ください。----------