映画を観て強く印象に残ったのは
人間的な、あまりに人間的なヒトラーの姿だった。
『ヒトラー ~最期の12日間』を観て。
画学生時代の貧困と敗北感、
あるいは第一次世界大戦に参戦して敗戦した時の屈辱とトラウマによるルサンチマン。
屈服する屈辱よりは死、と滅びへの志向さえ口にする一部の部下たちへの
影響力、
当時のドイツ人が共有していたと思われる歴史観から来るヒトラーの抱えるルサンチマンへの共感や
それによるヒトラーとの心理的な結びつきが
少しずつ人間の心の弱さを照射していく。
同情を否定する、とニーチェのような思想を口にしながら
映画のヒトラーは不安で手がふるえ
だんだん蒼ざめていく顔が哀れで
人間としての弱さを露呈している。
弱さゆえの強すぎる自尊心と憎しみは
相手に対して攻撃的になることもあれば
自分にはね返って判断を狂わせ、混乱していく人間性も描かれる。
人間がつくる歴史、人間が起こす戦争が
いつの間にか人間の手を離れ
手に負えないものになっている感もあった。
だからといって、人間は無力で無垢で無実ではいられない。
トラウドゥル・ユンゲが言うように
「若かったからというのは、言い訳にすぎない。いくら若くても目を見開いて周りを見ていれば、気づくことができたのだ」から。
直接関わらなかった、知らなかったという立場の表明も免罪符にはならない。
ペーターとトラウドゥルが最後に故郷をめざしていく場面は
少しだけ生きる希望、人間性への希望が感じられる。
ナチス内部の滅びと死への志向と対照的な生きようとする意志。
戦争の罪は罪として
人間的な、雑草のような個々の生が
生きようとする力。
権力者が理想と現実の乖離に絶望して
死ばかり望むのと対照的な2つの人間の側面。
どちらも人間の顔、人間的あまりにも人間的な映画。
人間の2つの相を見せられて...
John Donneの詩を想起した。
(excerpt from
Meditation XVII)
'No man is an island, entire of itself;
every man is a piece of the continent, a part of the main.
・・・・・・
any man's death diminishes me, because I am involved in mankind,
and therefore never send to know for whom the bell tolls;
it tolls for thee.'
映画に現れる
正と負の人間性は
どちらも人類が共有する人間性とかけ離れたものではなく...
生への意志も死への志向も戦時下の人間からは等距離で
あまりに人間的な普遍性が感じられる。
ブルーノ・ガンツが『ブラジルから来た少年』にも出演していたとは...
黒髪碧眼のクローン作りを扱った映画だった。
to be continued...!?
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