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テーマ:韓国!(16903)
カテゴリ:映画
前作『ハウスメイド』を引き継ぎ
合わせ鏡のようにして 人間を世界を描き出すイム・サンス監督『蜜の味~テイスト オブ マネー~』。 『ハウスメイド』と双子のような作品だった。 原題は『돈의 맛/金の味/The Taste of Money』、2012年カンヌ国際映画祭コンペティション出品作。 あらすじ 財閥家ユン会長(ペク・ユンシク)とその妻クモク(ユン・ヨジョン)、 長女のナミ(キム・ヒョジン)一家は韓国内有数の最上流階級。 ユン会長に10年仕える秘書ヨンジャク(キム・ガンウ)は ユン会長に「金の味を味わってみろ」と誘いをかけられても まだ積極的に金の味を試そうとはしない。 今日もユン会長の息子チョル(オン・ジュワン)への嫌疑を払拭させる付け届けのため ヨンジャクはスーツケースに黙々と金を詰めているが... 前作『ハウスメイド』の最後のシーンを 2010~2011年記の拙文から。 --------------------------------------------------- ナミは視線をゆっくり泳がせる。 そして カメラのフレームの外に視線を投げた。 フレームの外に投げかけられた視線から 現世から逸らされた彼岸への意識(痛ましい最期だったウニへの思いかもしれない) 映画のストーリーから外へはみ出した さらにリアルなナミの心情を想像させ... 世界を重層化し 不安を掻き立てるような最後のシーンだった。 この少女は ウニ(チョン・ドヨン)の最期のシーンがまだ脳裡に浮かんでいるのではないか、 子どもならではの感受性と鋭敏さで もしや叫びの木霊(こだま)が心中鳴りやまないのではないか、 といろいろ想像させ不安定な気持ちになる。 --------------------------------------------------- フレームの外に出た少女の視線は この物語が終わっていないことを告げていた。 この物語がフレームの外で続くこと、続いていることを知らせていた。 この世にお金があるかぎり、資本主義経済が続く限り おなじ世界は続き、物語は終わらないから。 そして... 『蜜の味』は『ハウスメイド』のナミが成長して ナミの周りの人々、ナミが見ている世界を描いているかのように進行する。 登場する「下女」はさらに増えている。 ナミの父であるユン会長は金に隷属する、資産のある夫人に隷属する「下女」であり、 ヨンジャクは「下女」のように働く財閥企業の秘書、室長であるが労働者、サラリーマンにすぎない。 さらに多くの、セリフもない下女たちがユン家で働き、 フィリピン人メイドのエヴァ、 ノ秘書(ファン・ジョンミン)も登場する。 多くの下女・ハウスメイド・労働者階級がいる構図。 (余談ですが、前作『ハウスメイド』にカメオ出演したファン・ジョンミンは男性俳優で ノ秘書役は『ミンク・コート/Jesus Hospital』等に出演した同姓同名の演技派女優。 そんなところからも 『ハウスメイド』と『蜜の味』が合わせ鏡のように感じられもします) (以下、物語の核心に触れる部分もございます) 『蜜の味』冒頭 ヨンジャクが金庫からお金を出して 高層エレベーターからソウルを見下ろすシーン。 『ハウスメイド』冒頭、 ソウルの繁華街で 女(チョン・ドヨン)が飛び降りようとする時に目に映るソウル、視界と呼応する。 ハウスメイド・ウニは自殺をはかり、 「下女」のひとりユン会長も自殺をはかり 「下女」のひとりエヴァと もうひとりの「下女」ヨンジャクは命を狙われる。 そんな『ハウスメイド』からの連続性、延長・延伸性から 双子のような映画にも思えた。 クモクの父ノ会長が「たわけもの!」と(いった内容の)日本語を話して 現代の最上流階級である李王朝(サムソン帝国は「李王朝」とも呼ばれる)等 日本統治時代や戦後に日本とも縁が深そうだった財閥だけではなく、 韓国の政界をも想起させ連想させ興味深かった。 (深読みかもしれないが) 最上流階級の家庭のテレビが ナムジュン・パイクが50年前にビデオ・アートでつかったような古いテレビで、 古びたテレビが現役でリビングの中央に鎮座しているのは 恐らく、 古く老いた物、即ち財閥創業者ノ会長の権力が未だ及んでいることを暗喩している。 古い物老いた者が亡霊のように今猶現代に君臨し支配する社会構造を象徴している。 前半も窓等に映る、反映するヨンジャクの姿があったが 後半特にヨンジャクの自室の姿見に自身の姿を映すシーンが多い。 ヨンジャクもユン会長のように 誘惑には抗えず金に捕われてしまうのか... 鏡に映る自身を反芻しつつも 結局は変わってしまうようにも見える。 ただ、上半身裸の姿は 衣服という仮面のない原始であり、真の姿のよう。 金の味を知って(階級的にも)上昇し 金に捕われ堕落しそうだが、堕ちそうで堕ちない。 まだ地上的で、労働者階級的な地に足のついた逞しさを見せている。 この印象はエンディングまで続く。 階級社会を描きつつ フィリピン人のメイドが加わることで 母子家庭のフィリピン人メイドの子どもたち家庭も巻き込み 視野が韓国の現代社会階級社会や現代史から 世界へ拡がっている。 韓国内の階級社会・階級問題が グローバル化経済の現代において 他国とも階級社会的問題を生み出し 他国の労働者が入り乱れる現代社会に切り込んで描写して 外国人をも巻き込んだ階級問題、 世界的な階級社会と、地平を世界に広げている。 『ハウスメイド』からの連続、延長でありながら 上流階級のスケールは大きくなり、 視野軸がグローバルに拡がってより現代的今日的問題提起を孕んでいる。 外国人労働者の問題はすでに ユン・イノ『バリケード』等でも描かれているけれど... 階級社会、上昇志向といった上流社会・財閥を取り巻く求心力、その強さ、 上昇しようとする階層との垂直な関わりと対比して 巻き込まれる人間が外国人にまで及んでいるという地平の広がりを見せる。 キム・ギヨン『下女』や イム・サンス『ハウスメイド』と変わらず階級間、階層、階級社会を見せる一方 フィリピンからの出稼ぎメイド、エヴァ、 ナミの娘の世話をする中国人(朝鮮族)の乳母(画面には登場せず言及されるのみ)、と国際的な拡がりを見せる。 より多様な「下女」たちが登場し 下女階級が上流階級とは上下に垂直にY軸で軋轢し、 また下女階級の中では 外国人労働者という横の広がりX軸で複雑に相関し、作用し合う曼荼羅のような世界。 エンディング、オチは 『波瀾万丈』的!?パク・チャヌクっぽいユーモア(ブラック・ユーモア)を感じさせる雰囲気。 ファンタジックにも取れるが エヴァの、あるいは下女・労働者階級の生命力を感じさせて希望が感じられる。 ほのかな希望のある余韻を残す。 イム・サンス監督は 『浮気な家族』から 『なつかしの庭』から 社会派なまなざし、階級社会への切り込みがあって 『ハウスメイド』や今作も そのまなざしは保たれたまま。 今作はそんなまなざしをMise-en-scene(=placing on stage)/ミジャンセンを通して呈示、 階級社会、現代の社会構造をMise-en-sceneミジャンセンでくるんで、 コーティングしてつむぎ出している。 撮影監督は『レイト・オータム/晩秋』等のキム・ウヒョン。 2012年は日中韓合作ドラマ「Strangers 6」で活きのいい女性を演じたキム・ヒョジンが 今回もさばさばしていて素敵だった。 韓国ではたらくフィリピンの人々が集うカトリック教会で 涙を流しながら祈るエヴァの涙にもらい泣き。心揺さぶられる姿。 エヴァといい、ナミといい、心のきれいな女たち、 いい女が二人出ている映画でもある^^ 映画の中で引用された映画・映像はキム・ギヨン『下女』 イム・サンス『ハウスメイド』 そして流れて行くエンド・クレジットを速読したところ 『The War Waged by You and I』も。 最後の作品についてはまだくわしく調べていないので なにかわかったら更新します! (イム・サンス監督のメアドが変わっていなければ 直接メールで質問したい...) to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2024 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 26, 2023 11:50:40 PM
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