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テーマ:韓国!(16984)
カテゴリ:映画
『あなたは私のバンパイア/그댄 나의 뱀파이어』で
ヒロインの母親が年下のバングラデシュ人と熱愛したり、 『親愛なる指導者同志へ』では北朝鮮スパイが タルトンネに暮らす韓国の子どもたちの悲惨な暮らしをビデオカメラにおさめたり... 異邦人の視線、視点が加味されている映画も 全州にいくつか登場していた。 シン・ウニ/신은희監督短編ドキュメンタリー 『アラム/알럼/J. Alam』(2014年)は 1997年に韓国に来たバングラデシュ人アラムの語りにより 外国人労働者の視点、視線を伝える。 韓国で16年暮らし家具工場で働くアラムの話は 外国人労働者を描いた過去の韓国映画、ドキュメンタリー等と若干趣が異なる。 悲惨な労働環境、苦しむ外国人労働者、のイメージはほとんどない。 流ちょうな韓国語を話しながら 「韓国人は上だけを見て生きている」とクールに韓国社会も観察。 一方で韓国の詩人イ・ソンボク「口のないことごと」の詩と 母国の詩人Humayan Azadの詩を朗読する。 ふたつの国の間、 ふたつの国の言葉の間で生きるように ふたつの国の詩人の詩を愛し朗読するアラム。 韓国語でもさまざまなことを考えたり、感じたりしているのだろう (当たり前のことだが...) と感じさせる外国人労働者の感受性が清々しく、 従来の描写とは異なる方向性と繊細さ、奥行きも感じられた。 ただ、母国の詩人の詩を詠むときは少しさびしそうだった。 一緒に働いていた故郷の友人たちは 今は帰国しているからさみしいとも語っていた。 そんな異国での孤独感 異邦人の視線、視点がじわりと沁み渡る。 異国への関心や適応と 望郷の思い。 韓国を離れ異国に暮らす韓国人等にも共通する思いが 外国人労働者の視点から描かれ 普遍性を伝えて胸を打つ。 韓国で外国人労働者、移民らの交流お祭りも組織するアラムだからこそ、 の視点もあるが知的で詩的な視点が余韻を残す。 キム・ギドク監督『春夏秋冬そして春』が美しくてすばらしい、 と語るアラムなので、詩的な感受性が強い方なのかもしれない... キム・ユリ監督短編『あのドアはいつから開いていたの?/ 저 문은 언제부터 열려있었던 거지?/ How Long Has That Door Been Open?』(2014年)も よそ者の視線を伝える。 ファッション・デザイナーになる夢をかなえるため ようやく就職したファッション関係企業の仕事のため、 首都圏から地方にひとり引っ越したウンジュ。 ホームを離れアウェイ感満載の職場では 職場の人たち、地方の人たちの感覚について行かれず 途方に暮れることもしばしば。 未だなじめないよそ者の孤独を抱えながら 遠距離になってしまった彼氏にもその辛さを率直に伝えられない、 我慢強い彼女の心象風景が繊細に描かれる。 あのドアはいつから開いていたの?は 彼女の部屋の洗面所のドアが 閉めたはずなのにいつでも少し開いていることを指す。 それはしばしば彼女の視界にも入っている。 彼女は立ち上がって ドアをまた閉めれば済むと思っている。 恐らく、現状を我慢し続けるよそ者の孤独感は 彼女の意識下で限界に来ていて もうあふれ出しそうなのに ドアを少し開けてしまって溢れそうなのに 彼女は見て見ぬふりをしている。 少しだけ開いているドアが喚起するかのような、 彼女の状態、限界かも...という状態は 彼女自身直視し向き合わなければならないはずなのに 夢のためにその現実から目をそらしている。 ドアはまた閉めればいい、心の叫びには蓋をすればいい、という対応になっているかのよう。 デザイナーになるため、 もう少し、夢のためにもう少し、と自分に言い聞かせながらがまんしている。 (実際はファッション企業で経理事務の職にようやくついただけなのだが デザイナーへの職種転換を待とうとしている) 建てつけの悪いドアが 閉めても何度も少し開いてしまうのは 彼女にその見て見ぬふりをやめさせよう、現実を気づかせよう、 辛さや孤独感、心の叫びに向き合わせようと 知らせようとしている、本心からのシグナルのようだった。 夢と現実との折り合いがまだつかない、 彼女の葛藤や弱った心が 洗面所の少し開いたドア、という象徴的な表現、描写に なっているのが印象的。 サミュエル・ベケット、 ドアはわからないくらいに開いている...も想起。 全州国際映画祭韓国短編コンペティション大賞受賞作。 (その他の短編受賞作はこちら) ジョン・イルゴン監督ドキュメンタリー 『雲の橋/구름다리/The Cloudy Bridge』(2014年)は 私たちがよく知らない、韓国のホームレスの姿を伝える作品。 韓国人同士でも 韓国人もよく知らないであろう、 ソウル駅近辺のホームレスの日常の姿を含め 数字、データでも実情を伝える力作。 じっくり取材していることが伺える。 ソウル駅には「雲の橋」と呼ばれる空中歩道、通路があり そこにホームレスが野宿していたそう。 タイトルはそこから取られている。 ホームレスの自立支援相談所での会話など 職員がホームレスに「ソンセンニム(先生)」と 呼びかけているのが印象的(日本の現状と比較して観てしまう)。 また、ホームレスのひとりが 映画『牛の鈴音』が好き、と言っていたのが心に残る。 韓国のよそ者が語る、好きな韓国映画から 彼らの孤独、家庭や家族愛への希求も伝わるような気がして... 明洞で一生懸命段ボール箱を集め働くホームレスの姿も 心に残った。 もしかしたら見かけていたのに 見ていなかったのかも、 見ようとしていなかったのかも... 見えない存在としていたのかも... 「上を見て生きている」韓国社会の 下方を見れば、 時に見えなくなっていた、見ようとしていなかった、 見えない存在である外国人労働者やホームレス、 仕事のためにあえてホームを離れてアウェイに行く若者 (若者の就職の困難さ、夢をかなえることの困難さも想起)が視界に入る。 さまざまなよそ者、異邦人たちが抱える孤独にさみしさ、 不安などが伝わる映画たちだった。 to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2024 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、写真・画像等も コピー・利用・流用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 22, 2023 02:21:42 AM
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