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テーマ:韓国!(16903)
カテゴリ:映画
朝鮮半島の伝統芸能パンソリが
まだ女性に門戸が開かれていなかった19世紀、朝鮮王朝末期。 母を失った少女チン・チェソン(ぺ・スジ)は 偶然聴いた桐里精舎シン・ジェヒョ(リュ・スンニョン)のパンソリ に勇気づけられソリクン 소리꾼(唄い手)を目指すことになるが... 実在した女性初のパンソリ唄い手チェソン 陳彩仙と ジェヒョ 申在孝のつながりを描いた イ・ジョンピル監督『花、香る歌 도리화가(桃李花歌) The Sound Of A Flower』(2015年) ソン・セビョクも実在のキム・セジョン役、 「応答せよ 1988 응답하라 1988」で人気のアン・ジェホン、イ・ドンフィ キム・ナムギル(興宣大院君役)、チン・ヒギョンら共演。 (以下、映画の核心に触れる部分もございます) チェソンのBildungsroman 成長譚でありながら パンソリの特訓を受けたmissA スジの声の出し方、歌い方も 少しずつ変わってくる...スジ成長記を観る趣も。 パンソリを代表する「春香傳/春香歌」と「沈清傳/沈清歌」 の視点がストーリー展開に合わせて映画に加わり、 パンソリと並走しながら映画の視点が変わって行く演出が印象的。 それは前半、男装して桐里精舎門下生となったチェソンが聴いた、 「パンソリには辞説 사설を理解する力が肝要。 真意を知らずして語るなかれ」というジェヒョの教えとも呼応し 共鳴する。 師(父代わりのよう)を思う心を知ってこそ 「沈清傳/沈清歌」の理解は増し、 恋心が生まれてこそ「春香傳/春香歌」のチュニャンの哀切を 歌い上げることが出来るから。 師を救おうと歌い (船の舳ならぬ)水上の舞台から水中に飛び込むチェソンはまさに沈清を体現し 身をもって孝を表現し、 愛しき人を歌うチェソンは夢龍を一途に恋慕する春香そのものだった。 芸術作品・芸能の登場人物に主人公が一体となり憑依もするような描写は 芸の世界を描いた映画の定石だが... 後半、牢の中のジェヒョが今度は 春香のように待つ人にも見え... 冒頭から何度もつぶやくように歌われていた 「春香傳/春香歌」の 쑥대머리 귀신형용...がリアルな重みも持ち始める。 少々メロドラマ風な演出もあったが... 行首/ヘンス(チン・ヒギョン)が一言もセリフを発せず 表情の演技だけで感情を表した、時代劇らしい寡黙な演出も。 その時代、言葉で直接愛を伝えられず詩で心を贈る、 「春香傳/春香歌」の春香と夢龍のように古風なふたりの交感も印象的。 チェソンの肌の質感の変化は 少女から恋する乙女、大人の女性への変化も表して 『建築学概論』を少々想起も。 素朴で古風な姿、描写の一方で パンソリのノルムセ(身振り)のように 本心をひた隠す慎重な興宣大院君の近代的自我と現代的保身などは 19世紀末らしく、 鎖国中とはいえ徐々に近代化していく、近代的精神も入り混じる時代が感じられもした。 また、興宣大院君が無理に推進した景福宮再建に 動員された庶民を慰労するため 慶会楼でチェソンに歌わせるシーンも 政治家の発想が現代的、現代と地続きで興味深かった。 そのシーンで 聴衆の庶民に交じった桐里精舎門下生たちが チェソンのソリ(声)に合わせて 「分唄」するシーンは 「思いきり泣けば笑える」パンソリのカタルシスを 個人、ただ一人の体験にとどまらせず 連帯や共同のカタルシスに広げた現代的な普遍性も感じさせて心に残る。 「思いきり泣けば笑える」パンソリのカタルシスが 庶民の「声」を集めて響かせる、共有によるもの、という余韻も。 伝統芸能史としては 今なお男性しか関わることが出来ない 日本の歌舞伎、能楽、文楽(どれも中学1年生頃から観劇を始めて 好きな芸能ではあるけれど...)等と対比して... 世紀末の朝鮮半島の「芸能」に大きな革命を起こした陳彩仙という人物がいた、 彼女を発見した、という喜びが余韻を残す。 本当に偉大なことではあるが... 映画はそのあたりの重要性はあまり強調していない趣 (悲劇的ロマンスな展開になって少々残念)。 チェソンが女流初のパンソリ唄い手になったからこそ、 「春香傳」の春香の心理は女性の声により 男性の唄い手では理解・解釈も表現等も不足もあった部分が あますところなく伝えられ伝わるようになった... 日本の伝統芸能の現状を思い合わせると かなり重要な変化、変革をチェソンはもたらした! パンソリの表現力、音・響きも声の表現や役の理解と描写も広げたのが 女性であるチェソン。 映画を観ながらその発見にExcitedしていた。 「仮名手本忠臣蔵」おかるの声 「心中天網島」小春の声は 今なお男性のままなのだから... 余談ですが 2NE1 MINZY ミンジの祖母コン・オクチンは パンソリをふまえた一人唱舞劇の舞踊家。 チェソンがいなかったら... 現代の(女流)名唄たちもいなかったかもしれない、聴けなかったかもしれない... とあらためて思うが... 映画は偉人伝ではなく 厳しい時代が生んだ、切ないラブストーリーだった。 最後に... やっぱり、ソリ 소리について。 時々聴きに行ったパンソリ 판소리 公演を思い返したり... ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い 대장금」(2003年)OST 「オナラ 오나라」を歌った 김지현、백보현、김슬기3人のパンソリ少女の一人は (当時のドキュメンタリーでは滝に向かって歌うシーンも) チョ・ジョンネ監督『トゥレソリ 두레소리』(2011年)の 韓国国立伝統芸術高等学校の合唱団「トゥレソリ」メンバーの一人、 パンソリ無形文化財の祖母を持つ、パンソリ一族の孫娘キム・スルギで... そして 2010年頃から話題の国楽少女ソン・ソヒの声も思い出すと (デビュー時からmissAファンだけれど)スジの声は少々物足りなかった。 チェソンが歌い上げるクライマックスで パンソリにOST音楽が重ねられてしまうのも少々残念。 興宣大院君 흥선대원군 が晩年を過ごした雲峴宮。 to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2025 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察、解説 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用・盗用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、 リライト、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 21, 2024 03:41:50 PM
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