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テーマ:韓国!(16903)
カテゴリ:映画
イ・サン(正祖)の父思悼世子と
その父英祖との葛藤をイ・ジュニク監督が描く。 英祖(ソン・ガンホ) 思悼世子(ユ・アイン) 恵慶宮(ムン・グニョン) 仁元/イノン王后(キム・ヘスク) 映嬪(チョン・ヘジン) イ・サン正祖(ソ・ジソプ) パク・ウォンサン、チョ・スンヨン イ・デヨン、チェ・ドンムン チン・ジヒ、パク・ミョンシン ソ・イェジ、パク・ソダムほか共演、 イ・ジュニク監督 『王の運命 -歴史を変えた八日間- 사도(原題:思悼)The Throne』(2015年) (以下、映画の核心に触れる部分もございます) 権力基盤の確保や権力維持と緊密に結びついた 父系制、父系社会との対立や葛藤、 現代社会にも連なる父性的権威もしくは親世代への 反発とアンチテーゼが描出される一方、 (宮中における、女性のヒエラルキーによる弱弱しさもあるが...) それに対抗する母性も描かれている。 特に キム・ヘスク演じる仁元王后(惠順大王大妃 혜순대왕대비)が 英祖を一蹴する姿には(一瞬だが)カタルシスと救いがあった。 それでも物語は 父性対母性としては収拾、回収されず あくまで父からの視点、息子からの視点を 交差させ絡ませ一幅の織物を織るように 父対子で続いていくのだけれど。 しかし 映画の中の壬午士禍は 老論派対少論派や そのような父子間の対立だけにとどまらなかった。 幼かったイ・サン正祖への影響も大きく 血の通わない父子関係を間近に見たサンについにこう言わしめる。 人間が国法礼節の上ではないのか。 父の心を見た、と。 イ・ジュニク監督のインタビュー 「父がある業を行うと それによって子どもが徳を積みその徳を施すことによって 孫が福を得るという考え方があります。 『王の運命』では英祖が息子を殺してしまうという業を行い、 それを受けた息子の思悼は我が子である正祖に対して、心の徳を与えた。 その徳によって正祖は福を得て、聖君になることができた。 …これがいわゆる正反合です」が腑に落ちる。 そこは賢君、聖君誕生の瞬間であると同時に、 イ監督が話す通り 父子間の確執・対立を乗り越え超えた 三代目三人目イ・サンによる転換、正反合 These-Antithese-Synthese 定立・反定立・総合が生まれてもいる。 憎しみや不寛容、無理解や疎外を超えた 第3の視点がイ・サンによってもたらされ、 地平が開かれたというカタルシス。 執政として改革をも試みる思悼世子の姿、 芸術と武芸を愛した姿 父との対立関係が続くうちに 心が壊れていく姿、 自らをかばってくれたイノン王后を追慕し 極楽浄土を一心不乱に希う姿等、 この世とあの世を行き交うように 揺れ、揺さぶられていく世子の姿には同情と涙をおさえることができなかった。 一方で、崇儒廃仏の王朝で 亡くなったイノン王后のためとはいえ 巫堂と仏教が入り混じったような 詞が念仏(南阿弥陀仏)のクッ、打令を響き渡らせ つくづく破格、跡継ぎとしては自由奔放過ぎ規格外だった、という感慨も。 親子の情よりも 国是としての学問/勉学と礼節に重きを置く 維持すべきシステムとしての王朝から弾き出され疎外された世子の姿を通し 地に落ちた人間味と人間的視点を「父の心」として掬い上げ投げかける イ・サンの言葉と、悲しみを秘めた舞の中には 血の通う国政や宮中、人間らしさの可能性という希望の余韻を残してもいた。 それは二つの価値観間の分断や断絶を超え 複眼的重層的かつ未来志向の余韻も響かせ 韓国の現在地に反響もして普遍的。 親世代子世代間の対立、不通、断絶は 前回の大統領選挙の頃から激しく見られるような感触もあったけれど... (必ずしも親世代=保守ではないが、 映画監督や作家など一部のクリエイター以外は あまりリベラルではないように見えた親世代) 政治的志向が相違し、ひとつの家庭の中で政治的に対立もしかねない 親世代と子世代をどうにかして結びつけようとする気配もあった作品は 『国際市場』や 舞台『いくつかの方式の会話 The Conversations』など。 『王の運命』はその趣も。 また、 『黄山ヶ原』『平壌城』シリーズを髣髴とさせる、 三者による「正反合」や三つ巴、三位一体な感慨も... 『王の男』の芸能者たちの悲哀 『黄山ヶ原』『平壌城』シリーズの庶民の悲喜こもごもとした生に あらわれるユーモア、 『雲を抜けた月のように』の情けない王... イ監督は史劇、時代劇も多く手がけ それぞれ異なる演出の映画だったが... 通底しているのは、半島の伝統芸能・仮面劇等のような 批判精神に反権力を湛えた視点。 映画監督も広大(クァンデ)的「河原者/河原乞食」として自認しているのかどうか... 朝鮮王朝時代のアウトロー的芸能者、 広大/광대(別名:화랑/花郎、재인/才人、우인/優人)にも 通じる監督のまなざし、視線も印象的。 2014年頃から流行語として人口に膾炙もした「義理」という言葉が 映画の中では、英祖の政治的駆け引きの煙幕のような意味として 使われているのも興味深い。 字幕は仁義となっていたが 調和を説く裏で老論(ノロン)派と交渉し密約めいた口約束もし 権力を確保した英祖が 世孫の前に押し出す「義理」という言葉の裏からは 孫にも沈黙を強いようとする圧力、 「調和」の仮面を被った高圧的強硬な王権、 表面的調和を保つ権力欲という飽くなき欲望、利己心の強さも伝わって印象的。 これが「義理」とは... ヒョンビン主演『王の涙 ー イ・サンの決断- 역린逆鱗 The Fatal Encounter』(2014年)で正祖が着用した白い王服とは また異なる黄みがかったエクリュの色合い、 どこか喪服の色の風情も漂わせた衣装(展示より。写真の撮影は許可されています)。 ドラマつれづれ。「イ・サン」など ソン・ジュンギがイ・サンの腹心チョン・ヤギョン キム・ゴウンとパク・ソダムの区別の仕方は...д・) to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2024 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察、解説 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、 リライト、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 12, 2023 11:49:50 PM
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