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カテゴリ:映画
『マネー・ショート 華麗なる大逆転 The Big Short』の
アダム・マッケイ監督が今度はブッシュ政権副大統領 ディック・チェイニーを描いた。 主演はクリスチャン・ベール 『バイス VICE』 妻リン役はエイミー・アダムス。 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』にも出演したスティーヴ・カレルが ラムズフェルド国防相役。同作に出演したブラッド・ピットは今回 Plan B として製作者側に。 ジョージ・W・ブッシュ大統領役はサム・ロックウェル、 パウエル国務長官役はタイラー・ペリー。 伝記として観ることはなかなか困難。 というのも、ディックにも内面的な転換点はあったろうと 思わせる場面がいくつかあるが、本人からも語られていないのか 深く突き詰められていない。 例えば、1963年頃イェール大学退学後 故郷で電気工事のような仕事をしているディックの目の前で 墜落した(恐らく日雇いの)年上の労働者は 5ドル渡され町まで送られた後に用無しとばかりに放免され 代わりはいくらでもいる「人材」。 その時、歴代の偉人的アメリカ大統領もしくは政治家なら このような労働者に身分と生活の保障を!と考えるきっかけ そのために政界に入る動機にもなり得るのだろうが... 恐らくチェイニーは自分は「代わりのきく」人材にならなければよい、 のしあがって自分さえよければ、という思いしか抱かなさそうだった (明示的に描写はされていないが)。 前五輪担当相が(本人の自伝的PRマンガによると)のし上がりたい、と 上昇することだけが目的で 政治家になって人助けをする、生きやすい社会にするなどの 志や目的を欠いた人間がただ「上昇」してしまうのと...相似形。 戦争を始める口実(WMD)をでっち上げ イラクやアフガニスタンを破壊しイスラム国が組織されるきっかけを作っても 映画の最後で「後悔しない」と悪びれる様子もない。 カンボジア爆撃に際し、理念は?とラムズフェルドに問うた時はまだ ナイーブで多少は良心を持ち合わせていたのかもしれないが... エンドクレジットに映し出される疑似餌 ルアーの中には 何かに似ている、国や地域に似ているように見えるものもあって 釣り好きなチェイニーが使った疑似餌(WMD)から得たものへ変貌するアニメーション のようにも思えた。 語りのフレームは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』同様 イマジナリー・ラインを越えて観客に語り掛ける人物もいて インタラクティブで破天荒、やや散漫な印象も。 伝記的でありつつ 十分な伝記ではないが、それでも(周知の事実だが) イラクを攻撃する口実作り「悪だくみ」に関わった人間たちの群像劇が 再現ドラマのように、時にシェイクスピアのように浮かび上がる。 再現ドラマ的と言うのは、監督が以前はSNLを作っていて そこには最近はアレック・ボールドウィンがトランプ大統領役で出ているが (『ブラック・クランズマン』冒頭の Dr. Kennebrew Beauregard ボールドウィンを観て SNLのボールドウィン=トランプを思い浮かべた)。 SNL的なフォーマットも思わせるから。 それと比べると 『記者たち 衝撃と畏怖の真実 Shock and Awe』で 同じ頃WMD はなかったことを証明、報道しようとして同業者からも孤立無援 そこで吐露された記者の思い、 真実や事実とは関係なく売れるニュースが主流になり 真実を伝えようとしたナイト・リッダー Knight Ridder 紙が なぜ孤立する!?という記者たちからの叫びは もっとアイデンティティと一体で、地を這うように切実(;_;) ジョナサン・ランデイ Jonathan Landay 役はウディ・ハレルソン ウォーレン・ストローベル Warren Strobel 役はジェームズ・マースデン。 アレック・ボールドウィンの代わりに ロブ・ライナー監督自身がジョン・ウォルコット John Walcott 役 ジョー・ギャロウェイ Joe Galloway 役はトミー・リー・ジョーンズ。 ペンで剣に勝つため、電話をかけ続け トップからではなくボトムから、軍人や職員、スタッフらから情報を収集する 手法が興味深かった。 終わり方は若干あっけなかったものの。 ジョナサンの妻ヴラトカ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が 「ユーゴスラビアでは愛国が国をバラバラに」と言った時 「戦争広告代理店」をちょっと思い出した。 『バイス』と『記者たち』両者を合わせて観るタイミングでよかった。 外連味とナイーブな苦さが相互に補完する。 余談だが、両映画に登場した韓国人についても少々注目してしまった。 『記者たち』の中でイラク攻撃、イラクへの派兵に反対し抗議する国内外(約)3か所の 人々の姿が当時の映像で流れる。 その映像の3番目はソウルのようだった。 韓国語で戦争に反対するプラカードを掲げた人たちが一瞬映った。 調べてみると当時光化門近くに集まって戦争反対を叫ぶ人々の動画が残っていた。 ろうそく革命前にも、折にふれ民主的に行動していたのかという感慨。 その頃日本はどうだっただろうか。 日本政府自体イラクへの攻撃には反対していなかったし 日本の市民も韓国ほどは声を上げていなかったのではないか。 一方、チェイニーの弁護士デビッド・アディントン David Addington 法律諮問室 OCL の法務副次官補(?)ジョン・ユー 陪席裁判官アントニン・スカリア Antonin Scalia の3人を中心に 対テロ戦争、Unitary Executive Theory を後押し。 但し、決定的でお墨付き(に見える)セリフは映画の中では 韓国系アメリカ人のユーが言っている。 そうして、パンドラの箱イラクを開けるようなことになっていたのだ。 アフリカ系アメリカ人が主人公の映画を多く製作している タイラー・ペリー Tyler Perry (『怪しい彼女』アメリカ版製作予定)が 何だか白人に押し付けられるように国連でWMD はある、と演説するまでを パウエルを演じるのを見るのは複雑で胸が痛む気持ち。 後に、パウエルはこの演説を人生の汚点で苦痛(意訳)であると語っている。 ブッシュ政権で御用法学者的立ち位置のアジア系アメリカ人にも 本人は共和党支持者だったが 同様のニュアンスを感じた。 マイノリティには利用価値があり、利用されてしまうのか...と。 『記者たち』でも、愛国心を煽られイラク戦争に駆り出された 車椅子姿の若いアフリカ系アメリカ人アダムが上院退役軍人問題委員会の前で 準備した原稿を読み上げる代わりに 数字を、データを羅列したのは 間違った情報(チェイニー、ラムズフェルドらが主導)で始められた 戦争の被害、その責任を問う意図も言外ににじませているのは明らか。 映画の本筋とは別に、イラク戦争が露わにした米国の虚仮威しに暗澹たる思いも。 to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2024 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 23, 2023 09:12:41 PM
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