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テーマ:日記(2516)
カテゴリ:雑談
外見は優しそうなんです。 親戚のおばあちゃんに会ったときなんかも、 「やさしい顔してるわね」 なんて言われちゃって、 「いやいや顔だけですよ」 などと微妙な謙遜をしてしまい、「顔だけですよ」ってことはつまり心の中はドス黒いってことなんだよババア。長生きしろよババア、と毒蝮三太夫(どくまむしさんだゆう)のモノマネで誤魔化すような優しい人間なんです。僕は。 最初、その電車はガラ空きでした。 だから僕は座っていました。3時間ほどぶっ通してで歩き続けていたこともあって座っていました。 しかししばらく進むと車内が混んできて当然、満席に。 さらに進むと、ある駅で僕の目の前に小さめのスーツキャリーを大事そうに抱えた美女が乗ってきました。その美女の横には、夫らしき男性がベビーカーを引いて寄り添っています。 「ねぇー、疲れちゃったね~~」 甘えた声を出す美女。 「そうだな。荷物持とうか?」 妻を気遣う夫。 「ううん、これはいいの!」 スーツキャリーを心底大事そうに両手で抱える美女。 理由は分からないが、どうやらこの女性は両手が塞がった状態で揺れる車内に立たなくてはならないらしい。こんな状況を心のイギリス紳士であり、毒蝮三太夫なみに優しいフェイスの僕が見逃せるはずありません。でも、さすがに「この席にどうぞ。マドマーゼル」などと笑顔で席をゆずることは出来ないので無言で立ち去ろうとしたんですが、なにやら視線が……。 美女がこっち見てる。 気のせいかな……。 あ た し 座 り た い ん で す け ど という意思を込めた目でこっちを見てくるんですけど。 いや、実際目が合ったし。身体ずっとこっち向いてるし。なにより僕が一瞬腰を浮かせた瞬間、こっちに来ようとしたことから考えて間違いない。 ――狙ってやがる。あの女はこの席を狙ってやがる。そして、明らかに元気そうな男の僕が座っていることに不快感を感じていやがる。 「席開いて無いね~~」 また甘えた声を出す美女。 声に張りがありすぎなんだよ。 お前は本当に疲れているのか? 本当に疲れているのか? まぁたとえ疲れていなくても僕の方が体力ある常態だと思うし、小さいながらも荷物を持っている以上、席を譲るのが当たり前だろうけど、その態度はなんだ。 疲れているあたしが席に座るのは当然みたいな態度はなんだ。 なんかムカツク。 どうせならベビーカー引いてる夫の方に譲りたいわ! だから席を譲らないことにした。 後悔は無かった。無かったが――。 それから二駅が過ぎる間、ずっと視線が痛い。 いや、最初は罪悪感からくる気のせいだと思っていたんですけど、隣の席の女性は急に携帯を弄りだすし、そのさらに隣のおじさんはやっぱり急に寝だすし、どうやら視線の痛さを感じているのは僕だけじゃないようでした。 あの美女に席を変わりたくは無い。 でも、正直耐え難い。 う~ん、どうしよう……と思っていたら、突然! 救世主が登場します。 老夫婦。 痛い視線から三駅目が過ぎたとき、それはそれは見るからに老夫婦なおじいちゃんとおばあちゃんが電車に乗ってきました。 しかも都合よく、僕の席の方にやってくる様子。 おぉ! ナイスだ! ババァ!! 長生きしろよババア!!! (毒蝮三太夫) 瞬間、僕は老夫婦がこっちにやってくるタイミングを見計らって立ちあがり周囲に席が空いた事を気づかせ、そのまま美女のいる方に移動することで、席に座ろうと動き出した美女だけを妨害するという「自分は何でこんなことばっかりに頭を使っているんだろう?」と疑問を抱かずにはおれないパーフェクトな作戦を思いつくと同時に実行しました。 そしてその結果! 見事!! お婆さんに席を譲ることが出来たのです。 やったぜ! ひゃっはーーーー!!!!!! 残念だったな美女め! がっはははははは!!! めでたし、めでたし。 ……これは大変な偶然が重なった結果であり、もちろん僕が立ちがるタイミングをミスっても成功はしなかっただろうし、老夫婦がそもそも席に座りたがらなかったらダメだし、美女が本当に強引にお婆ちゃんちゃんを押しのけてまで座ろうとしていてもダメだった、とにかく最低でも3つの偶然が重なった結果の出来事であり、つまり何が言いたいかというと、くだらない理由で美女よりお婆さんを選んでしまった毒蝮三太夫な僕はどうしようもないほどダメな奴だということです。 うん。そりゃモテないや。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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