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オバマケアの屋台骨の一本が取り除かれることになった。12月20日、上下両院で多数を占める共和党が、税制改革法案を可決した。この税制改革法案に挿入されていたのが、individual mandate(個人加入義務)を廃止する条項だった。
個人加入義務について、過去の文章から引用しておく。 オバマケアでは医療保険をもつことが全国民に義務付けられた。雇用者を通じてあるいは公的社会福祉制度で多くの人は医療保険を持っているが、その網から洩れる人たちがいる、いわゆる無保険の人たち、彼らにも民間の医療保険購入が義務となった。購入していない場合は確定申告の時に罰金が科される一方、購入にあたっては所得に応じて補助金を受け取ることができた。このコンセプトはindividual mandate(個人加入義務)と呼ばれ、保険料を安くするためには保険を持つ人の数をできるだけ多くすることが必要だという保険の原則に基づいている。だから、加入義務は当然のことといえる。しかし、いかなる個人的な拘束も嫌う共和党的な人々には強制加入は受け入れがたいものだった。合憲・違憲の争いが最高裁判所まで持ち込まれ、2012年6月28日、個人加入義務は課税と同様のものだとして、ようやく合憲と認められた。個人加入義務の撤廃に成功したトランプ氏は、その直後、「個人加入義務を廃止した時点で、オバマケアは実質的に(essentially)廃止された」と勝利宣言を出した。トランプ氏にとって、オバマケアの廃止は選挙公約であるから、個人加入義務の廃止を以て公約を達成したと宣言するのは、彼らしい宣伝活動である。オバマケアの一部が崩されたことは間違いないが、「オバマケアが廃止された」というのは少々誇張にすぎる。 オバマケアには他にもいくつか重要な条項が含まれている。以前に本ブログでも触れたメディケイドの拡張、既往症状があっても医療保険の購入を拒否されないこと、医療の質を高めコストを抑えるためのシステム改善、などがあり、個人加入義務はその一部にすぎない。 実際、アメリカの医療保険の94パーセントは、メディケア(65歳以上高齢者中心)、メディケイド(所得・財産制限のある福祉プログラム)、雇用者が提供する民間医療保険、の三つであり、残りの6パーセントがいわゆる<オバマケア>の医療保険の市場である。個人加入義務の廃止が直接影響するのはこの6パーセントということになる。もちろん間接的には、個人加入義務の廃止が医療保険を持たない・持てない人口を増加させ、彼らがメディケイドに流れ込んでくる。よって、メディケイド財政が余波を受けることは間違いない。(94パーセント、6パーセントという数字は、Policio Magazineの記事によった、注1) 今後の連邦議会の議論では、オバマケアのその他の重要条項、たとえば、メディケイド拡張をどうするのか、既往症の存在をどう扱うのか、そして、個人加入義務のないオバマケア市場で、医療保険購入のための所得に応じた補助金をどう変更するのか、などに焦点があてられるだろう。 注1 "No, Trump Hasn’t ‘Essentially Repealed Obamacare", By Michael Grunwald, Politico Magazine, December 20, 2017. https://www.politico.com/magazine/story/2017/12/20/trump-obamacare-mandate-repeal-taxes-216125 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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