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クランキー猫’s

クランキー猫’s

作家名別あ~さ行

作家別あ~さ

地獄変(芥川龍之介)
2006年9月読了。クラシックなものを読んでみたいと思って求めた一冊。やっぱり面白かった。
この本には芋粥とか羅生門とか鼻とか芥川龍之介のC猫が知っている限りの作品が掲載されている。あまり長くなくしかし、読ませる面白さ。やっぱり天才ってこういう人を言うんだろうかと思った次第。

お勧め度:10
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見知らぬ妻へ(浅田次郎)
2006年3月9日読了。表題作、見知らぬ妻へを含む8編からなる短編集。著者の作品を読むのはなんと初めて鉄道員さえ読んだ事がない。理由は何だか重そうだし、日本人の男のぼくとつさを理解する前向きな気持ちがなかったため。妻が死んだ日も駅に立った男だっけ?セラピー的には身内の死に遭遇した時、日常的にルーティーンをこなすのは一番良い事だけどやっぱり理解できない。この短編集も期待せずに手に取ったが中々面白かった。しかし、やっぱり希望のない作品や物の考え方がどうしても合わない、と思った事は何度もあった。前向きだったのはファイナルラックかな。夢がある。後は疲れた中年の男の哀歌って感じが強い。勿論その人の人間味や味はきちっと出していて流石は直木賞作家と思うのだけれど。同じ年代の男性には相当受けそうな作品たち。でもなぜそうなるの?とか男の意地なのか?などと思ってしまったりするのだ。もっと人生前向きに楽しくしちゃいけないのかしら。やっぱりそれじゃあこの物語たちは成り立たないものね。色んな知らない世界の事が知れるし退屈をする事はない秀作揃いだけどやっぱり読んだ後、良かった、と思えるかと言えばやっぱりNoかな。人生をどこかで諦めてしまっているような感じ。やっぱりそれが日本男児なのか?女性には理解できない感情なのかなあ、それともC猫がアメリカ化してしまったせいかも。

お勧め度:7
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暴力恋愛(雨宮処凛)
2005年12月3日読了。長編。辛そうな生き方である。こういう人こそセラピーに行って欲しい。宗教ではなくだ。この主人公の考え方は生き方とかではなくやっぱり症候群的。そんなに痛いと思わなかったのはやっぱりセラピーに行ってるからだろうか。とにかく能天気な若い人が恋愛や生き方を考える上では良い作品かもしれない。でも今の若い人は能天気とかじゃなくてリストカットとか当たり前だったよね。

お勧め度:7
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アブノーマルラバーズ(家田荘子)
2005年8月17日読了。潜入作家である氏の作品。変わった性癖や嗜好を持つ方々のインタビューとルポ読み物。SM、女装癖、フェチ、人肉嗜好等等。普通のセックスでは満足しない方々が色んなエピソードや嗜好自慢をすると言う作品。面白かった。やっぱり一番迫力があったのはフランスで女の子を食べてしまった佐川氏。人を食べてはいけないと言うのは納得が出来ないというのは納得が出来た。殺してはいけないが食べてはいけないのは可笑しいというのだ。まあ犬や猫を食べタイと思う人が居たりこの中にもあったが人間の排泄物を食べたいと思う人が居たりそれで本人が幸せで誰にも迷惑が掛からないわけだから…。そもそも恋人同士のKissは喰らうような濃厚なものだし、首筋に唇を這わしたりそして乳首を吸ったりはこれは完全に“味わう”領域だろう。味わうってやっぱり食べる事に通じてるのではないか?別に人肉嗜好は全くないが理屈的には分る。非日常を味わって見たい方にはお勧め。

お勧め度:8
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重力ピエロ(伊坂幸太郎)
最初に読んだ伊坂作品。そしてこれ以外読んではいない。お分かりでしょうかこの意味。確かに評判通りすごいのでしょう。多分直木賞次獲るのでしょう。でも私には結構難解というかややこしいと言うのが先にたってしまう。数学的人間の先生だろうから仕方のないのかもしれないとか色々思いながらも長かっただけのような気がするのは私だけかな。すいません。

お勧め度:6
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一ポンドの悲しみ(石田衣良)
最初に読んだ石田作品で結構惚れました。大人の愛を描いてます。性描写とか結構素晴らしい。やっぱり、上手いなあ。色んな作風あるけど、池袋ウエストパークとか、私はこれが一番好きです。

お勧め度:10
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約束(石田衣良)
2005年9月読了。短編集。氏の作品は本当に大好き。ほとんど読んでいるがこの作品はその中でも好きな作品になった。やっぱり氏の希望や愛を信じる姿勢が好きなのだ。日本の小説には珍しいHappy endingがやっぱり嬉しい。氏はやっぱり短編の方が上手いのでは?と思う。精神を病む子供や身障者を描いてあるところも興味深い。しかし、日本ってこういう人達の受け皿が少なすぎるよな~と思いながら読む。直木賞は当然。やっぱり上手いなあ。

お勧め度:10
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骨音(石田衣良)
2006年2月20日読了。中編集。いつもは長編だったりする池袋ウエストゲートシリーズが今回はちょっと短めのストーリーで登場。著者は感動的な作品もすごく良かったりするがこういうハードボイルドはまたそれで良かったりもする。正直、このシリーズの前作はあまり好きではなかったと思うがこの中編集はそれなりに良かった。多分主人公の恋愛がとってつけたように出てくるのが面白くないと思ってしまう理由だと分った。今回の作品は恋愛が一編にしか入っていないから。氏の小説はほとんど読んでいるが(Upはしてないけど)いつも恋愛に落ちる女性が年上の背の高い美人である。男性の著者の場合なんだか女性を必要以上美化したり良いように解釈されてたりして受け付けられなかったりする。この著者の場合、このシリーズにおける恋愛ってちょっと唐突過ぎていただけなかったりする。勿論唐突に関係を持つ人もいるだろうが、そう唐突に恋に落ちるかなあとも思ったりするのである。関係を持ってもクールな女とかがいればいいけどすぐに主人公にぞっこんになってしまうとこが不思議。しかし、この本で1つ発見したのが何だか著者がのって書いて来ているって事。テンポとかすごく良かったり、ちょっとした言い回しが可笑しくて笑ってしまうのはキミドリの神様だったかな。なんだか街を歩いている臨場感とか主人公の思考が面白くて笑ってしまいそうなノリの良さだった。

お勧め度:8
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いつか記憶からこぼれ落ちるとしても(江国香織)
上手いっす、後新鮮。主人公が殆ど女子高校生だから。メンタルヘルス系にも結構切り込む作者です。きらきらひかるもそうだけど。なんか切ないね。日本人の愛について考えてるなあという感じ。

お勧め度:8
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きらきらひかる(江国香織)
上手いっす、それと不思議。でも主人公の純粋さや本当の愛について考えさせられる。長編な分分かりやすいのかも、多くを語ったから。

お勧め度:8
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号泣する準備は出来ていた(江国香織)
やっぱり、上手いっす。いつも思うけど、でも私にはちょっとはっきりしさなすぎるスタイルです。抽象的というか。もっと分かりやすい方が好き。後読んだ後虚しくなるのはいつもの事なのですが、この著者に関して。

お勧め度:7
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薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木(江国香織)
もう上手いっすって言うのやめましたが、事実には変わりありません。力作です。いやこれは良いですよ。男女7人夏物語(古いねえ)小説番手感じで、色んな人を描いてます。江国作品結構読んでますが一番のファンという訳ではないんです、残念ながら。多読癖なのです。

お勧め度:8.5
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薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木(江国香織)
2005年9月読了。長編。いつもの氏の作品的に虚しい、切ない気持ちになる。しかしお話の作り方は上手いし、ディテールも本当におさえていつもながら丁寧である。でも結婚や恋愛は本当にそんなに不毛なのかと思ったら、そうではないのでは?と思ってしまう点でやっぱり相容れない思いが募る。さすが直木賞作家、とても上手い。

お勧め度:8
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ホテルカクタス(江国香織)
2005年9月読了。童話調でしかし実は人間関係を鋭くついてるような作品。長編。これってどこかで読んだ解説では?いつもながらお話が面白い。ものすごいひねりがあるわけではないけど丁寧でそうよね~とか思いながら読める。そしてお決まりのようにちょっと読み終えた後に切なくなる、氏の作品。

お勧め度:7
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十五歳の残像(江國 香織)
2006年2月22日読了。22人の男性有名人に15歳の時の事をインタビューしてまとめた作品。著者の印象等をまとめたものなのだがあった時の事が結構細かに書いてあったりして面白かった。男性たちの写真もあったのでどんな人かも分ったし…。と言っても有名人で顔を知っている人がほとんどだけどね。年代によって15歳の時のことと言っても色々違うし成熟度や物の考え方も違って面白いと思った。小さい時からやりたい事が決まっていた人が多くて驚いてしまった。15歳の時なんてほとんど記憶にないのにな~。性格というか個人的に長塚京三氏にあなんだか自分と似たところを発見した。そう言われればそうだけど、こう言われればこうだと言うところが…。結局自分の中にいろんな面を持っているということなのだろうが…。もう亡くなっている方も居て感慨深かったりした。

お勧め度:8
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アンジェリーナ(小川洋子)
2005年8月17日読了。佐野元春氏のヒット曲にちなんだ10に短編。10年以上も前の作品。確か元春氏がこれらのヒット曲を飛ばしていたのは20年も前ではないだろうか?今もご活躍なのだろうか?日本を遠く離れてしまったので不明だが。小川氏の作品はやはり長編の方が好きだと思った。でもこのアンジェリーナは本当に悲しくなった。何がというわけではないが、強いてあげればもう会えないところがかな。全て何か若々しいでも悲しい恋愛の話。

お勧め度:7
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インザプール(奥田英朗)
面白かったです。この伊良部が精神科医だって言うのがねえ。彼の態度、そういうのは治らないとすぐ言うのはちょっと納得しかねるけど。やっぱりちゃんとセラピーやれば治ると思うから。ウランバーナの森も面白かったしやっぱりすごいなあ。本人は自分の事を小説にするのは嫌いだと言うだけあって参考資料は結構すごい。でも経験のない事をこれだけ書けるのはやっぱりすごいでしょう。

お勧め度:10
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空中ブランコ(奥田英朗)
伊良部、パワーアップしてました。やっぱり好きだなあ。次回作が楽しみです。

お勧め度:10
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最悪(奥田英朗)
全然作風違います、上の二つと。まあシリアスな事、いやになるくらいリアルです。でも私はギャグ作風の方が好きです。

お勧め度:8
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東京物語(奥田英朗)
2005年9月読了。著者の大学入学当時からバブルの時期までの自伝的小説。今40台の人たちにとっては本当に同じ時間を生きた気持ちになるだろう、作品。作者がどう考え成功して行ったかも分って楽しい。氏の作品は実は大好きで特に直木賞をとった精神科医伊良部シリーズや日本のお父さんたちを描いたマドンナなどはファンである。と思えばシリアスな作品も書くし、とても楽しいと思う。

お勧め度:8
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妊娠カレンダー(小川洋子)
2005年8月11日読了。芥川賞受賞作。氏の小説は初めて「博士の愛した数式」を読んで以来だと思う。この小説は本当に切なくファンになった。大きな賞を取ったりすると私だったら怠けて書くのに手を抜きそうだが去年(だと思う)の博士~が素晴らしいところをみると益々ご活躍と言う感じだ。

お勧め度:8
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博士の愛した数式(小川洋子)
いや、良いですよ。今年読んだ中でも記憶に残る作品です。やっぱりコンセプトも良いし、やっぱり読ませる文章なんだろうなあ。教訓的でもなくリアリティがすごいわけでもなく、フワフワとしてるのに心に残るって言うのはやっぱりテクですな。感動します、テクにだけではなくストーリーに。

お勧め度:10
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スチール(織田みずほ)
2005年7月25日読。すばる文学賞受賞作。藤沢周氏の論評が帯に掛かっていたが彼が好きな理由が十分分る作品だった。むしろ氏のいくつかの作品よりよっぽど読み応えがあったのが皮肉。面白かった。Sexual orientation,Minority感覚等がテーマの作品。この人、男?女?

お勧め度:8
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Go(金城一紀)
2006年3月7日読了。直木賞受賞作。これは久々にほんとに面白かったと言える作品。在日韓国人-著者はコリアンジャパニーズと言ってますが-の主人公の青春物語。あまりよく知らない世界だけに感心することしかりだったが、物語が展開しほんとに色んな事が起こってくると感動したり泣いたり。ほんとにアイデンティティってどういう事なのかな、と考えさせられる。アメリカではアメリカで生まれれば自動的にアメリカ人だし、二重国籍も認められているのでまったく事情が違う。日本は基本的に二重国籍を認めていないので日本国籍を維持しようとすると結局他の国籍を取得できない。確か21歳だかでどちらか選択しなければならないそう。だから日米間の子供でも大人になったらどちらか選ぶ形になる。でも著者の言うように国籍がどうと言う前に生まれた環境、育った環境も全部ひっくるめてその人自身なのである。それを国籍をどこ何、と言うのは本当におかしな事だと思う。ヨーロッパとかも民族性からの区分けよりも結局国境で区切ってしまっていたりするので同じ国で違う言葉を話すような全く違う民族が居たりするのだ。しかし、まあ便宜上国境は必要と言うのは理解できるが結局それは後からの言い訳でしかないのだ。アメリカで住むとアイデンティティについてよく考える。やっぱり自分は日本国籍を持っていても日本に住む日本人とは違うだろうし…等など。だからこの主人公の気持ちも理解できたりする。それと日本に住む韓国籍の方たちに対する日本人達への教育の低さや無知が2つの民族を遠くしているというのもうなずける。このアメリカでも他の民族への違和感や無知はあったりするのだ。でもあからさまに差別が横行しないのはやっぱり教育が徹底しているからだと思う。それとマイノリティに対する法的な雇用への便宜もきちんと整っている。韓国籍の方達が日本に来たのは戦前で70年前の事であり、アメリカで奴隷解放が行われたのが結構これに近かったりするので結局両国の状況の差はやっぱり教育の徹底だと言えるだろう。著者は日本人と言う定義が一体何なのか?と言うとこまで民族的に系統的にさかのぼったりして、それも興味深い。物語の中でずっと独身だったものすごく美しい在日の方がアメリカ人と結婚するのはうなづける。アメリカ人なら国籍がどこであろうとそう気にしないものね。同じ人種の中でも混血が進み、イタリア1/2、ロシア4/1、ドイツ1/4とかいう事になったりアジア系でも同じ事が起こってるし。とにかく面白いこの作品、お勧め。

お勧め度:10
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姑獲鳥(うぶめ)の夏(京極夏彦)

2006年7月読了。
長かった~。この作家の本を読むのは初めてだけどほんとに会話に凝ってと言うか話が長いのだ。
結局蓋を開けてみればなんだかちょっとサイコ的でグロイ殺人事件だとかそう言う話だったりするのだ。
沢山書くその根気だけでも賞賛に値するのかなあ。
沢山本を読んで沢山の知識があるちょっと作家然とした作家って感じもある。
登場人物が結構魅力的と言うか興味をそそるし、話の筋も気になるので長くても読んでしまうのだが結局最後にな~んだ、と思ってしまう感じも否めない。
推理小説の大ファンでないC猫にはちょっと辛い展開。だってトリックを考えたりそう言うのってめんどくさいんだもの。
好きな人はきっとすごく好きだろうと思わせるこの作家。
ちょっとオタクって感じもあるなあ。

お勧め度:7
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蛇にピアス(金原ひとみ)
2006年1月18日読了。すばる文学賞&芥川賞受賞作。流行に後れないように読んでみました。と言ってもこの時点で遅れてますが。若い頃からこんな生活きっとハードだろうな~と思いながら…。性の描写とか率直でちょっと気持ち悪い感じも…。愛なんかない世界に行きたかった主人公が結局最後は愛に目覚めたんだろうな、これは。でもとても分り難いけど…。確かに長編だしよく書けるなあと思う事を書いてるけど、何が飛びぬけて素晴らしいのかは不明。綿谷氏の方は言葉遣いとかが結構工夫されてたりするけど、それも大仰にはないし…。とにかく話題作。

お勧め度:7.5
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沙羅は和子の名を呼ぶ(加納朋子)
2005年7月31日読。何篇かの短編からなる本。全てが子供が主人公だったり子供にまつわる話で子供の生霊が出てきたり…。でも全然怖いとかではなくてほのぼのとした内容。ただ内容が余りにほのぼのとしすぎでパンチが欲しいという感じ。その点では表題になった沙羅は和子の名を呼ぶは面白かったと思う。初めて読んだ著者なのでいつもこの様な題材なのかは不明。

お勧め度:6
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キッドナップツアー(角田光代)
良かったです。なんか江国香織さんに似たところあります。父と娘の絆物語。ちっちゃい子といっても11歳とかだけどすごくその視点で描けてると思う。

お勧め度:8
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まどろむ夜のUFO(角田光代)
2006年1月15日読了。随分前から読み始めたのに結局何ヶ月もかけて読了した本作。中篇と短編の3作からなる。なんと言うかこの人の書くもの分りません。どうしても…。芥川賞作などで分らないのはあるけど、この方直木賞受賞者でしょ。よく分らないところが良いのかも知れないけど、どうなるんだろう、どうなるんだろう、と期待させておいてどうにもならない、という裏切りにあったような気がするのは単に素人目だろうか。それにしてもこれは私の論評なので好きな事を書かせていただいた。直木賞受賞作の対岸の彼女も未読のままどこぞに眠っているはず、しかし、まだまだ読む本沢山あるから後回しかも。

お勧め度:6
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蛇を踏む(川上弘美)
2006年2月28日読了。芥川賞受賞作。蛇を踏む、消える、惜夜記の中篇からなる本。最初は蛇を踏むからで思わず真面目に読み始めてしまった。蛇が踏まれてしまったらしょうがありません、としゃべった所までは良かった。まあそういう事もあるだろうから:)。それからどんどん物語りは奇妙になって行き読み終わる頃までにこれを真面目に考えてはいけない、と思うに至った。それでもその思いに至るまでにこれは何かを、人間関係や人間の本能や心理に関してことごとく抽象的に表現した結果この奇妙な物語になったのだ、と考えようと努めて抵抗したりした。そのかいあって:)そうと思える部分もあったのだが、結局のところ創造性に富んだお話だと思うところに落ち着いた。それでも比ゆ的表現であると言う考えは捨てがたく、消えるを読んだ時にはやっぱり文化や習慣や愛に関する風刺であると思った。そして、惜夜記を読んで、これはちょっとついていけないかも、と思ったりした。途中、芥川龍之介の羅生門を思い出すシーンもあった。死人の感じとか…。とにかく、これが純文学で芥川賞受賞作であるのならば私にはこれを素晴らしいと感じるセンスが欠けるのではないかとも思う。ご本人が後書きでおっしゃるようにこれをうそ話と思うのならグリム童話とかと同じ感覚で読むのであれば理解は出来るのだが…。

お勧め度:6
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ローズガーデン(桐野夏生)
2006年2月21日読了。中編集。村野ミロシリーズ。氏の作品は結構読んでいる。時々あまりのえげつなさに嫌になってしまうような内容のものがあったりする。この作品にもやはり変わったネタがあって、地方から出てきて真面目にやってると思ったら実はSMクラブの有名な女王様だったり、マンションの住人同士の嫌がらせがあったり…。書き下ろしのローズガーデンはミロの夫と彼女の高校時代の馴れ初めの話でそれがきっかけで夫がロリコンになった話。どれもなんだか普通じゃない人達の話が多い。まあ、普通じゃない人達が多いといわれればそれまでだが…。刺激的で面白い事は認めるが時々疲れてしまう。勿論それが氏の持ち味で作品的には優れているであろうが。まあ死体を切り刻んだりする物語でなくて良かったけど。

お勧め度:7
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山背郷(熊谷達也)
2004年10月読了。奥田さんと一緒に直木賞を獲った方です。良かったです。正統派の作家という感じで。でも私には硬すぎるのです。やっぱり東北とかの猟師の生活とかそういうのは本当に描写とか上手いと思います。そりゃあ直木賞作家ですものね。すいません。

お勧め度:8
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中陰の花(玄侑 宗久=げんきゅう そうきゅう)
2006年1月26日読了。芥川賞受賞作。この小説には久しぶりにちょっと驚いた、と言うのが第一印象。本物の僧侶である著者が書いた日常の中の魂や死やそう言ったもの。僧侶であっても死後の事や魂の事が分っているという事ではなく結局は檀家の人に頼まれて問題を解決しに行くのだけれどどうして良いか分らないからとりあえず部屋でお祈りをしたりしてみたら問題は収まったと言うのが結構微笑ましかったりする。結局は色んな事が人々のストレスのせいであったりするのかも知れないなと思う。だから人々がよりどころを求めるのがお寺だったと言う事なのではと思ってしまった。西洋であればこれは完全に教会であろう。昔は困った事があると教会に相談に行ったりしてただろうし。今はセラピーと言うところだろう。勿論、そういう科学で説明できない事もあると言うのもやっぱり盛り込まれているのだけれど…。文章が上手いしやっぱり良いと思う。一緒に収録されていた朝顔の音の方が好きだったりする。ちょっと怖いけど、人間ってやっぱり弱いのか~とか、人の人生って簡単に駄目になってしまうなあとかいろいろ考えたけど。やっぱりかわいそうだったなあ。

お勧め度:9

私だけの仏教(玄侑宗久)
2006年9月読了。芥川賞作家の氏の本職である仏教を諭す本。一口に仏教と言っても幅広く伝達されるうちに風土に染まり変わったりして多岐にわたっている。その仏教を自分なりに理解して実行しましょうという本。MSWの時に死に関するクラスをとった時に自分は仏教徒ではないと思っていたにも関わらずいかに自分の価値観や考え方が多岐にわたって仏教の影響を受けているか知り興味を持った。そして仏教をもっと知りたいと思って選んだ一冊。しかし、読み終わるのに何ヶ月もかかった。その間に他の本を読んだりして。即ち、つまらなかったんで読む気がせず結局読み終わろうと自分を勇気付けて読み終わった次第。やっぱりちょっと複雑すぎるのかも。勿論誰が読んでも理解できるように書いてはいるんだろうけどやっぱり根気がなさ過ぎかも。最後の仏教伝達の年表はとても参考になったけど、やっぱり仏教自体に興味がないといかに薄い本だとは言え読むのは大変。これはこうでなくてはいけないと言うような厳しい教えもあまりなくつまるところ今知っている事くらいで自分流仏教ってOKではなかろうかと思ってしまった。仏教を知らずして仏教を実行しているとはちょっと皮肉。

お勧め度:6
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恋愛映画館(小池真理子)
2006年9月読了。氏が興味を持っている俳優やその俳優の出演作について書かれた本。
俳優達はフランスやヨーロッパの女優や男優。そして日本やアメリカの俳優達も網羅されている。
年代が違うせいか映画の好みが違うせいかあまり知っている人が居なかったりして面白かった。
知っている女優も若い頃の映画が紹介されていたりして馴染みが薄かったりしたし。好み的にフランス映画に的が絞られていたりするがC猫はあまり見ないので新鮮ではあった。見てみたいなあと思う映画も何本もあったりして映画好きには楽しめる作品。

お勧め度:8
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嘘ばっか(佐野洋子)
2005年9月読了。昔話のパロディ版の短編集。面白く読み軽く流す分には良い本かもしれない。それにしても昔話って洋の東西を問わず既に変な話が多いな。

お勧め度:6
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生まれる森(島本理生)
2006年5月読了。
例の最年少芥川賞コンビと並んで注目されている同年代の作家。
予備校教師の随分年上の男性への失恋や日常を書いてある作品で今の若い方の事がちょっと分った感じ。
ティーンエイジャーの母親代わりとなる身としては興味深い。なんたって姪は14歳。
若々しいし、珍しいけどやっぱりこういった小説は同年代の女の子がああ~分る~と思いながら読むものかもしれないなあと思う。
おばさんが読むとすぐにそんな男は駄目よ、とか極論になってしまう。
年をそってものを知るという事は便利でもあるがまたつまらないのかも知れない。
個人的には年を取って良かった~と思うけど。色々迷う必要が少なくなるしね。

お勧め度:8
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パラサイトイヴ(瀬名秀明)
2006年3月26日読了。第二回ホラー大賞受賞作。この前ふりをよく分ってなかったせいか、途中のえげつないというかグロの部分でゲーっと思ってしまった。ホラー大賞だったら当然だものね。何で気がつかなかったのか。著者自身も理系の博士課程の学生だというだけあって、ちょっと専門的な記述も多い。そこが根っから文型のC猫にはちょっと辛い。よく考えてみるとこんな事、あるはずがない、と思ったりするほどリアリティに欠ける内容なのだがやっぱり理系の方にとってはもしかしたらあり得る事なのかなあ。えげつない中にも人間の死に対する心理や微妙な感情を描いてはいるけれど、やっぱりどう考えても自分の死んだ妻の肝細胞をキープしよう等と言う考えは普通の人にはわいて来ないのではないか?と思ってしまう。いくら愛しててもねえ。怖かったし、林真理子先生の選評の通り、一気に読んでしまったけれど、でもその後トイレに行けないほどではなかったので、そうホラーに重点はおいてない感じ。まあ、妻の肝細胞を飼育するという考え自体が普通の人には既にホラーかも。臓器移植や脳死の考え方に対する疑問のようなものも織り込まれていて、C猫もMSWの時に日本の倫理や定義が他の国と比べてどれだけコンサバか知ったが、やっぱりこの本によっても考えさせられる。

お勧め度:7


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