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わたしは価値を創る

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November 28, 2012
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カテゴリ:小説の話
永遠の0.jpg

■涙なしには読めない小説です。

百田尚樹のデビュー作にして大ヒット小説ですね。映画化もされるらしい。納得の作品です。

■百田尚樹氏は、もともとテレビの放送作家をしていたらしいですね。「探偵ナイトスクープ」などを担当していたとか。

だからなのか、この小説も、シンプルなのに、多層構造をしているという素晴らしい編集力が見られます。

■太平洋戦争の特攻で亡くなった祖父のことを調べる孫姉弟が当時の関係者にインタビューをしていく内容が物語のアウトラインとなります。

特攻というのは、爆弾を積んだ飛行機(ゼロ戦)で、敵に突っ込んでいく自爆攻撃です。

アメリカでは「カミカゼアタック」と呼ばれ、自爆テロ攻撃として恐れられました。

一般に特攻に参加した者は狂信的な軍国主義者だと思われがちですが、実際はどうだったのかというのがこの小説のテーマです。

■多層構造といいましたが、この小説は様々な読み方が出来ます。

1.まずは、太平洋戦争のおおまかな流れを知ることが出来ます。

真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦、ラバウル沖海戦、ガダルカナル島奪回作戦、沖縄戦の様子がインタビューの中で語られます。

当初、能力的にも物量的にも優位にあった日本軍が、アメリカ軍に逆転されて、絶望的な状況に追い込まれていく様子がよく分かります。

2.次に当時世界最強の戦闘機であったゼロ戦の物語としても読めます。

技術的な後進国と思われていた日本が、世界を驚かせた戦闘機です。重量が軽く小回りが効き、長い距離を飛ぶことができました。

アメリカ軍のマニュアルには、ゼロ戦に出会ったら逃げろと書かれていたそうです。太平洋戦争当初はまさに無敵の戦闘機でした。

そんな夢の戦闘機が、アメリカ軍の技術力の前に敗れ、時代遅れになってまで戦わされる様子が語られます。

■なぜゼロ戦が世界最強足り得たのか。

一つには、アメリカにない日本独特の発想にありました。

というのは、ゼロ戦は、防御性能の極端に低い、攻撃能力に特化した戦闘機だったからです。

アメリカは、パイロットを守るための工夫を戦闘機に盛り込み、それが重量のハンディとなっていましたが、ゼロ戦は、そんなことお構いなしでした。

このように、当時の日本軍は、人命軽視の思想があったようです。

これが太平洋戦争末期の特攻につながっていきました。

3.この小説には、当時の日本軍のいびつな思想や姿勢が語られています。

末端の軍人を無謀な作戦に駆り立てる癖に、極端に憶病な軍上層部の姿勢が皮肉られます。

真珠湾でもミッドウェイでも、軍上層部がもう少し勇敢で、戦略眼を持っていたならば、その後の展開が変わっていたかも知れないと言われます。

ところが、そんな重大な判断ミスが、何ら責められることはありません。

上層部のエリート同士は決して責任を追及しないという暗黙の了解があったかのようでした。

4.ところが、現場の兵隊たちは勇敢でした。当時から、日本の現場の兵隊の能力は世界一だと言われていました。

ここでは、ゼロ戦の搭乗員の姿が生き生きと語られます。

勇敢で、前向きで、絶望的な状況にも明るさを失わなかった彼ら。

この小説の感動は、彼らの姿にあります。

決して彼らは狂信的な軍国主義者ではありませんでした。特攻に喜んで行く者などいません。こんなバカな作戦はないと公然と批判する者もいましたし、個々には納得していませんでした。

しかし国家の圧力に個人では逆らえず、せめて日本の将来の犠牲となろうと死に向かう彼らの決意は涙なしには読めません。

彼らを軍国主義の犠牲者と片付けてしまうのは、軽すぎます。

■そんな状況の中、主人公は、日本軍の在り方に疑問を抱き、家族のために生きて帰りたいと公言する人物として設定されています。

いささか現代的な人物として作りすぎている感がありますが、彼の行く末が、この物語のエンジンとなります。

もっとも私の感動は、物語らしさあふれる後半ではなく、前半の戦闘乗りたちの健気な姿の方にありましたが。

■この小説に対する批判として、文章が軽すぎるというものがありました。

確かにライトノベルやビジネス小説に似た文章で書かれており、戦争の絶望的な悲惨さが今一つ伝えきれていないかも知れない。

このあたりテレビ出身の作者らしい分かりやすさがアダになったのかも知れませんが、そんなことなど取るに足らないことです。

何より若い世代にも読んでもらえる文章になったというところに価値があると思います。

お勧めいたします。





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Last updated  December 1, 2012 07:45:15 AM
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