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テーマ:映画館で観た映画(8570)
カテゴリ:邦画(か行・さ行)
監督・脚本 : 中島哲也 原作 : 湊かなえ 出演 : 松たか子 、 岡田将生 、 木村佳乃 公式サイトはこちら。 <Story> 女教師・森口悠子(松たか子)の3歳の一人娘・愛美が、森口の勤務する中学校のプールで溺死体にて発見された。 数ヵ月後、森口は終業式後のホームルームにて「私の娘はこの1年B組生徒二人に殺されたのです」と衝撃の告白をし、ある方法にてその二人の生徒に復讐する。 そして4月、クラスはそのまま2年生に進級。 犯人のひとりAはクラスのイジメの標的になっていた。 そして、もうひとりの犯人Bは登校拒否し、自宅に引きこもっていた…。 告白 - goo 映画 <感想> 本当は公開日に行きたかったんですが、この週は真面目に忙し過ぎ。 予定もぎっしりで、さらに仙台行きもあったりと盛りだくさん過ぎちゃいました。 おまけに週末はとうとう日頃のハイペースがたたってか? ダウン。。 土曜に飲みに行く約束があって、そのメンツが全員『告白』を見ているっていうことで、 ハブられちゃかなわんということで(笑)、慌てて朝イチの回に駆け込みました。 正規料金で鑑賞なんて年に数回あるかないかなのに(涙) それに見合う内容だといいかなと期待しつつ、なんですが。 映画に先駆けて原作も読んでおります。 原作を既読ですので、ストーリー展開はそのままついていけます。 映画は、独白調の文体でひたすら進む原作の持ち味をそのまま生かしている。 かなり本はぎっしりと文章が詰め込まれており、しかしながら、その細かいところを見落としてしまうと、それがそのまま伏線になってしまっているのでついていけなくなる。 その細かさを、映画ではどういう風に表現しているか。 そこが気になっていました。 中島監督作品は『パコと魔法の絵本』しか観ていないのですが、割と大きめに極彩色で描くタイプというイメージがあって。 それを本作に持ちこんでしまうとかなり伝えたいことが異なってしまうかなと思ったので、それはできればしないでほしいと思っていましたが、 鑑賞して見て、監督の作風がすごくいい方向にまとまって発揮されていることを感じました。 例えば1年B組の生徒たちの描写ですが、実際、中学1年後半~中学2年前半という世代にしては、この子たちは外見は大人びてしまっています。 成長しすぎたくらいの子、高校生くらいの子たちを役に起用している。 (リアルでこの世代を持っているので、実際はもっと子どもっぽいと思うんです) 例えば冒頭の、教室が荒れるシーンですが、 もしかしたらあのくらいの荒れ方をしている公立中学はあるのかもしれませんが、さすがにこれはひどい方だと思います。 携帯は持っているかもしれないけどあそこまではしない。 普通教師も注意するし、生徒も隠す。 内申に響きますので。 こうして実際よりも配役の年齢層を高めにして、彼らの自己中心的な習性の描写を強調させている。 何でもこの生徒役にAKB48から3名が参加しているとのことですので、絵的には完全に1つ上の階層を出してきてます。 小説の描写の細かさを、映像の中にくっきり、きっちりと余すところなく出してきてるのがもう素晴らしくて。 愛美ちゃんが死ぬシーンなど、伏線となるところまできちんと正確に描写しているのには驚かされる。 ムクの家にボールを投げて、とか、最後の愛美ちゃんの表情までもちゃんと検証し、計算に入れて作っているのがよくわかる。 美月などは、「まさにこの子」的なイメージそのものの子を持ってきていたし。 森口の独白シーンは、全く聞いてない(ようで実は全部聞いてる)クラスに浸透していく様子を時間の経過とともにうまく描いていましたしね。 クライマックスの逆回しを敢えて映画で入れた意味は、母への想いを強調したかったのか? とも思えるんですが、普通であればいらないんじゃないか? と思ってしまうこの入れ方さえも、もっと観てみたくなるような気にさせられてしまう。 入れ方がうまい。 原作を読んでみて感じたのは、「母」っていう存在の大きさ、重たさ。 母への想いも千差万別かなと。 それがまっすぐに出ることもあるし、歪みに歪み切って現れることもある。 認められないという無念が歪み切って出てしまったのが修也。 そして、母が子に抱く想いの怖ろしさも逆に考えると言える訳です。 実際に、木村佳乃さんが演じた役のような母親って少なくないような気がする。 子どもの暴力に怯えながら、世間体を繕う母親。 それも子どもへの歪んだ愛情が生んだことなのかもしれない。 我が子を殺された悠子の恨みは、それと同等、もしくはそれ以上でないと満足しないという心情。 実際にそんな目に遭ったとしたら、母親の多くがそう思ってしまうのではないだろうか。 背景には恐らく、近年増えつつある、刑罰に問われない年齢層の犯罪の増加もある。 少年だから罪に問われない、何してもいい。 そういう風潮をよしとしないならば、どうすれば復讐できるのか。 悪いことをしたもの勝ちという雰囲気が決してよくないという作者の信念も読み取れる。 後味は悪いけど、その後味の悪さを映像でしっかりと見せてくれた作品。 水滴の一滴、血の一滴、雨の一滴。 「水」がずいぶんたくさん出てきて、しかもその使い方が全て意味があり、無駄じゃない。 途中に折り込まれる「空」の映像や、音楽などもとてもよかったです。 映像に仕上げることで、この原作の本質がたくさん見えてきました。
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