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カテゴリ: *サイバーフェイズ制作
※ボーイズラブに関する話題を扱っています。
ドラマCD『蒼い海に秘めた恋』(原作:六青みつみさん)を聴きました。 たっぷり時間を掛け(CD2枚組)、原作をあまりカットする事なく、丁寧な作りになっていたと思います。 天変地異によって陸が殆ど失われてしまい、人間は1つの陸上都市と4つ海底都市に暮らしている世界が舞台になっています。 ‘水腐病’という不治の病の唯一の抗体を持っていたショアは、陸上都市にある研究所で実験体として育てられ、文字通りその身を削って数多の人間の命を救ってきました。 水腐病の特効薬が完成した時ショアの存在は無用になり、外部の人間に真実を喋られないよう細工をされて、ショアは研究所の外に出されてしまいます。 唯一の存在であった養父エルリンクに利用された挙句棄てられ、研究所から出て保護されたはずの団体にも半ば拷問のような仕打ちをされ、他人の思惑にばかり振り回され利用される境遇から逃げ出し、ある映像を見て心の支えにしていた青年グレイに逢う為に、ショアは密航します。 グレイは、自分に縋ってきたショアを受け入れ、住まいと仕事を世話し、やがて二人は惹かれあうようになります。 愛する人と仕事仲間に囲まれたショアの束の間の幸せは、彼を連れ戻しに来たエルリンクの登場で破綻します。 グレイは、ショアが彼にとって嫌悪の対象である研究所の出身である事に衝撃を受け、また自分に一切真実を語らない事に裏切りを感じ、激昂します。 真実を語れないショアは、グレイにこれ以上嫌われる事を恐れ、せめて仕事だけは認められたいと具合が悪くても身を潜めるようにしながら懸命に働いていたのですが、ある日、政府から極秘調査の打診があった時、本来依頼を受けた青年キールに変り、自分が危険水域に行く事を志願します。キールは現在グレイと交際しており、グレイを悲しませたくない一心での決意でした。 任務について誰にも明かさず、そして唯一の望みをグレイに叶えてもらって、ショアは一人危険水域に赴きます。 ショアの病状と決意と、そして真実を知ったグレイは、彼を救出する為行動を起こします… 原作が何しろ六青みつみさんですから、ショアの健気で哀しくて切ない事といったら… 子供心にエルリンクの孤独を察し彼を愛していたのに、その無垢な心は無残に踏みにじられ、空虚な心の唯一の希望だったグレイと幸せになる寸前でまた破綻して、健気な心は希望すら手放してしまいます。 自分の真実を自らの言葉で伝えられないショアは、まるであの人魚姫のようです。辛くて哀しくて、でも相手の幸せだけを想い身を引いて、海の泡と消えようとしてしまうのです。 でも、グレイは庶民で技術者で、自ら判断し行動できる人間であった為、真実を察知した後はとても迅速でした。 その点、ことごとく不手際を晒し後手に廻り無様だったエルリンクは、王子でした。自分を救ってくれていた存在の事を本当に知ろうともせず、真実を失って、その代替品を得るしかなかったのですから… ブックレットに掲載された書下ろしのショートストーリーで、再会したショアはエルリンクに対する真実は既に過去である事を、改めて宣言しています。ショアはエルリンクを赦し、ここで二人は和解している事にもなるのですが、エルリンクはショアの現在をはっきり突き付けられます。 ショアの傍らにはしっかりとグレイが寄り添い、ショアは彼の腕を懸命に握り締めもう二度とこの幸せを手放すまいと、グレイは我が身でショアを庇いもう二度とこの存在を失うまいと…それは、愛し合う恋人たちの当たり前の姿でした。 エルリンクは、確かにショアを愛していたのですが、それを表す術を知らなかったのです。彼は、特別な境遇にある人間だったがゆえに、極自然に溢れ出る恋心や愛する人間を幸せにしたいという当たり前の感情を、自分で自覚できなかった、哀しい王子でした… ショアを福山潤さん、エルリンクを森川智之さんと知った時、王道だなぁと思いました。 そして、この人間の基本が健康で強いお二人なので、ただのメロドラマにはならないだろうと思っていました。 福山くんが、とても抑えた演技で、じっくり芝居してらっしゃるのがよくわかりました。ショアの一言一言が、とても切なくてなりませんでした。 帝王サマも、実に押さえた演技でらして、ここまで抑えたお芝居はあまり無いようにも思いました。やはり聴き処は最後のシーンで、ショアの成長を記録したディスクを投げ突ける様、そして運命の一言と破砕音の後の静かな慟哭は、エルリンクの真実の心が溢れていました。 だからこそ、ここのシーンは福山くんにこそ演じて欲しかったです。ここでのショアは8歳当時のものなのですが、多少の無理はあっても最も重要なシーンなので、福山くんのショアであってこそだと思います(『いつかじゃない明日のために』では回想シーンも福山くんでしたから、大丈夫だったと思うのですが…)。とても残念です。 鳥海浩輔さんのグレイは、聴く前から絶対良いだろうと想像していたのですが、本当に素敵でした。男らしい優しいグレイで、ショアに対して恋心を感じている時の甘い声、想いがあるからこそ強く拒否してしまう硬い声、死の淵から取り戻せた恋人に対する少し痛みを含んだ声など、惚れ惚れと聴いていました… 実際にCDを聴いて、とても嬉しく思っているのですが… 友人キャスティングによる、ショア:鈴木千尋さん、エルリンク:三木眞一郎さんに、まだちょっと未練があるコトも事実だったりします……我が侭だなぁ…… CDジャケットは、藤たまきさんの描き下しで、幸せそうに見詰め合うショアとグレイの姿でした。 生まれ故郷の南の島で、永遠に尽きる事のないグレイの愛情に包まれて、ショアは本当に幸せになったんですねぇ…… 『蒼い海に秘めた恋』 2006年9月 サイバーフェイズ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.09.10 16:32:54
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