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カテゴリ: *サイバーフェイズ制作
橘紅緒さん原作、宝井理人さん作画の、『セブンデイズ MONDAY→THURSDAY』を聴きました。
橘さんらしい、そしてサイバーフェイズらしい、淡々として、じんわりと効いてくるドラマCDに仕上がっていると思います。 高校3年の篠 弓弦は、付き合う相手から一方的に‘外見と内面のギャップ’を失望されて、毎回振られ続けていました。 高校1年の芹生冬至は、毎週月曜日一番最初に告白してきた相手と一週間付き合って、日曜日には別れてしまう事を続けていました。 ある月曜日、篠は戯れのように「俺とつきあってよ」と芹生に告げ、そして二人の一週間が始まりました… 篠 弓弦を福山潤さん、芹生冬至を中村悠一さんという、なかなか新鮮な配役です。 サイバーさんでの福山くんは、ちょっと微妙なお芝居を要求される事が多く、役者泣かせな分、興味深いものを聴かせて戴けるのですが、今回もその期待を裏切りません。 音色的には、とてもクリアで甘やかで、いかにも王子様的でありながら全体的に抑え目で、そして内面のざっくばらんな率直さが加味されています。 中村さんは、聴く度に実は多彩な音色を持つ方だと実感するばかりなのですが、今回は細く軽やかで、どこか掴みどころの無い印象と、その内面にある真実とのギャップが表されています。 ‘FUNBOOK’で中村さんが、どちらが攻/受なのか話題にしてらっしゃいますが、そのあたりは原作以上に面白く感じました。 原作を読んで、芹生は精神的には受的なのだけど、自覚している分攻めるだろうと思っていたのですが、むしろ中村さんの音色は受的な部分が前面に出ていて、反対に福山くんの音色には受ける気が無いように感じました。 案外、攻/受の役割分担が曖昧な方にむしろ現実味があるような気もして、この後の原作の展開が改めて愉しみでなりません。 実は、キャスティングを知った段階では、ちょっと意外に思っていたのですが、実際にはありきたりなキャスティングでない為、意外な部分や気付かされた部分などあって、私には聴き応えがありました。 篠は、自分に寄せられる好意が上っ面なものだと軽く失望しており、同時に自分自身もまだそれほど真剣な関係を望んではいないようなところがあります。 芹生は、1週間しか続かない関係を繰り返しつつ、その実、本当に心から想う事の出来る相手を欲しています。 多くの憧れや好意を寄せられてはいても、そのどれもが自分にとって真実には到達しないものばかりな事に淋しさを感じている二人が、篠の何気ない発言から付き合う事になって、距離が近づいていくかというと、それがなかなかもどかしい… そもそも篠と芹生の意識には大きな違いがあって、篠はまだ無自覚なのに芹生は気が付いてしまうので、余計な食い違いや思い違いが起こってしまいます。 そのあたりは、中村さんがとても繊細な音色を聞かせて下さっていて、「今度こそ 好きになれるだろうか…」はとても切なく、どこか哀しくすら感じました。 原作コミックス『セブンデイズ MONDAY→THURSDAY』は、2007年10月に発売されました。 篠と芹生の一週間のうち、タイトルにある通り‘月曜日→木曜日’までが描かれており、つまり物語としてはまだ未完です。 CDの収録時間は、62分09秒。 最後のバックステージ・トークが7分38秒だったので、正味54分31秒ですが物語のカット部分は殆どありません。 コミックスの音声化なので、心情や状況の説明的な部分が加筆されており、原作通りとても丁寧に作られていると思います。 橘紅緒さんの作品には、独特の淡々とした空気感があって、それがサイバーさんの作風と合致して、橘紅緒作品もサイバーフェイズ制作作品も大好きな私には、実に堪らないものがあるのですが… 言い換えれば、ただでさえ物語は未完であり、二人の関係ももどかしい状態…キス止まり…で、ドラマチックな展開もサスペンスな事件も一切無く、うっかりするとサラサラと聞き流してしまう、あっけなさがあるのです。 聴き手の好みによっては、聴き処がなく物足りなく感じるかもしれません。 やはり、この後の‘金曜日→日曜日’の二人が気掛かりでなりません。 どんな一週間の終りを迎えるのか、ちゃんと恋に辿り着けるのか…原作の完結が待ち遠しい事です。 そして、この後の二人を、また聴く事が出来るよう願っています… 『セブンデイズ MONDAY→THURSDAY』 2008年3月 サイバーフェイズ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.03.26 17:52:02
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