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カテゴリ: *サイバーフェイズ制作
椹野道流さん原作の、『執事の受難と旦那様の秘密〈上〉』を聴きました。
原作の、キャラクターの素直な魅力とちょっとセピアがかった時代物の雰囲気が、ふんわりと優しいドラマに仕上がっています… 古い海上都市の検察官ウィルフレッド・ウォッシュボーンと、その助手のハルは、多発する犯罪の為に多忙な毎日をおくりつつ、屋敷に戻れば旦那様と料理人(見習い)、そして恋人同士として、幸せに暮らしていました。 そんなある日、ハルが育った孤児院の老院長が殺害され、警察が犯人として連行したのはウォッシュボーン家の執事ジャスティン・フライトでした。 牢獄に差し入れに出向いたハルに、フライトはある住所を秘かに告げます。 その意味を悟ったハルが尋ねていくと、現れたのは煌びやかな美青年キアランでした… ハルの、神谷浩史さんの第一声が、前作『作る少年食う男』でのどこか硬さのある未熟な様子から、落ち着いたものを感じられて、自然とハルの成長と現在の幸せが伝わってきました。 料理人としても検視官助手としても確実に成長していて、かつての境遇からどこか諦めてしまっていた少年が、努力が報われる事の充実感を知り、他者に認められる事の喜びを知り、前を向いて懸命に生きていく姿は、とても清々しいのです。 ちょっとぞんざいな口調がかえって活き活きとして、素朴で何とも可愛いハルちゃんですが、ウィルフレッドの恋人として愛し愛され、そちらの方もますます幸せな様子です。 前作では、(原作にはそーゆーシーンがありながら)可愛いトコしか聴かせて貰えませんでしたけど、今回はちゃんと旦那様の上に乗っかっちゃってるハルちゃんを堪能できます… ある意味、ハルちゃん以上に素朴で可愛い旦那様のウィルフレッドですが、今回は元々多忙な上にフライトの一件が重なり些か披露困憊な様子を、どこかアンニュイな、でもかえってあまり含みのない音色で子安武人さんが演じてらっしゃいます。 ハルちゃんと出逢い、愛する事とそして嫉妬という感情を知った旦那様ですが、そのヤキモチがこの作品のちょっとした楽しみになってます。 ふんわりとして、あまり毒っ気のない子安さんというのも、ちょっと珍しいかもしれません。 ところで、子安さんは、旦那様の秘密をまだご存じでないのかしら… 〈下〉の台本でその秘密を知ったら、どう思われるんでしょ… フライトの成田剣さんは、アッサリ風味。 淡々として有能な執事振りで、仄かに情が込められていて、どこか艶な伊達男フライトは、やっぱり魅力的。ナリケンさんが、楽しそうに演じてらっしゃるのが、また嬉しい… 今回は、タイトル通り‘受難’なフライトですが、むしろ余裕すら感じるのはやっぱりナリケンさんだからでしょうか… 今回、何といっても愉しいのは、フライトの恋人キアランです♪ その鈴木千尋さんの第一声から、キアランはこーゆーキャラだったのか!という愉しさをたっぷり聴かせて下さって、原作を読んだ時からちーちゃんが良いなぁと思っていたとはいえ、想像以上でした。 何しろ、キラキラしい外貌なので、どんなにキンキラした音色でもいけそうですが、ちょっと驚くほど低音に抑えて、大人で経験豊富で度胸も手管もたっぷりな内面を想像させてくれます。 こんなキアランに掛っては、ハルちゃんなんて他愛無いもので、コロコロ翻弄されまくるワケですが、キアラン先生によるハルちゃんの実技体験講座のシーンは、もう愉しいったらありません。 なんたって、神谷サンをちーちゃんが、(擬似的にとはいえ)攻めてるんですから… ウィルフレッドがフライトから託された謎、キアランがわざわざ屋敷に泊まり込む理由、そして辿り着くハルの真実…全ては〈下〉を待たねばなりません。 何とも待ち遠しい事です! それに加えて、これだけ役者を揃えてくれると、やっぱり原作の全てを聴きたくなってしまうのは、もう仕方の無い事です。 原作上巻に収録されている「執事の独白」の、フライトとキアランの馴れ初め…原作にも具体的には書かれて無いので無理とはいえ、特に高級男娼キアランによるフライトの味見…や、原作下巻に収録されている「見える絆、見えない絆」の、ウィルフレッドとハルの晴れ姿…そして、その準備に奔走する執事ご夫妻…を、〈完結編〉として作ってくれないものかと思ってしまいます。 まぁ、無理だろうなぁとは解ってはいるものの…言うのはタダだし… 『執事の受難と、旦那様の秘密〈上〉』 2008年7月 サイバーフェイズ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.07.28 16:16:36
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