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2009.06.29
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椎崎夕さん原作の、『非保護者』を聴きました。
原作の味わいに相応しいキャストを得て、静かな感動がありました。

幼い頃に、怪我によってピアニストの夢だけでなく母親の関心を失った麻倉征にとって、瀬尾篤史は何にも変えがたい存在でした。
ところが、瀬尾が常に身近に在って心を配ってくれた理由が、実は自分に怪我を負わせた償いだったと聞き、征は深く傷付きます。
大学生になり一人暮らしを始めた征の生活は荒み、誰の忠告も受け入れない事に手を焼いた父親は、目付け役として瀬尾に征の監視と世話を命じます。
マンションに同居するようになった瀬尾に、征はただ頑なになるばかりでした。
征は、瀬尾に対する自分の想いに気付いてしまったから…

主人公の征は、表面的に言ってしまえば、挫折に甘え駄々をこねている金持ちの坊ちゃんです。
とはいえ、高名なピアニストである母親は、自分の構想から外れた息子に一切の関心がなく、仕事に多忙な父親は、決して無関心ではないものの息子に細やかな情を掛けられず、体よく息子を遠縁の青年に押し付けてしまうという境遇を思うと、否定仕切れないものがあります。
幼い心身が受けた痛みと哀しみと絶望を親に放置され、唯一の存在だった瀬尾に一心に縋ってしまうのは当然で、だから、裏切りと感じてしまった時の衝撃の深さも理解できます。
そして、素行が荒れるのは征の幼さであり、助けを求める信号だったのですが、それを唯一受信できるのは瀬尾しかいないのに、ところが瀬尾自身、自分の征に対する想いに動揺する、まだ若く未熟な青年でした。

日野聡さんの、柔らかで穏やかな音色から、征の素直で無垢な本質が伝わってきました。
拗ねて、反抗して、悪ぶって見せながら、どこか半泣きしてるような心の内が感じられて、本当は瀬尾が恋しくてならない淋しい気持ちがよく判ります。
ピアノという大切なものを征から奪ったのは怪我ではなく、母親だったからこそ心の傷は深かったのだと、あの愚かな女を憎みたくなりました。
ちょっとしたきっかけで陶芸を知り、瞬く間に熱中していく様子は、彼の芸術家としての根本的な芽があった証拠で、人間としての再起をそこで掴んだ征は、本来の強さを取り戻していました。
日野さんの丁寧な芝居は、そんな征の変化を細やかに表現されています。

瀬尾タイプのキャラクターに、森川智之さんほど相応しい役者はいないでしょう。
同時に、こういうタイプを多く演じられているので、新鮮味がないのは仕方ない…とも、正直なところ思ってしまいましたが。
でも、柔らかく美しい音色で紡がれる瀬尾の、冷静に見える態度の裏にある細やかな感情の揺れを想像でき、やはり最良のキャスティングだと実感しました。
征に要らないと宣言された時の瀬尾の動揺ぶりで、ずっと自分の感情を押さえ込んできた男の本音が露呈して、むしろ弱かったのは、むしろ依存していたのは、実は瀬尾であった事が伝わってきます。
瀬尾は、可愛くてならない征の保護者である事が喜びで、ずっと保護者でいられる事が望みで、征が瀬尾に依存してはならないと目覚め、精神的に自立してしまった事を、もしかしたら秘かに落胆しているのかもしれないと、つい想像してしまいました。
原作の巻末に添えられた瀬尾視点の「恋人の距離へ」は、残念ながら収録されていませんが、その甘やかでやきもち焼きな様子が髣髴とされるのも、森川さんの音色ゆえです。

征の再起のきっかけを与える新見に花田光さんとは、嬉しいキャスティングでした。
極あっさりとして、さり気なく曲者なふうを感じさせ、甥の様子を距離を測りつつ見守りながら、何か試すようでもあります。
長く外国を放浪して、今は実業家となったものの家庭は持たずにいる、どこか気侭な気質の男の、穏やかな中にほんのりと諧謔味を含ませている花田さんの音色は、とても魅力的です。
新見は、何やら表と裏とか、本音と建て前とかありそうで、この人も何かを乗り越えた経験があるのではないかと想像させます。

征の師となる陶芸家の三嶋の、前野智昭さんはちょっと今までにない雰囲気と感じました。
穏やかで静かな佇まいが想像できて、素敵でした。
そして、寺島拓篤さんが珍しくヒールに徹した芝居で、またガヤでも何ヶ所か登場して、面白く聴きました。

華のある、派手やかな作品というのではありません。
擦れ違って縺れた心の通い合うまでが、椎崎さんらしい細やかさで丹念に綴られた物語です。
そんな作風がサイバーフェイズの音作りと相まって、静かな佳品となったと思います…きらきら

 『非保護者』 2009年6月 サイバーフェイズ





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Last updated  2009.06.29 14:30:50
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