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カテゴリ: *榎田尤利さん
交渉人シリーズ、ひとまずの区切り…と、強い願望込めて、最終巻とは思わない。 タイトル通り、芽吹が周囲からたっぷり愛情を注がれつつ、本人は相変わらずボロボロに なりながら仕事を全うする、これぞ芽吹!な物語。 芽吹は、愛情というものに慣れない。 どうしても臆病になってしまうし、多少、懐疑的なところもあるだろう。 もしかしたら、愛情というものを享受すると、後は喪失する恐怖が先立つのかもしれない。 だから、芽吹は人に対し、愛情ではなく、信ずる事を己の覚悟としたのではないか… 読み終えて、そんな事を思った。 だから、やっぱり、兵頭なんだろう。 単なる愛情だけでない、常に傍らに居るわけでもなく、守るとか支えるとかでもなく、 横に並び立って、各々の信じる方向を見据える事が出来る、唯一の存在。 でも、その兵頭が、自分の為に倒れて、改めて芽吹は兵頭への愛情を痛切に確信して… それは、恋人として精神的にあまり報われてなかったような気がする兵頭にとって、 ようやく辿り着いた至福の時だったかもしれない… ま、命懸けだったけど。 つくづく、読み終えるのがイヤで、ぐずぐず読んでいたけど… ラストシーンの、第三者が描写する二人の様子が、もう堪らなく良くて、泣きそうになった。 それで、改めて表紙から口絵から見返すと、全部エピローグで、また堪らなくなった。 奈良さんのイラストは、いろいろ言われたけど、やっぱり実によく考えて描いて下さってる。 …まぁ、そりゃぁ、初期の美しさが恋しいけど。 そして…もう、言うまいと思うけど。 平川くんが、どんな芝居を聴かせてくれたろう… あの、芽吹の決死の啖呵の、その後の、 「あいつが待ってるんだ。 行ってやらなきゃいけないんだ……」 どんなふうに、演ってくれたろうか… とりあえず、これで一区切り…でも、きっとまた逢えるに違いない。 だって、芽吹と兵頭ばかりでなく、キヨもトモも、小百合さんも七五三野も、伯田さんも、 主役も脇役も、こんなに読者から愛された作品も、そう多くはないだろうから。 そして何より、榎田さん御自身が、きっと恋しく思って下さるだろうから… ところで… 自分の子供時代、浮き輪のマークが描かれた青と白の缶に入ってる泉屋のクッキーは、 慎ましく暮らす庶民の子供にとって、最高に嬉しいお中元/お歳暮だった。 そしてやっぱり、丸くてちょっと硬いリングターツを、誰もが狙ってた。 だから、泉屋のクッキーに、「すきすき。なんか郷愁を感じるんだよな~」って感覚、 たぶんアラフィフじゃないとピンとこないと思うんだけど…榎田さん!?(笑) 『交渉人は愛される』 2011年7月 SHY NOVELS 榎田 尤利 * 奈良 千春 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.09.08 16:29:31
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